AIに入れた文字を学習に使うかどうか。その設定を持つのは、個人のアカウントなら社員本人で、会社からは見えません。会社のアカウントなら管理者です。4社の公式文書を読み比べ、今日30秒でできる確認をまとめました。
結論から書きます。AIに打ち込んだ文字を「AIの学習に使ってよいか」——その設定は、いま必ず誰かが持っています。そして、持っているのが「会社」なのか「その社員個人」なのかは、AIを「どのアカウントで開いているか」で決まります。
個人のアカウントで開いているなら、決めているのはその社員個人です。そして、その設定がいまどうなっているかは、会社からは見えません。会社が配ったアカウントで開いているなら、決めるのは会社(管理者)の側になります。
先に強く申し上げておきます。これは「個人のアカウントは危ない、会社のアカウントなら安全」という話ではありません。今回、4社(OpenAI・Google・Microsoft・Anthropic)の公式文書を1つずつ読みましたが、どの会社も自社の文書で正直に書き分けています。私が安全・危険を採点する話ではなく、「決める権利を、いま誰が握っているか」がアカウントによって移る——今日はその1点だけです。
言葉をふたつだけ。「アカウント」=そのサービスに入るための、自分専用の入り口(IDとパスワードの組)のことです。「管理者」=会社が契約したサービスで、社員全員ぶんの設定をまとめて決められる立場の人(社内の担当者、または頼んでいる業者)を指します。
紙も、新しいツールも、追加の費用も要りません。今日この場で終わります。
この1手を選んだ理由をはっきり書きます。①から③までは、契約プランにも、機能が順番に配られる時期にも、パソコンかスマホかにも、左右されないからです。「設定画面のここを開いてください」と書くと、画面が違う方・その項目がまだ配られていない方の手元では成立しません。だから、どの画面でも共通して確認できる「アカウント表示」を軸にしていただきます。④は Microsoft をお使いの方への補足で、こちらは画面によって見え方が変わります。分からなければ飛ばして構いません。
社内の誰か一人でも、仕事でAIを使っていれば対象です。会社として導入していなくても、社長ご自身がスマホで使っていても、対象です。
逆に、社内の誰もAIを開いていないなら、今日の話の優先度は下がります。その場合は、使い始める最初の日に、この記事を思い出していただければ十分です。
そして——ここが一番お伝えしたいところですが——すでに社員の方が個人のアカウントで使い始めているとしたら、それは「困った事態」ではありません。言われる前に、自分で道具を探して、自分の仕事を軽くしようと動いた人が社内にいる、ということです。これは、会社としてAIを使っていくときの土台になります。その方を止めるのではなく、その方が安心して続けられる形に整える——順番はそちらです。
この記事を最後まで読まない方にも届けたいので、冒頭に置きます。
ここから先は、根拠です。4社が自社の公式文書で何と書いているかを、出典つきで並べます。
理屈はとてもシンプルです。AIの各社は、「個人の方が自分で契約して使うサービス」と「会社が契約して社員に配るサービス」を、別のものとして設計しています。そして、学習に使うかどうかの決定権も、それぞれの契約者に置いています。
個人の方が自分で契約したなら、決めるのはその方です。会社が契約して配ったなら、決めるのは会社です。——当たり前のことなのですが、現場で起きているのは「会社がAIを契約していないのに、社員がすでにAIを使っている」という状態で、このとき決定権は自動的に、その社員個人の手の中にあります。本人が悪いのではありません。会社がまだアカウントを用意していないだけです。
下の表は、私が2026年8月26日に各社の公式ページを実際に開いて確認した内容の要約です。要約である以上、条件が落ちます。右端の列に「落としてはいけない条件」を必ず置きましたので、そこまで含めて読んでください。各社の詳しい記述と原文は、表のあとに1社ずつ載せます。
表を読む前に、出てくる言葉を3つだけ噛み砕いておきます。
| サービス | 個人のアカウントで使うとき | 会社のアカウントで使うとき | 落としてはいけない条件 |
|---|---|---|---|
