「人手が足りないから生成AI」で決めると置き場所を外すかもしれません。愛知県の職業別 有効求人倍率(令和8年7月)を手がかりに、社内の1週間のメモから生成AIを最初にどこへ置くかを決める手順を、名古屋の現場目線でご紹介します。
「人手が足りない。だから生成AI(文章や画像を作るAI)を入れよう」——この順番で決めると、置き場所を外してしまうかもしれません。
先に結論です。生成AIは、1人も採用してくれません。人手不足そのものが消えるわけではありません。決めるべきなのは、「募集しても採れていない職種の人が、本業のかたわらで取られている『文字の仕事』はどれか」です。そこを1つだけ選ぶ。それが置き場所です。
先にお断りしておくと、これは事務の仕事を減らす話でも、事務の人を減らす話でもありません。
1つでも当てはまれば、この先が役に立ちます。3つとも当てはまらないなら、今日はここで閉じていただいて大丈夫です。
判定は、この「作業ごとの合計」のいちばん長いもの、その1つだけで行います。
超えなかった場合も、手ぶらでは終わりません。③でお願いしたメモと、④でまとめた作業ごとの合計が、そのまま手元の材料として残ります。
なお、この「週1時間」という線引きは、私が現場で使っている目安です。どこかの調査に書かれている数字ではありません。
ここからは、その根拠です。国の資料を2つ、順番に見ていきます。
先に、言葉を1つだけ整理させてください。白書がいう「省力化投資」とは、機械やITツール、AIなどを使って、同じか、それ以上の成果を、より少ない手間で出すための投資のことです。これから見ていく白書の4つの図は、いずれもこの「省力化投資のうち」という範囲の中の話です。会社のAI活用のすべてを見た数字ではありません。
中小企業庁の「2026年版中小企業白書」に、省力化投資のうち、事業者がAIを何のために使っているかを尋ねた図(第2-2-89図)があります。白書の説明は次のとおりです。
これを見ると、「業務時間の節減」と回答した事業者が8割を超えており、「人手不足の解消」、「業務の属人化解消」と続いていることが分かる。
引用の中の「属人化」は、その仕事をその人しかできない状態のことです。
ここで大事なのは、これが「何を目的にAIを使っているか」という回答だという点です。「AIを入れたら人手不足が解消した」という結果を示した数字ではありません。
もう1つ、この白書でいう「AI」の中身にも注意が要ります。白書の注記はこうです。
「AI」とは、人工知能のことであり、画像認識、音声認識、自然言語処理、データ分析、意思決定支援、生成AIなどを指す。
つまりこの白書の数字は、生成AIに限らないAI全般についての調査です。生成AIだけの数字として読まないでください。
同じ白書に、省力化投資のうち、どの部門でAIが使われているかを見た図(第2-2-88図)もあります。
これを見ると、「営業・販売・顧客対応部門」、「バックオフィス部門」は、「製造・生産管理・物流部門」と比較して、AIを「活用している」と回答した割合が高いことが見て取れる。
引用の中の「バックオフィス部門」は、経理・総務・人事など、社内を支える仕事のことです。
そして、この図は「AI活用に取り組んでいる事業者」についての集計です。全事業者の話ではない点も、あわせて押さえておいてください。
使われ方についても、白書はこう書いています(第2-2-90図)。これも、省力化投資のうち、AIの活用に取り組んだ事業者に聞いたものです。
これを見ると、いずれの業種においても、「文書作成、要約、校正」、「業務自動化・効率化(RPA含む)」に関連する回答が多い傾向があることが分かる。
引用の中の「RPA」は、パソコン作業を自動で繰り返させる仕組みのことです。ここで挙がっているのは、いずれも「文字を読む・書く・まとめる」まわりの仕事だと読めます。
ここからは、逆にAIを業務で活用していない事業者に聞いた図です。白書には、省力化投資のうち、AIを業務で活用していない理由を見た図(第2-2-92図)もあります。
これを見ると、「活用する業務がイメージできていない」と回答した割合が最も高いことが分かる。
「何に使えばいいかが決まっていない」。この回答が最も高い割合だった、ということです。置き場所が決まらないという詰まりは、あなたの会社だけの悩みではありません。(具体的な割合は、白書の図をご覧ください。)
次は愛知県の実データです。愛知労働局が公表している「最近の雇用情勢(令和8年7月分)」に、職業別の有効求人倍率が載っています。
有効求人倍率とは、仕事を探している人1人あたり、何件の求人があるかを表す数字です。1倍を下回ると、求人よりも応募する人のほうが多い、という意味になります。
下の表は、その資料の表9「職業別・年齢別職業紹介状況(パートタイムを含む常用)」から、愛知県・令和8年7月の数字を抜いたものです。
| 職業(表9の区分) | 有効求人倍率 | ひとこと |
|---|---|---|
| 保安職業従事者 | 7.01 | この表でいちばん高い(警備員・消防員などを含む区分) |
