AIで現場を軽くする

AIの効果、数字で言えますか|今日から2週間、紙に4列書くだけ

この記事の要点

生成AIに毎月払っているのに、効果を数字で言えない。だからやめる判断も広げる判断もできません。設備も権限もツールも要らず、紙とペンだけで2週間つける4列の記録と、自社の実額単価で金額に直す手順をまとめます。

「生成AIに、毎月お金を払っています」——では、その効果はいくらですか。この問いに、金額で答えられる中小企業は多くありません。

やっかいなのは、数字が無いと、やめる判断も、広げる判断も、どちらもできないことです。効いているかもしれないから、やめられない。効いている証拠が無いから、広げられない。結果として、毎月そのまま出ていきます。支出を止められずにいる理由は、料金の高さでも、社内の反対でもありません。決めるための材料が、手元に無いことです。

先に結論だけ言います

①結論:「効果を数字で言えない」のは、道具の問題ではありません。記録の型が無いだけです。AIを使う”前”に何分かかっていたかを、誰も控えていない。だから前と後を比べられない。比べられないから、金額に直せない。詰まっているのは、そこです。

②今日やる1手:紙を1枚用意して、いちばんよくAIに任せている仕事の名前を、1つだけ書いてください。今日はそれだけです。目安5分。明日から2週間、その紙に4つの列——〔業務名/件数/AI前にかかっていた時間/AI後の時間〕——を埋めていきます。2週間たったら、時間の差 × 御社の実額の時間単価で金額に換算します。書き方は、このあと全部書きます。

③この記事の対象:生成AI(ChatGPT・Gemini・Copilotなど、文章や資料の下書きを作らせる道具のことです)に毎月お金を払っている——会社契約でも、社長ご自身の個人契約でも構いません——けれど、その効果を数字で説明できない中小企業の経営者の方。

とくに、次に当てはまる方こそ対象です。「管理画面の見方が分からない」「そもそも自分にはログイン権限が無い」「ITに詳しい社員がいない」。この記事で使う道具は、紙とペンだけです。アカウントも、管理者権限も、分析ツールも、新しい契約も、ひとつも要りません。誰かに権限をもらう必要も、待つ必要もありません。

逆に、対象でない方:「AIを導入すべきかどうか」の答えを探している方です。この記事は、その答えを持っていません。ここでお渡しするのは測り方であって、「AIを入れれば◯時間減ります」という約束ではありません。減るのか、変わらないのか、かえって手間が増えるのか。それは御社の業務で測ってみるまで分かりません。私にも分かりません。

それから、はっきり申し上げておきます。ここに書いた記録のつけ方は全部、無料で、社長ご自身の手でできます。読んだうえで、私から何かを買っていただく必要はありません。


「効果が言えない」のは、御社だけではありません

中小企業と取引のある金融機関の商工中金が、2026年3月31日に公表した「中小企業の生成AIの利用にかかる調査(2026年1月調査)」という資料があります。全国の中小企業に、生成AIの使い方をたずねた調査です。

この中に、「生成AIの導入・推進における課題や、活用が進まない/導入しない理由」をたずねた設問があります。あてはまるものをすべて選ぶ形式(複数回答=いくつでも選べる聞き方)です。その回答のひとつが、これです。

導入効果が測定できず、成果が見えにくい 21.3%

そして、この調査は回答企業を「生成AI積極活用層」(会社として導入している、または会社としては導入していないが個人契約のAIを業務に使うことを推奨している企業。全体の31.1%)と、それ以外に分けて集計しています。同じ項目を分けて見ると、こうなります。

「導入効果が測定できず、成果が見えにくい」を挙げた割合 割合
回答企業全体 21.3%
生成AI積極活用層(=すでに使っている側) 14.2%
積極活用層以外 24.6%

見落としてはいけないのは、下の段のほうです。まだ本格的に使っていない会社の24.6%が、進まない理由として「効果が測定できない」を挙げている。つまり「測れないから、踏み出せない」。この調査の作り手自身も、資料の中でこう書いています。

導入後フェーズでは「導入効果が測定できず、成果が見えにくい」の差が大きく、導入効果の可視化が進むことで生成AIの積極活用が進む可能性を示唆している。

可視化とは、目に見える形にすること——ここでは数字にして紙に載せることです。測ることが、次の判断の入口になっている。これが、この記事でお伝えしたいことのすべてです。