| OpenAI (ChatGPT) |
公式の説明(英語)は、個人向けサービスでは入力内容を学習に使うことがある旨と、設定で「使わせない」に変えられる旨の両方を書いています | 日本語の公式ページに「デフォルトでは、ユーザーのデータを使用してモデルが学習することはありません」と書かれています | 個人向けでも「使わせない」設定は用意されています。/法人向けでも、利用者が明示的にデータ提供へ同意した場合は使われうる旨が書かれています |
| Google (Gemini) |
日本語ヘルプが、機密情報を入力しないよう促し、人間のレビュアー(内容を確認する担当者)が一部を確認することがある旨を明記しています | Google Workspace の英語ページが、顧客の事前の許可または指示がなければ顧客のデータをモデルの学習に使わない、と条件つきで書いています | 「オフにすれば何も残らない」ではありません。オフのときも72時間はアカウントに保持され、応答のためと保護のため(人間のレビューを含む)には使う、と明記されています。さらに人間のレビュアーが確認したチャットは、アクティビティ(=やり取りの履歴)を削除しても消えず、最長で3年間保存される旨も書かれています |
| Microsoft (Copilot) |
個人のアカウントでサインインした場合は、公式の説明(英語)が一般消費者向けの版に当たると書いています。別の公式文書(プライバシーに関する声明/英語)には、一部の市場では(「市場」=ここでは国や地域のこと)、本人が「使わないでください」と申し出ない限り会話のデータが Copilot のAIモデルの学習に役立てられることがある旨も書かれています(私が読んだ範囲では、どの市場かは書かれていませんでした) | Entra アカウント(会社・学校が配る Microsoft のアカウント)でサインインしたときにエンタープライズデータ保護が適用され、入力と応答は基盤となるモデルの学習に使われない旨 | 目印はCopilot Chat の画面で、[新しいチャット]の並びに出る盾のマーク。色ではなく「盾が出ているか」で見てください(画面の見た目は更新されることがあります)。Word・Excel・PowerPoint の中の Copilot は、契約や設定によって画面が違う旨も同じページに書かれています |
| Anthropic (Claude) |
個人向けについて、本人が「使ってよい」と選んだ場合に学習へ使う、という書き方になっています | 法人向け製品について、公式の説明(英語)が既定では入力・出力をモデルの学習に使わないと書いています | 安全上の審査で印が付いた会話は例外として扱われる旨が書かれています。「許可しなければ絶対に使われない」ではありません |
表を見て、もうお気づきかもしれません。「個人向け」の欄が、OpenAI と Anthropic で逆を向いています。この点は独立した項目として後段(「一般化は、事実のほうで壊れます」)で扱います。
なお、会計ソフトやチャットツールなど、他のサービスに内蔵されているAIについては、今回は調べていません。その扱いは、それぞれのサービスの提供元が自社の規約やヘルプで定めています。ただ、今日の1手はそのまま使えます。まず「そのサービスに、どのアカウントでログインしているか」を見て、そのうえで提供元の公式ページを1回だけ確認してください。
まず個人向けです。ヘルプセンターの「How your data is used to improve model performance(あなたのデータがモデルの性能向上にどう使われるか)」に、こう書かれています。
When you use our services for individuals such as ChatGPT and Codex, we may use your content to train our models.
You can opt out of training through our privacy portal by clicking on ‘do not train on my content.’ … Once you opt out, new conversations will not be used to train our models.
