現場から見た経営とお金の使い方

「企業の8割」に自社は入っていますか|統計の調査対象欄を見る30秒

この記事の要点

「クラウド利用8割」「テレワーク導入5割」。出典である総務省の調査は、常用雇用者100人以上の企業が対象で、従業者20人の会社は母集団に入っていません。統計を自社の物差しにする前に、調査対象欄を30秒で確かめる手順をまとめました。

提案書や社内資料に、こんな一文が載っていることがあります。「企業の8割はすでにクラウドを使っています」「テレワークの導入は5割を超えました」。出典はきちんと書いてあり、国の統計です。数字そのものも、間違っていません。

それでも、ひとつだけ先に確かめていただきたいことがあります。その「8割」は、誰を数えた8割でしょうか。

先に結論だけ言います

①結論:この種の数字の出典としてよく使われる総務省「通信利用動向調査」の企業向けの調査は、調査の対象が「常用雇用者が100人以上の企業」(常用雇用者=継続して雇っている人。パート・アルバイトも含みます。詳しくは後述します)と定められています。つまり、従業者が20人の会社は、そもそも数えられる側に1社も入っていません。数字が間違っているのではありません。正しい数字を、当てる先を変えずにそのまま自社に当てているだけです。ここを見落とすと、「うちは遅れている」という誤った自己診断から投資が始まります。

②今日やる1手:いま手元にある提案書・社内資料・記事の中から、「%」の数字を1つだけ選んでください。1つで結構です。そして、その出典のページを開き、「調査の概要」「調査対象」「調査の範囲」と書かれた欄を探して、従業員規模の下限(何人以上か)を見てください。これだけです。出典が手元にあれば30秒、探すところから始めても15分ほどで終わります。費用はかかりません。

③この記事の対象:統計の数字を根拠に、システム・広告・採用媒体・制作などへの投資を判断しようとしている、中小零細企業の経営者の方。とくに従業員が100人に満たない会社の社長は、いちばん当てはまります。

逆に、対象でない方:常用雇用者が100人以上いる会社の社長です。その場合、この調査の数字は自社の物差しとして正面から使えます。堂々とお使いください。また、ここに書いた点検は全部、社長ご自身の手で無料でできます。読んだうえで、私から何かを買っていただく必要はありません。

先に、ズレの正体を1枚にしておきます。

よく引かれる見出しの数字 実際に数えられている会社
クラウドサービスを一部でも利用している企業=83.5% 常用雇用者が100人以上の企業(公務を除く産業)
テレワークを導入している企業=50.1% 同上。発送6,040社に対し、有効回答は2,489社

※出典=総務省「令和7年通信利用動向調査」(2026年5月29日公表/調査時点は2025年8月末)。数値の詳しい位置は、記事末の出典一覧からご確認いただけます。

※言葉の確認です。クラウド(クラウドサービス)=自社に機械(サーバー)を置かず、インターネット越しに借りて使うしくみのこと。メールやファイル共有、会計ソフトなどが当てはまります。テレワーク=会社以外の場所で働く働き方のこと。この記事では、この2つを「よく引かれる数字」の例として使います。

「1社も入っていない」というのは、私の推測ではありません。調査を実施した総務省自身が、対象をそう定めて公表しています。次の章で、その一文をそのままお見せします。


まず最初に——この統計は、まったく正しく作られています

ここが、この記事でいちばん大事な立て付けです。私はこの調査を批判していません。調査の目的は、「調査の概要」の冒頭に明記されています。

この調査により、企業における情報通信ネットワークの構築状況及び情報通信サービスの利用動向を把握し、情報通信行政の施策の策定及び評価のための基礎資料とする。

国の情報通信の政策を作り、その効果を測るための基礎資料です。その目的に照らせば、対象の決め方も、集計の仕方も、筋が通っています。調査は毎年続いていて、時系列で比べられるように注意書きまで添えられています。統計として、きちんと作られたものです。