この調査が「誰に・いつ・どう聞いたものか」を先に書いておきます

数字を出すときは、その数字の射程を一緒に出さないとフェアではないと考えています。同じ資料の末尾に、調査の中身がきちんと書かれています。

  • 調査主体:商工中金 マーケティング部
  • 位置づけ:中小企業設備投資動向調査(2026年1月)の付帯調査(=本体の調査に付けて一緒に聞いた調査のこと)
  • 調査時点:2026年1月1日現在(調査期間:2025年12月19日〜2026年1月16日)
  • 対象企業:商工中金の取引先中小企業(非上場企業を中心に選定)
  • 企業数:郵送送付先 10,772社/回収率36.1%/有効回答数 3,892社
  • 調査方法:WEB画面での回答によるアンケート調査

だから、この21.3%は「日本の中小企業全体の21.3%」ではありません。「商工中金と取引がある中小企業3,892社が答えた結果」です。この読み分けは、統計を経営判断に使うときの生命線です。調査対象欄の見方そのものは 「企業の8割」に自社は入っていますか|統計の調査対象欄を見る30秒 に書きました。

もうひとつ、正直に申し上げます。この調査には地域別の集計もありますが、区分は「東海(静岡、愛知、三重、岐阜)」で、441社・全体の11.3%です。静岡が入っています。私の商圏である愛知・岐阜・三重だけを取り出した数字は、この資料からは作れません。ですから私は、この記事で「東海ではこうです」という言い方をしません。取り出せない数字を、地域の話に仕立てないためです。

あわせて、原典が自分で付けている注記も引いておきます。この分類は絶対的なものではない、という断り書きです。

項目の内容ごとに最も近しいと思われるフェーズごとに分類しているため、必ずしも実際の企業の生成AI導入フェーズとは一致しない。たとえば生成AI導入済の企業が「具体的な活用場面が不明」と回答している場合もある。

同じ調査の中に、もうひとつ引っかかる数字があります

この調査は、生成AI積極活用層に対して「現時点での総合的な評価」を、最も近いもの1つだけ選ぶ形でたずねています。積極活用層全体の回答は、次のとおりです。

生成AI活用の総合的な評価(積極活用層全体) 割合
経営への大きなインパクトあり 1.9%
効率化など経営へのプラス効果あり 29.8%
有効事例が出てきている
(経営への好影響とまではいかないが)
42.0%
今のところ効果はみられない 19.3%
評価はこれから・評価は行わない 7.1%

※この設問に答えたのは、原典に明記されている範囲で「会社導入」592社・「個人登録」534社です。上の表はその両方を合わせた「積極活用層全体」の数字です。

いちばん多いのは、真ん中の42.0%です。「経営への好影響とまではいかないが、活用にかかる有効事例が出てきている」。手応えはある。けれど経営の数字には、まだ結びついていない。この層が最大のかたまりでした。

ここで、私が言えることと言えないことを、はっきり分けます。この42.0%が「測っていないから経営数字に結びつけられない」のか、「測ったうえで、まだ経営数字には届いていない」のか——この調査からは判別できません。私にも判別できません。判別できるのは、御社だけです。そして判別するには、記録が要ります。

数字の話はここまでにします。ここから先は、御社自身の数字の話です。


生産管理の現場では、当たり前にやっていることです

私は独立する前、製造の現場と生産管理に携わっていました。そこで身体に入っている作法が、ひとつあります。

改善は、前と後を「同じ物差し」で測らないと、証明できない。

治具(部品を固定しておく道具)を変える、手順を入れ替える、機械の配置を動かす。何かを良くしようとするとき、現場でまずやるのは「今、何分かかっているか」を測ることです。改善した後にも、同じ人が・同じ作業を・同じ数え方で測ります。そうしないと、報告できるのは「速くなった気がします」だけになります。気がする、では投資の判断はできません。