(出典:OpenAI ヘルプセンター「How your data is used to improve model performance」)
このページは英語のみです。ですので、日本語の逐語訳を鉤括弧つきで示すことはしません。趣旨をかいつまむと、ChatGPT などの個人向けサービスでは入力内容を学習に使うことがあり、専用の窓口からオプトアウト(=「自分の内容は学習に使わないでください」と申し出て外れること)ができ、外したあとの新しい会話は学習に使われない——と書かれています。この日本語は私による要約であり、OpenAI の公式訳ではありません。
操作の場所についても、同社の「Data Controls FAQ」(英語)に手順が示されています。趣旨は、プロフィールのアイコン → 設定 → データ管理(Data Controls)と進み、「Improve the model for everyone(みんなのためにモデルを改善する)」をオフにする、というものです。ただし、この記事の「今日やる1手」に操作は含めていません。画面は変わるからです。まずアカウントの種類を見る。設定を触るかどうかは、そのあとの判断です。
次に法人向けです。こちらは日本語の公式ページがあるので、日本語のまま引用できます。
デフォルトでは、ユーザーのデータを使用してモデルが学習することはありません
(出典:OpenAI「OpenAI におけるエンタープライズプライバシー」/日本語公式ページ。ページ上の更新表示は2026年1月8日)
同じ日本語ページは、対象となる製品名も挙げています。
OpenAI は、ChatGPT Business、ChatGPT Enterprise、ChatGPT for Healthcare、ChatGPT Edu、ChatGPT for Teachers、そして API プラットフォームを利用する際、ビジネスデータ(入出力データ)に対してお客様に所有権と管理権を提供し
(出典:同上)
引用文に出てくる「API」=自社のシステムから直接AIを呼び出して使うための、開発者向けの接続口のことです。「入出力データ」=こちらが入力した内容と、AIが返してきた内容のことです。
ここで、落としてはいけない条件をみっつ。
Google は、個人の Google アカウント向けのヘルプページを日本語で用意しています。日本語公式なので、そのまま引用します。
こうした目的のため、人間のレビュアー(トレーニングを受けた Google のサービス プロバイダのレビュアーを含む)が収集したデータの一部をレビューすることがあります。
レビュアーに見られたくない機密情報や、Google のサービス(機械学習技術など)の改良のために使用されたくない機密情報は入力しないでください。
(出典:Google「Gemini アプリのプライバシー ハブ」/日本語。ページ上の最終更新日は「2026 年 8 月 10 日」)
引用文の「レビュアー」=内容を目で見て確認する担当者のことです。「トレーニング」はここでは「(AIの)学習」を指しますが、引用文中の「トレーニングを受けた」は、その担当者が研修を受けている、という意味です。同じ言葉が別の意味で並んでいるので、念のため補足しました。そして、いちばん大事なのが次の語です。「Google のサービス プロバイダ」=Google に業務を提供している外部の事業者のことです。つまり、内容を目で見て確認するのは、Google の社員だけとは限らない——ここまで含めて書かれている、と読んでください。
保存される期間についても、日本語で明記があります。
アクティビティは 18 か月後に自動的に削除されます。この期間を 3 か月または 36 か月に変更したり、自動削除を行わないように設定したりすることもできます。
(出典:同上)
引用文の「アクティビティ」=Gemini とのやり取りが記録として残っているもの(いわゆる履歴)のことです。
そして、ここが本記事で最も強調したい一文です。
[アクティビティの保存] の設定がオフの場合や、一時的なチャットを使用している場合でも、Google はユーザーへの応答や Google、Google のユーザー、一般の人々の保護のためにユーザーのチャットを使用します(人間のレビュアーによるレビューも含む)。
(出典:同上)
引用文の「一時的なチャット」=履歴に残さない前提で使う会話モードのことです。
つまり、オフにすることには意味がありますが、「オフにすれば何も残らない」「オフにすれば誰にも見られない」わけではありません。同じページには、オフのときのチャットも72時間はアカウントに保持される旨、さらに人間のレビュアーが確認したチャットは、アクティビティを削除しても消えず、最長で3年間保存される旨が書かれています。
私がこの一文を強調する理由は、ひとつです。社内で「オフにしたから大丈夫」という説明が一度なされると、その説明が独り歩きします。そして、その説明を信じた人が、次はもっと踏み込んだ内容を入力します。実際と違う説明ほど、あとで効いてきます。
会社の Google Workspace のアカウントで使う場合は、別のページが用意されています。こちらは英語のみです。
Workspace does not use customer data for training models without customer’s prior permission or instruction.