そして——この数字を提案書に載せた方も、社内資料にまとめたご担当者も、記事に書いた方も、何も悪いことをしていません。むしろ逆です。いちばん信頼できる出所(国の統計)から取ってきたからこそ、誰も疑わずに通ってしまうのです。出所が怪しければ、誰かが立ち止まったはずです。

∴ 責めるべき相手は、どこにもいません。問題があるとすれば、それは「数字」でも「人」でもなく、調査の対象を読み替えないまま、自社に当ててしまう使い方のほうです。この記事は、その1点だけを扱います。

では、誰が数えられているのか(原文をそのまま引きます)

報道発表の「ポイント」(別紙1)には、調査概要としてこう書かれています。

・企業調査は、公務を除く産業に属する常用雇用者規模100人以上の企業が対象(6,040企業)。

さらに詳しい「企業編の概要」では、「調査の範囲」の欄に、企業についてこう定めています。

以下の産業に属する、常用雇用者が100人以上の企業(事業所本所又は単独事業所)

言葉を噛み砕きます

  • 常用雇用者=ざっくり言えば「継続して雇っている人」のことです。調査票の注記には、パート・アルバイトも含むと明記されています(この後で引用します)。正社員だけの人数ではありません。
  • 母集団(ぼしゅうだん)=その調査が「本当は全部を調べたい」と考えている集団のこと。今回で言えば「常用雇用者100人以上の全企業」です。数えられる側に入る、ということです。
  • 標本(ひょうほん)・サンプル=母集団の全部は調べきれないので、その中から選んで実際に調査票を送る先のこと。今回は6,040社に送っています。
  • 有効回答数=実際に返ってきて、集計に使えた社数のこと。今回は2,489社です。

調査票の注記には、その「常時雇用されている者」の中身が、次のように書かれています。

常時雇用されている者には、正社員、正職員、パート、アルバイト、嘱託、契約職員などの呼称にかかわらず、期間を定めずに、または1か月以上の期間を定めて雇用している者が該当します。

ここは正確に押さえてください。パートやアルバイトを足して100人に届くなら、その会社は対象に入ります。逆に言えば、パート・アルバイトまで数えても100人に届かない会社は、最初から対象の外側です。

返ってきた2,489社の内訳

実際に集計された2,489社を、従業者の規模で割るとこうなります。いちばん小さい区分でも「100〜299人」です。

従業者規模 有効回答の社数
100〜299人 1,691
300〜999人 572
1,000〜1,999人 122
2,000人以上 104
2,489

この表に、従業者20人の会社の行はありません。少ないのではなく、区分そのものが存在しません。

国の定義と重ねると、線がはっきり見えます

中小企業庁が公表している「中小企業・小規模企業者の定義」では、小規模企業者を次のように定めています。

業種分類 中小企業基本法の定義(小規模企業者)
製造業その他 従業員20人以下
商業・サービス業 従業員 5人以下

※中小企業庁「中小企業・小規模企業者の定義」より。同ページには「商業」とは卸売業・小売業を指す旨の注記があります。

つまり、国が「小規模企業者」と呼んでいる会社は、この調査の対象と定義上まったく重なりません。「たまたま回答が少なかった」のではなく、構造として、最初から数えられていないのです。

★ここが最大の落とし穴——「資本金1,000万円未満」は、小さい会社ではありません

この記事で、いちばん誤解が起きやすい場所です。先に書いておきます。

この調査の結果には、資本金の規模で割った内訳が載っています。いちばん下の区分は「資本金1,000万円未満」です。ここを見て「なんだ、小さい会社の数字もあるじゃないか」と思いたくなります。ですが、それは違います。

この「資本金1,000万円未満」の会社も、全社が常用雇用者100人以上です。調査の対象がそう定められている以上、例外はありません。資本金が小さいだけで、人数は決して小さくない会社——たとえば人手のかかる業種で、資本金は抑えたまま従業員を100人以上抱えている会社が、ここに入ります。これを「零細企業の姿」として紹介したら、それは誤りです。