生成AIで起きていることは、これと同じ構造です。ただ一点だけ、決定的に違うところがあります。

AIは、測る前に導入されてしまう。現場改善なら「まず測る」から始まりますが、AIは「とりあえず使ってみる」から始まります。無料で試せるものも多く、使い始めるのに稟議も要りません。だから、ビフォー(AI前の時間)が誰の手元にも残っていない。これが、効果を言えない本当の理由です。

道具が悪いわけでも、使い方が下手なわけでもありません。始め方が手軽すぎて、測るタイミングが先に過ぎていっただけです。そして——ビフォーは、今からでも取り直せます。方法は後で書きます。


4列の記録——列は、これだけです

紙とペン、あるいはノートの見開き1ページで足ります。エクセルでも構いませんが、最初の2週間は紙をおすすめします。ファイルを開くひと手間が、記録の途切れる入口になりやすいからです。

何を書くか
①業務名 AIに任せている仕事の名前。「AI活用」のような大きな言葉ではなく、「客先への日報の清書」のように、手が動く単位まで下ろす。
②件数 その2週間で、それを何回やったか。「正」の字で足ります。
③AI前の時間 AIを使わずにやっていたときの1件あたりの所要時間(分)。
④AI後の時間 今、AIを使ってやったときの1件あたりの所要時間(分)。指示を書く時間・出てきたものを直す時間・確認する時間を、全部含めます。

④で「直す時間・確認する時間を含める」ことが、この記録の肝です。ここを外した数字は、実態より良く出ます。良く出た数字は、判断の役に立ちません。AIが出したものを人が確認して直すところまでが1件です。

記入例(数値はすべて説明のための架空のものです)

愛知・岐阜・三重の中小零細企業を対象に仕事をしていて、こういう場面はよくあるだろうと考えている例を挙げます。下の数字は実在の会社の実測値ではなく、書き方を示すために私が置いた架空の数値です。

①業務名 ②件数
(2週間)
③AI前
(1件・分)
④AI後
(1件・分)
取引先への作業報告書の下書き
製造・部品加工の想定
22 30 12
見積書に添える説明文の作成
建設・工務店の想定
9 45 20
面談メモの要約
士業事務所の想定
14 25 10
商品紹介文・店頭POPの文案
小売店の想定
6 40 35

4行目に注目してください。40分が35分。ほとんど変わっていません。——こういう行が出てくるのが、この記録の価値です。「AIが効く業務」と「効かない業務」を、御社の中で分けられる。効かない業務にAIを使い続けるのをやめて、効く業務に寄せる。それだけで、同じ月額の使い道が変わります。

どの業務にも同じように効く道具は、私は見たことがありません。どこで効いてどこで効かないかは、業種でも会社の規模でもなく、その仕事のやり方によって変わります。だから外から言い当てることができず、御社で測るしかないのです。

続けるための3つのルール

  1. 業務は3つまで。全部を測ろうとした記録は、たいてい数日で止まります。いちばんよく使っている業務から順に、最大3つ。1つでも構いません。
  2. やり終わった直後に書く。1日の終わりにまとめて思い出そうとすると、記憶が丸まって、正確さが落ちます。紙は、その仕事をする場所に置いておく。
  3. 迷ったら短いほうを書く。とくに③(AI前の時間)です。ここを長めに書くと、差が大きく出て、判断を誤ります。自分に不利なほうに丸める。これは現場で測るときの鉄則です。

「AI前の時間」が分からないときの、2つの取り直し方

ここでつまずく方が多いと思います。「もうAIで慣れてしまって、前に何分かかっていたか覚えていない」。その場合の手は2つあります。

取り直し方①:AIを使わずに、1回だけやってみる

こちらのほうが正確です。次の1件を、あえてAIを使わずに最後までやって、時間を測ります。同じ人が・同じ業務でやるのが条件です。別の人がやると、その人の速さの差が混ざって、AIの効果と区別がつかなくなります。

1回では心もとなければ、2回やって平均を取る。2週間のうち、この1〜2件だけは”わざと遅い方法”でやることになりますが、その代わりに、以後の判断に使える基準値が手に入ります。