(出典:Google Workspace「Generative AI in Google Workspace Privacy Hub」/英語。ページ内の表記は “Last updated: August 14, 2026″)
この文で絶対に落としてはいけないのが、後半の条件です。“without customer’s prior permission or instruction”=顧客の事前の許可または指示がなければ、という条件です。前半だけを切り取って「Google は学習に使いません」と読むと、意味が変わります。条件つきの記述は、条件ごと持ち帰ってください。(この日本語は私による要約であり、Google の公式訳ではありません。)
私が今回読んだ範囲で、画面上の印について書いていたのは Microsoft だけでした。(他の3社に印が無い、という意味ではありません。私が読んだページに記載が無かった、というだけです。)Copilot Chat の公式ドキュメント(英語)に、こう書かれています。
Copilot Chat offers enterprise data protection (EDP) for prompts and responses. EDP is available in Copilot Chat at no extra cost. Copilot Chat makes it clear that enterprise data protection is applied by featuring a green shield along the top of the user interface next to the New Chat button.
Prompts and responses aren’t used to train the underlying foundation models.
(出典:Microsoft Learn「Privacy and protections」(Microsoft Copilot Chat のドキュメント)/英語)
専門語を3つ噛み砕きます。「プロンプト(prompts)」=AIに打ち込む指示文のこと。「エンタープライズデータ保護(enterprise data protection/EDP)」=会社の仕事で扱うデータを守るための取り扱いの仕組み。「基盤となるモデル(foundation models)」=AIの土台になっている、もとの大きなモデルのことです。
趣旨は、Copilot Chat には会社データを守るための仕組みがあり、追加費用なしで使え、それが効いているときは[新しいチャット]ボタンの横に盾のマークが表示される——そして入力と応答は、土台のモデルの学習には使われない、というものです。この日本語は私による要約であり、Microsoft の公式訳ではありません(同社の日本語ページには機械翻訳である旨の記載があるため、日本語の逐語引用は行いません)。
ここでひとつ、慎重に書きます。公式文書(英語)は “a green shield”(意味=緑の盾)と書いていますが、私は色を断定しません。画面の見た目は更新されることがあり、色が変わっていても仕組みは効いている、ということが起こり得るからです。見ていただきたいのは「盾のマークが出ているかどうか」です。色は参考程度に。
もうひとつ、必ず添えておかなければならない条件があります。ここまでの盾の話は、すべて「Copilot Chat」という画面での話です。同じ公式ページには、Word・Excel・PowerPoint の中のチャット体験は、契約の設定やライセンスによって異なる旨(”Chat experiences in Word, Excel, and PowerPoint vary depending on your tenant configuration and license.”)と、具体的な制御や方針は、土台となる契約プランによって異なる旨(”The specific controls and policies vary depending on the underlying subscription plan.”)も書かれています。ですから、Word や Excel の中で Copilot を使っていて盾が見当たらなくても、それだけで「保護されていない」と判断しないでください。そのときは、社内の管理者、または契約をお願いしている業者にご確認ください。(この日本語は私による要約であり、Microsoft の公式訳ではありません。)
では、その盾は何によって出るのか。別のページ(英語)に、条件が明記されています。
Enterprise data protection applies to Copilot Chat prompts and responses when users sign in with a Microsoft Entra account, and is designed for work and education.
For users signed in with a personal account, they can use Microsoft Copilot. This service is the consumer version of Copilot Chat.