| 建設・採掘従事者 | 5.59 | 次に高い |
| 介護関連(再掲) | 4.50 | 専門技術とサービスの職業から、介護に関わる仕事だけを集めた再掲。この表の「サービス職業従事者」とも重なります |
| サービス職業従事者 | 2.84 | 1倍を大きく上回る |
| 輸送・機械運転従事者 | 2.66 | 1倍を大きく上回る(ドライバーなどを含む区分) |
| 販売従事者 | 2.47 | 1倍を大きく上回る |
| 生産工程従事者 | 1.25 | 1倍を上回る |
| 合計 | 1.07 | ★比較の基準。表9の合計欄の数字です(上の行を足したものではありません) |
| 運搬・清掃・包装等従事者 | 0.51 | 1倍を下回る |
| 事務従事者 | 0.39 | 1倍を下回る=応募が集まりやすい |
| (内訳)一般事務従事者 | 0.30 | 事務従事者の内訳 |
この表について、押さえておいていただきたい点が3つあります。
この表の中でいちばん高い保安職業従事者は7.01。事務従事者は0.39。7.01を0.39で割ると、およそ18倍の開きがあります。
ここは誤解のないように書きます。求人倍率が低いことは、その仕事の価値が低いという意味ではまったくありません。「応募が集まりやすい」という一点だけを表す数字です。
ここまでの2つは、別々の調査です。愛知労働局の統計はハローワークで見た求人と求職の状況、中小企業白書は事業者へのアンケート。どちらの調査も、両者を結びつけた結論は出していません。
そのうえで、これは私の見立てですが——さきほどの白書(省力化投資のうち、の範囲です)では、AIを使う目的として最も多く挙がっているのは「業務時間の節減」で、次いで「人手不足の解消」。ところが、実際にAIを活用していると答えた割合は、製造・生産管理・物流の部門と比べて、営業・販売・顧客対応やバックオフィスの側が高い、という結果でした。一方、愛知で採れていないのは保安(7.01)、建設・採掘(5.59)、介護関連(4.50)といった現場の職種です。
目的と置き場所が、少しずれているかもしれません。「人が足りない」を動機に始めたのに、軽くなったのは応募が集まりやすい側の仕事だった——そういうことが起きているかもしれない、と私は見ています。断定はできません。そう言っている調査は、どこにもないからです。
だからこそ、置き場所は、統計ではなく自社のメモで決めるのがいちばん確かです。冒頭の1手が、そのためのメモです。
置き場所を決める前に、線を1本引いておきます。
私は独立する前の15年間、製造・生産管理・営業の現場で働いてきました。その頃を思い返すと、現場の人の手元には、本業とは別に、こういう文字の仕事がいつも乗っていました。
どれも、なくすことはできません。ですが、「ゼロから書く」を「直す」に変えられる余地は、この中にあります。箇条書きのメモを渡して文章の形にしてもらい、それを人が読んで直す。読む仕事なら、長い書類の要点を先に出してもらい、そのうえで自分の目で原文を確かめる。生成AIを最初に置くなら、こういう場所だと私は考えています。
逆に言えば、①で書いた職種の人が、そもそも文字の仕事をほとんど抱えていないなら、少なくとも生成AIの最初の置き場所は、そこではありません。だから⑤で選んだ作業の合計が1時間を超えなかったときは、いったんここで止まるのが正解です。
私がいつも同じ順番でお伝えしているのは、経営のボトルネック(詰まっている一番の課題)を先に見つけて、道具はそのあとで選ぶ、ということです。この順番については投資の前にボトルネックを見つける考え方をまとめた記事で詳しく書きました。
そして、置き場所を決めて実際に生成AIを使い始めたら、次は効果を数字で持っておく番です。感覚で「なんとなく楽になった」で終わらせると、次に何を足すか・何をやめるかが決められません。こちらはAIの効果を数字で残しておく方法をまとめた記事にしています。
名古屋のマークレストで私がお引き受けしているのは、この「どこに置くか」を一緒に決めるところと、決めたあとに現場で回るようになるまでの伴走です。仕組みを作ってお渡しする形はとっていません。手順を一緒に組み立て、定着するまで並走する。そこが私の役割です。
その「どこに置くかを一緒に決める」「置いたあとの手順を作る」——ここは有償のご支援になります。無料でお受けしているのは、次にご案内する初回面談(90分程度)までです。
まずは話を聞いてみたい、という段階でしたら、無料相談はこちらのお問い合わせフォームからどうぞ。
初回面談はオンラインで90分程度。こちらから契約を急かしたり、その場で契約をお願いしたりすることはしません。新たな投資が不要と判断すれば、その旨を誠実にお伝えします。
※本記事の求人倍率は令和8年7月時点・愛知県の数値です。中小企業白書の内容は2026年4月24日閣議決定の2026年版によります。求人倍率は毎月変わります。最新は愛知労働局の公表資料でご確認ください。