取り直し方②:当時を知っている人に聞き、「幅」で書く

その仕事を前からやっている社員の方に、「これ、前はだいたい何分かかっていましたか」と聞きます。ここで大事なのは、ひとつの数字に決めないことです。

  • 「30分」ではなく「30〜45分」と、幅のまま紙に書く。
  • そして、その行の端に「聞き取り」と書き添える。実測した行と区別するためです。
  • 金額に直すときは、幅の短いほう(この例なら30分)を使う。効果を小さめに見積もっておくためです。

推定を実測のふりをさせないこと。これが、あとで自分の判断を守ります。2週間後に数字を見たとき、「この行は聞き取りだったな」と分かる状態にしておく。それだけで、読み方が変わります。


2週間後:時間を、金額に直す

計算式は1本だけです。

(③AI前の時間 - ④AI後の時間)× ②件数 = 2週間で浮いた時間
2週間で浮いた時間 × 御社の実額の時間単価 = 2週間ぶんの金額

先ほどの架空の記入例で、1行目だけ計算してみます。

  • (30分 - 12分)× 22件 = 396分 = 6.6時間(2週間で)

ここに単価を掛けます。この単価をどう置くかが、いちばん大事なところです。

御社の「実額の時間単価」の出し方(3通り)

時間単価とは、その仕事をしている人の1時間あたりに、会社がいくら払っているかという金額です。求め方は3通りあります。どれを選んでも構いません。大事なのは、選んだ後にぶらさないことです。

【方法A】その社員1人にかかる年間の会社負担額 ÷ 年間の実労働時間

  • 年間の会社負担額= 月給×12 + 賞与 + 法定福利費(会社が負担する社会保険料などのこと。給与から天引きされる本人負担分とは別に、会社側が負担している分があります)+ 通勤手当など
  • 年間の実労働時間= 1日の所定労働時間 × 年間の出勤日数(+ 残業時間)

法定福利費の実額が分からない場合——ここは推測で埋めないでください。決算書の「法定福利費」を人数で割るか、顧問税理士にお尋ねになれば確認できます。そのまま送れる形にしておきます。そのまま送れる形にしておきます。

お世話になっております。〇〇(会社名)の△△です。
社内の業務改善の効果を時間で測るため、従業員1人あたりの年間の会社負担額(給与・賞与・法定福利費・通勤手当などの合計)を把握したいと考えています。直近の決算の数字で構いませんので、1人あたりの概算をお教えいただけますでしょうか。

【方法B】社長ご自身の時間を測る場合:役員報酬 ÷ ご自身の年間実労働時間で置くか、後述の方法Cで置きます。「社長の時間は値段が付けられない」と言って空欄にすると、そこで計算が止まります。止めるくらいなら、仮でも置いて先へ進めてください。仮で置いたことは、紙の余白に書き残します。

【方法C】同じ作業を外に頼んだときの時間単価で置く:実際にお持ちの見積書や請求書に、時間あたりの実額が載っていることがあります。これは「その時間を買い戻すのにいくらかかるか」という置き方で、感覚としては分かりやすい方法です。

【共通の約束ごと・2つ】

  1. 2週間の前と後で、同じ単価を使う。途中で変えると、何を比べているのか分からなくなります。
  2. 選んだ単価と、その計算式を、紙の余白に書き残す。3か月後の自分が読み返したとき、この一行があるかないかで意味がまったく変わります。

そして、これははっきり申し上げます。私は「この単価が正しい」と申し上げることはできません。どの費目まで含めるかは会社ごとに違いますし、業種によっても年度によっても変わるからです。正しい単価があるのではなく、御社が根拠を書き残して決めた単価があるだけです。それで十分に判断はできます。

計算してみます(すべて架空の数値です)

  • 年間の会社負担額:483万円(月給30万円×12=360万円 + 賞与60万円 + 法定福利費など63万円)
  • 年間の実労働時間:1,920時間(1日8時間 × 年間240日)
  • 時間単価:4,830,000円 ÷ 1,920時間 = 約2,516円/時

先ほどの1行目に当てはめます。

  • 2週間で浮いた時間 6.6時間 × 2,516円 = 約16,600円
  • これを1か月(2週間の2倍)に直すと、約33,200円

ここまで来て、はじめて月額と並べられます。仮に月額3,000円を払っているとすれば、「この業務1つで、月およそ33,200円ぶんの時間が浮いている」。ここに出てくる数字はすべて架空のものですが、形としてはこれが、決めるための材料です。