(出典:Microsoft Learn「Manage Microsoft Copilot scenarios in the Microsoft 365 admin center」/英語)
「Entra アカウント」=会社や学校が配る Microsoft のアカウントのことです(社員に配っている「@自社名」のアカウントだと思ってください)。趣旨は、会社が配ったアカウントでサインインしているときに保護の仕組みが適用され、個人のアカウントでサインインしている場合は一般消費者向けの版になる、というものです。
だからこそ、今日やる1手の④に「盾が出ているか」を入れました。Copilot Chat の画面であれば、アカウントの種類の確認と、保護が効いているかの確認が、同じ画面で同時にできるからです。(くり返しになりますが、Word・Excel・PowerPoint の中の Copilot は画面が違います。)
では、個人のアカウントで使った場合はどうなのか。上記の2ページには記載がありませんでした。別の公式文書——Microsoft の「プライバシーに関する声明」(英語)——に、個人向けの Microsoft Copilot についての記述があります。
We will also use your conversation data to monitor performance, troubleshoot and fix bugs and issues, prevent abuse, and to provide and improve Microsoft Copilot. In some markets, this data can help train our AI models in Microsoft Copilot unless you opt out.
(出典:Microsoft「Privacy Statement」/英語。ページ上の表示は “Last Updated: July 2026″)
趣旨は、会話のデータは、性能の監視・不具合の修正・不正利用の防止・Microsoft Copilot の提供と改善のために使われ、一部の市場では、オプトアウトしない限り、そのデータが Microsoft Copilot のAIモデルの学習に役立つことがある——というものです。この日本語は私による要約であり、Microsoft の公式訳ではありません。ここでいう「市場(markets)」=国や地域のことです。
ここは、3つの条件を1つも落とさずに持ち帰ってください。
そして、いま読んでいただいたのは、個人向けの Microsoft Copilot の話です。会社が配るアカウント(Entra アカウント)で使う Copilot Chat とは、別の文書に、別のこととして書かれています。同じ「Copilot」という名前でも、どのアカウントで開いているかによって、読むべきページのほうが変わる——今日お伝えしたいことが、そのまま出ている箇所です。
私はこれを「だから個人版は危ない」とは書きません。Microsoft は自社の声明で、条件つきであることを正直に書いているだけです。申し上げたいのは別のことで、個人のアカウント側は〔①その社員個人が設定を持っている ②しかも条件が、住んでいる市場によっても変わる〕——つまり、会社から見えないものが1段増える、ということです。
法人向けについて、プライバシーセンター(英語)にこう書かれています。
By default, we will not use your inputs or outputs from our commercial products (e.g. Claude for Work, Anthropic API, Claude Gov, etc.) to train our models.
If you explicitly report feedback or bugs to us (e.g. via our thumbs up/down feedback button), or otherwise choose to allow us to use your data, then we may use your chats and coding sessions to train our models.
(出典:Anthropic プライバシーセンター「Is my data used for model training?(Commercial Customers)」/英語)
趣旨は、法人向け製品では既定で入力・出力を学習に使わないが、利用者が「よかった/よくなかった」の評価ボタンを押すなど、明示的にデータ提供を選んだ場合は使われることがある——というものです。この日本語は私による要約であり、公式訳ではありません。
そして個人向けです。ここが、この記事でいちばん大事な事実です。
We will use your chats and coding sessions (including to improve our models) if: You choose to allow us to use your chats and coding sessions to improve Claude … Your conversations are flagged for safety review … By otherwise explicitly opting in to training
(出典:Anthropic プライバシーセンター「Is my data used for model training?(Consumers)」/英語。ページ上の表示は “March 17, 2026″。同ページは、対象が Claude Free・Pro・Max といった個人向け製品である旨を明記しています)
趣旨は、本人が「学習に使ってよい」と選んだ場合などに、会話を学習へ使う——という書き方です。あわせて、安全上の審査で印が付いた会話は例外として扱われる旨も書かれています。ですので「本人が許可しなければ絶対に使われない」とも言えません。(この日本語は私による要約であり、公式訳ではありません。)
ここまで読んでいただくと、はっきりします。
同じ「個人向け」なのに、公式ページの書きぶりが、逆を向いています。
なお、私が確認した Anthropic の「個人向け」のページには、「初期状態がオンかオフか」は書かれていませんでした。ですので、個人向けの書きぶりを「初期状態では使われない」と読み替えないでください。ご自身の設定画面を、一度ご確認ください。なお、表に載せた、法人向けでは既定で学習に使わないという記述は、Anthropic の法人向けのページに書かれていることで、いま述べている個人向けのページとは別の話です。
私はこの事実を、記事の中で自分から示しておきたいと思いました。「個人アカウントは学習される、会社アカウントは学習されない」——この一文はとても分かりやすく、そのぶん社内で猛烈に広まりやすい。けれど、事実ではありません。分かりやすい一文を配って、あとで「話が違う」となるより、最初から「サービスごとに違う」と知っていただくほうが、結果として現場は迷いません。
ですから、社内で共有するときの言い方は、こうしてください。
「学習に使うかどうかの決め方は、サービスごとに違う。だから、使っているサービスの公式ページを1回だけ見る。まず見るのは、自分がどのアカウントで開いているかだ。」
——長い一文ですが、短くすると必ず条件が落ちます。短くしたくなったら、条件のほうではなく、説明の回数を減らしてください。
ここで、外部の調査を1本だけ挙げます。東京商工リサーチ「2026年4月『生成AI』に関するアンケート調査」です。
数字を読む前に、その数字が何から出ているかを先に置きます。調査主体は東京商工リサーチ、調査期間は2026年3月31日〜4月7日、方法はインターネットによるアンケート(=回答者の自己申告)、有効回答は6,327社です。中小企業の定義は、同調査に次のように書かれています。
※資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。
(出典:東京商工リサーチ「2026年4月『生成AI』に関するアンケート調査」)
この定義でいう中小企業の母数は5,872社です。すぐ下の引用にある中小企業の比率は、この5,872社に対する割合です。
一方、中小企業は「方針は決めていない」が38.7%(5,872社中、2,276社)で最も多く、次いで「個人で活用していることもある」が27.7%(1,632社)だった。「会社として活用を推進」は19.1%(1,123社)、「部門によっては活用を推進」は13.2%(776社)で、どちらも2割未満にとどまり、大企業に比べ組織としての活用は進展していない。
(出典:同上)
そして、前回調査との比較です。ここから先は、母数が変わります。この次の引用には、大企業の数字と前回調査の数字が混ざります。大企業の今回の母数は455社で、中小企業の5,872社とは別のものです。また、前回調査(2025年8月)の母数は、この発表文には書かれていません。ですので、前回の比率から社数を逆算するようなことは、私はしません。
もうひとつ、引用に出てくる言葉を噛み砕いておきます。「ポイント」=パーセントとパーセントの差を表す単位です。22.5%から27.7%への変化は「5.2ポイント上昇」と言います(「5.2%増えた」とは意味が違います。「5.2%増えた」なら、22.5%が約23.7%になった、という意味になってしまいます)。
一方、「個人で活用していることもある」は、中小企業が前回22.5%(1,366社)から今回27.7%(1,632社)で5.2ポイント上昇に対し、大企業は前回19.4%(116社)から今回18.9%(86社)で、0.5ポイント低下した。
(出典:同上)
ここは、言葉を厳密に扱わせてください。この調査の選択肢は「個人で活用していることもある」であって、「個人のアカウントで使っている」ではありません。ですから、「中小企業の27.7%が個人アカウントでAIを使っている」と書くことは、私にはできません。選択肢が問うていることと違うからです。
ここから先は、私の見立てです。会社として活用を推進していない状態で個人が使っているのであれば、会社のアカウントが用意されているとは限らない——そう考えるのが自然だと私は思います。ただし、これは調査が示している事実ではなく、私の推測です。断定はしません。