★ここだけは飛ばさないでください:この金額は「概算」です

ここを飛ばすと、この記録は危険な道具になります。3つ、限定を置きます。

  • (1)これは会計上の原価計算とは別物です。決算書に載せる原価の計算には、間接費をどう配分するかなどの決まった考え方があります。ここで出した金額は、社内で「やめる/続ける/広げる」を決めるための概算であって、決算や税務の数字とは接続しません。原価計算そのものの考え方については、顧問税理士にご確認ください。
  • (2)浮いた時間が、そのまま現金になるわけではありません。給与は基本的に固定です。時間が6.6時間浮いても、その月の人件費が16,600円下がるわけではありません。現金として実際に動くのは、残業代が減ったとき/外に頼んでいた分が減ったとき/増員を1人見送れたとき——このいずれかが起きたときです。それ以外の浮いた時間は、「何に使うかを決めて、はじめて価値になる時間」です。
  • (3)単価の置き方ひとつで、答えの金額は変わります。だから、金額そのものを1円単位で信じないでください。見るのは「桁」です。月に1,000円台の話なのか、1万円台なのか、10万円台なのか。桁が分かれば、判断はできます。

そしてもうひとつ。この2週間の記録は、あくまで御社の実測値です。他社に当てはまるものではありませんし、他社の数字が御社に当てはまることもありません。繁忙期か閑散期か、担当者が誰か、その2週間にどんな案件があったかで、数字は動きます。だからこそ、自分で測る意味があります。


出た数字で、何を決めるか

2週間ぶんの金額を1か月に直して、実際に払っている月額と並べます。判断は3つに分かれます。

※下の線引きは、判断のたたき台として私が置いた目安です。公式の基準ではありません。御社の事情に合わせて動かしてください。

1か月に直した金額 私の読み方 次に決めること
月額をはっきり上回る その業務では効いている可能性が高い。※「AI全体が効いている」ではありません 同じ手順を隣の業務に当てて、もう2週間測る。広げるのは、2つ目で再現できてからで遅くありません。
月額と同じくらい まだ判断材料が足りない。測った業務の選び方がずれている可能性もある。 業務を替えて、もう2週間。「回数が多くて、毎回ほぼ同じ形の仕事」を選ぶと差が出やすくなります。
月額を下回る その業務では効いていない可能性がある。道具が悪いとは限りません。当てる場所が合っていないだけのこともあります。 ①使う業務を替える → ②プランを下げられないか確認する → ③やめる。この順で検討します。いきなり③に飛ばないこと。

どの結果が出ても、2週間前には手元に無かったものが1つ残ります。判断の材料です。「効いている気がする」で払い続けるのと、「この業務では月これくらい浮いている」で払い続けるのとでは、同じ支出でも意味がまったく違います。前者は止められませんが、後者は自分で決められます。

やってはいけないこと、3つ

  1. 全部の業務を測ろうとする。網羅しようとした記録は、たいてい数日で止まります。3つまで。不完全でも続いた記録のほうが、完璧で途切れた記録より、何十倍も役に立ちます。
  2. 人の評価に使う。これがいちばん大事です。この記録が「誰が速いか」を見るものだと伝わった瞬間、数字は歪みます。速く見せようとする力が働くからです。始める前に「これは道具を評価するための記録で、人を評価するものではありません」とはっきり言い切ってください。そして、その約束を守ってください。
  3. AI前の時間を、思い出しで長めに書く。効果を大きく見せたい気持ちは、無意識に働きます。迷ったら短いほうを書く。小さく出た効果が本物なら、それは広げる価値のある本物です。

なお、そもそも「何から手を付けるか」の順番の決め方——つまり経営のボトルネック(詰まっている一番の課題)の見つけ方そのものは、中小企業のお金の使い方|投資の前に「ボトルネック」を見つける現場術 に書きました。AIの月額を見直すより先に、そもそもどこが詰まっているのかを見る順番としては、こちらが先です。


まとめ

  • 「AIの効果が数字で言えない」のは、道具の問題ではなく、記録の型が無いだけ。AIを使う前の時間を誰も控えていないから、前後を比べられない。
  • 商工中金の調査(2026年1月調査・有効回答3,892社・複数回答)では、課題として「導入効果が測定できず、成果が見えにくい」を21.3%が挙げた。すでに使っている層でも14.2%、まだ使っていない層では24.6%。ただしこれは商工中金の取引先中小企業に聞いた結果で、日本の中小企業全体の数字ではない。
  • 今日やる1手:紙に、いちばんよくAIに任せている仕事の名前を1つ書く。目安5分。明日から2週間、〔業務名/件数/AI前の時間/AI後の時間〕の4列を埋める。アカウントも権限もツールも要らない。
  • ④には、指示を書く時間・直す時間・確認する時間を全部含める。ここを外した数字は判断に使えない。
  • AI前の時間が分からなければ、①1回だけAIを使わずにやって測る ②当時を知る人に聞いて「幅」で書き、短いほうを採用する。推定は「聞き取り」と書き添えて、実測と区別する。
  • 2週間後、時間差 × 御社の実額単価で金額に直す。単価はA〜Cのどれでもよいが、前後で同じものを使い、根拠を余白に書き残す。正しい単価があるのではなく、根拠を書き残して決めた単価があるだけ。
  • この金額は概算であり、会計上の原価計算とは別物。浮いた時間がそのまま現金になるわけでもない。1円単位ではなく「桁」を見る。
  • この2週間は御社の実測値であって、他社に当てはまるものではない。私も「AIを入れれば◯時間減る」とは申し上げません。お渡ししているのは測り方だけです。
  • 結果がどう出ても、2週間前には手元に無かったものが残る。判断の材料である。

私が名古屋を拠点に、愛知・岐阜・三重の中小零細企業を対象に仕事をしていて強く思うのは、「投資が足りない」ケースより、「測っていない」ケースのほうが目につくということです。そしてこの記録は、紙とペンさえあれば、今日から社長ご自身の手で始められます。

ここから先は、私の役割の線引きです。この2週間の記録は、私が代わりに測るものではありません。測れるのは、その仕事を実際にやっている御社の中の方だけだからです。また、AIの仕組みを作ってお納めすることもしません。お納めした瞬間から、直し続ける役目がこちらに残り、御社の手を離れてしまうからです。私がお引き受けできるのは、出てきた数字をどう読み、何に・どう投資するかを整理し、その手順が社内で回るようになるまで伴走する、その部分です。ここは有償のご支援になります。無料でお受けしているのは、次にご案内する初回面談(90分程度)までです。

そのうえで、まずは状況をお聞かせいただきたいという方は、無料相談はこちらのお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。初回面談はオンラインで90分程度。こちらから契約を急かしたり、その場で契約をお願いしたりすることはしません。新たな投資が不要と判断すれば、その旨を誠実にお伝えします。


出典(2026年8月20日に取得)

※本記事に記載した調査数値は、いずれも上記PDFの記載を2026年8月20日に確認したものです。調査時点は2026年1月1日現在(調査期間2025年12月19日〜2026年1月16日)、有効回答数3,892社、調査対象は商工中金の取引先中小企業です。日本の中小企業全体を代表する数字ではありません。
※「導入・推進における課題」の設問は複数回答(あてはまるものをすべて選択)です。原典はこの設問ごとの回答社数を記載していないため、本文では調査全体の有効回答数を示しています。
※「導入以前/導入検討/導入後」のフェーズ分類は原典によるもので、原典自身が「必ずしも実際の企業の生成AI導入フェーズとは一致しない」と注記しています。
※引用中の太字は筆者による強調です。原典からの引用は3か所で、引用部分の文言は原典のまま用い、太字のみ筆者が付しました。枠で囲った計算式と、税理士への依頼文の例は、私が作成したものです。
※記事中の記入例・計算例の数値、および業種ごとの想定シーンは、いずれも書き方を示すために私が置いた架空のものであり、実在の企業の実測値ではありません。
※時間差に単価を掛けて求める金額は社内判断のための概算であり、会計上の原価計算とは別のものです。原価計算・人件費の考え方については顧問税理士に、税務・申請手続きの個別判断は該当分野の専門家にご確認ください。マークレストは「何に・どう投資するか」の交通整理(マーケティング支援)を担います。

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