また、大企業だけ0.5ポイント下がった点については、調査主体(東京商工リサーチ)が、次のような見方を示しています。
中小企業では、組織・個人のどちらの活用も広がる局面にあるが、大企業では個人利用が減少し、組織的な本格導入へ軸足が移り始めている。
(出典:同上)
つまり、大企業は個人の利用を会社の枠の中へ移しつつあり、中小企業ではまだ個人のまま広がっている——というのが、調査主体の見立てです。ただし、これはあくまで調査主体の見方であって、その理由が数字で裏づけられているわけではありません。私からは付け足しません。
それでも、この調査からはっきり言えることが1つあります。中小企業では「個人で活用していることもある」が5.2ポイント増えている。つまり、社内で誰かが使い始めている会社が、確実に増えているということです。そして今日の話は、まさにその状態の会社に効きます。
抽象的な話にしないために、私が現場で起こり得ると考える場面を、3つ挙げます。いずれも特定の会社の事例ではなく、東海の中小零細企業でよくある業務からの当てはめです。
3つに共通するのは、「悪意がひとつも無い」ことです。むしろ、どれも仕事を速く終わらせるための、まっとうな工夫です。そして、その工夫は続けたほうがいい。
変えどころは、2つあります。ひとつは、その工夫をどのアカウントでやっているか。これが今日の話です。もうひとつは、他人の個人情報をそのまま入れてよいかどうかで、こちらはまったく別の判断が要ります。個人が特定できる情報は、社内で扱いが決まるまで入れない——今日の話より先に、こちらを置いてください。
お客様の名簿や個人情報をAIに入れる場面については、国が無償で公開しているチェックリストを別の記事で紹介しています。順番としては、先にこちらをご覧ください。→ AIに顧客名簿を貼る前に|国が無償公開するチェックリスト2ページ
画面を見て、アカウントの種類が分かったら、次はここです。ただし、いきなり契約の話にはしません。
会社としてすでに Microsoft 365 や Google Workspace を契約しているなら、追加の費用なしで使える範囲があります。公式にこう書かれています。
——この2つは、どちらも「いま契約している内容しだい」です。この箇条書きだけを社内で回すと、その条件が落ちます。必ず「対象となるエディション/契約プランによって違う」まで一緒に持っていってください。プランによって対象が割れる仕組みは、こちらで整理しています。→ AIの新機能が自社に出てこない理由|プランで対象が割れます
私は「だから今すぐ有料プランを契約しましょう」とは書きません。順番が逆だからです。まず、すでに払っている契約の中に使える範囲があるかを見る。そこで足りるなら、それ以上のお金は要りません。足りないと分かってから、初めて追加の検討に進む——この順番を飛ばすと、要らない支出が生まれます。
そして、会社のアカウントで開いてもAIの画面が出てこない場合、「損をしている」とは限りません。管理者が意図して機能をオフにしていることもありますし、契約しているプランが対象外という場合もあります。「出てこない=おかしい」と決めつけずに、まず理由を確かめてください。確かめる先は、社内の管理者、または契約をお願いしている業者です。プランで対象が割れる仕組みは、すぐ上でご案内した記事に整理しています。
この2つが決まっていない状態が、私の言う経営のボトルネック(=詰まっている一番の課題)です。ツールが足りないのではなく、決めていないことが詰まりを作っているのです。
最後に、私が「これはやめたほうがいい」と考える進め方を3つ書きます。いずれも善意から始まるものばかりです。
冒頭にも書きましたが、大事なので繰り返します。私は弁護士でも行政書士でもありません。「この情報を入れたら法律違反になるか」という個別の判断は、この記事でも、ご相談の場でも示しません。その判断が必要な場面では、該当分野の専門家にご相談ください。
また、私は設定の代行をしませんし、社内ルールを私が作って納品する形もお受けしていません。私がご一緒できるのは、30秒の確認のあとに出てくる判断を、御社が自社の言葉で決めて、それが日常の中で続くところまで伴走する——その部分です。ここは有償のご支援になります。無料でお受けしているのは、次にご案内する初回面談(90分程度)までです。
無料相談はこちらのお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。
初回面談はオンラインで90分程度。こちらから契約を急かしたり、その場で契約をお願いしたりすることはしません。新たな投資が不要と判断すれば、その旨を誠実にお伝えします。
OpenAI ヘルプセンター「How your data is used to improve model performance」
https://help.openai.com/en/articles/
5722486-how-your-data-is-used-
to-improve-model-performance
(閲覧日:2026年8月26日/※ページ上の更新表示は「7日前」といった相対表記のみで、具体的な日付は示されていませんでした)
OpenAI ヘルプセンター「Data Controls FAQ」
https://help.openai.com/en/articles/
7730893-data-controls-faq
(閲覧日:2026年8月26日/※更新表示は相対表記のみ)
OpenAI「OpenAI におけるエンタープライズプライバシー」(日本語公式ページ/ページ上の更新表示:2026年1月8日)
https://openai.com/enterprise-privacy/
(閲覧日:2026年8月26日)
Google「Gemini アプリのプライバシー ハブ」(個人の Google アカウント向け/日本語/ページ上の最終更新日:2026 年 8 月 10 日)
https://support.google.com/gemini/
answer/13594961?hl=ja
(閲覧日:2026年8月26日)
Google Workspace「Generative AI in Google Workspace Privacy Hub」(英語/ページ内表記:Last updated: August 14, 2026)
https://knowledge.workspace.google.com/
admin/gemini/generative-ai-in-
google-workspace-privacy-hub?hl=en
(閲覧日:2026年8月26日)
Microsoft Learn「Privacy and protections」(Microsoft Copilot Chat のドキュメント/英語/ページの内部情報では、記事の日付が2026年8月18日、更新日時が2026年8月24日と記録されています)
https://learn.microsoft.com/en-us/
copilot/privacy-and-protections
(閲覧日:2026年8月26日)
Microsoft Learn「Manage Microsoft Copilot scenarios in the Microsoft 365 admin center」(英語/ページの内部情報では、記事の日付が2026年8月11日、更新日時が2026年8月18日と記録されています)
https://learn.microsoft.com/en-us/copilot/
microsoft-365/microsoft-365-copilot-page
(閲覧日:2026年8月26日)
Microsoft「Privacy Statement」(プライバシーに関する声明/英語/ページ上の表示:Last Updated: July 2026)
https://www.microsoft.com/en-us/
privacy/privacystatement
(閲覧日:2026年8月26日)
Anthropic プライバシーセンター「Is my data used for model training?(Commercial Customers)」(英語)
https://privacy.claude.com/en/articles/
7996868-is-my-data-used-
for-model-training
(閲覧日:2026年8月26日/※更新表示は「今週」といった相対表記のみ)
Anthropic プライバシーセンター「Is my data used for model training?(Consumers)」(英語/ページ上の表示:March 17, 2026)
https://privacy.claude.com/en/articles/
10023580-how-do-you-use-
personal-data-in-model-training
(閲覧日:2026年8月26日)
東京商工リサーチ「2026年4月『生成AI』に関するアンケート調査」(調査期間:2026年3月31日〜4月7日/インターネットによるアンケート/有効回答6,327社)
https://www.tsr-net.co.jp/data/
detail/1202766_1527.html
(閲覧日:2026年8月26日)
※本記事の引用は、各社の公式ページおよび調査リリースから、出所を明示したうえで必要最小限の範囲にとどめました。英語で書かれた出典については、日本語の逐語訳ではなく趣旨の紹介にとどめており、その日本語は私(マークレスト 平野)による要約であって、各社の公式訳ではありません。日本語で逐語を引用したのは、日本語の公式ページが用意されているOpenAIのエンタープライズプライバシーのページ、Googleの「Gemini アプリのプライバシー ハブ」(日本語版)、および東京商工リサーチのリリースです。
※言い換え・表への整理・業種への当てはめは、私(マークレスト 平野)によるものであり、引用元各社および調査主体の見解ではありません。
※本記事の内容は2026年8月26日時点で確認したものです。各社の仕様・画面・利用条件は変更されることがありますので、最新の内容は上記の公式ページでご確認ください。当社が最新性を保証するものではありません。
※当社は「何に・どう投資するか」の交通整理(マーケティング支援)を担います。個人情報の取り扱いや法令の当てはめに関する個別の判断は、該当分野の専門家へご確認ください。