それでも、この内訳は「読み方の練習」としてとても役に立ちます

資本金の規模で割ると、同じ調査の中でも、数字によってばらつき方がまったく違うことが分かります。

  テレワークの導入 クラウドの利用
見出しの数字(全体) 50.1% 83.5%
資本金1,000万円未満
n=100
19.5% 75.4%
資本金50億円以上
n=165
88.3% 99.8%

※いずれも令和7年(2025年)の値。資本金の規模は8つの区分に分かれています。上の表は、そのうち両端の2区分だけを抜き出したものです(中間の6区分は原典の図表3-2・図表4-2をご覧ください)。n=その設問に回答した社数のことです。上記はすべて常用雇用者100人以上の企業の内訳であり、資本金1,000万円未満の区分も同じく100人以上の企業です。

同じ1枚の調査で、この差です。

  • クラウドは、内訳を割っても崩れません。8つの区分で最も低いのは資本金1,000万円〜3,000万円未満の74.8%、最も高いのは50億円以上の99.8%。いちばん下でも74.8%です。「8割」という見出しは、内訳を見てもおおむね持ちこたえています。
  • テレワークは、内訳を割ると崩れます。「5割」という見出しの裏側で、19.5%から88.3%まで開いています。ここで「5割が導入している」を自社の基準にすると、判断を大きく誤ります。

私がこの記事で本当にお伝えしたいのは、ここです。「見出しの1つの数字を疑え」ではありません。見出しの数字が自社に使えるかどうかは、内訳を割ってみるまで分からない——それだけです。そして内訳を割る前に、そもそも自社が数えられているのかを確かめる。順番はこうです。

もう1つ、正直に付け加えておきます

「100〜299人の会社が1,691社で全体の約7割だから、この数字はほぼ中堅企業の実態だろう」——そう読みたくなりますが、そう単純ではありません。この調査は、回収率が地域や産業によって偏ることを踏まえ、比重調整(回答に重みを掛けて母集団の構成に近づける処理)を行っていると明記しています。回答した社数の割合が、そのまま結果に反映されているわけではありません。

ただし、この調整は地方別・産業別に対して行われるものです(概要に「企業用比重値(地方別、産業別)」と記載)。調整をしたからといって、もともと対象になっていない規模の会社が母集団に加わるわけではありません。ここまで見ても、結論は変わりません。

「東海の数字」を使うときに、必ず一緒に書くべきこと

私は名古屋を拠点に、愛知・岐阜・三重の中小零細企業を対象に仕事をしています。だから地方別の数字は喉から手が出るほど欲しいのですが、ここには専用の落とし穴が3つあります。

落とし穴1:総務省の「東海」には、静岡が入っています

企業編の概要には、地方別の区分がこう定義されています。

東海 (岐阜、静岡、愛知、三重)

4県です。「東海3県(愛知・岐阜・三重)」という日常の言い方とは、範囲が違います。この定義を書かずに「東海では◯%」と紹介すると、読んだ人は3県の数字だと受け取ります。数字は正しいのに、伝わり方が正しくなくなる——いちばんもったいない事故です。

落とし穴2:東海の回答は302社。数字の幅が広くなります

有効回答2,489社のうち、東海は302社です。概要には「主な分類項目の誤差率」という表があり、標本誤差——つまり「本当の値は、この幅のどこかにある」という、統計につきものの振れ幅——が示されています。

分類項目 標準誤差 標本誤差
全体 1.0% 1.9%
東海 2.8% 5.5%

※総務省「令和7年通信利用動向調査(企業編)の概要」の「(5)主な分類項目の誤差率」より。同表には「集計対象が全企業(2,489企業)である場合の標本比率の誤差率である。また標本誤差の信頼区間の幅は1.96(信頼度95%)である。」と注記されています。

細かく切るほど、答えの幅は広くなります。これは調査の欠点ではなく、標本調査というやり方に必ずついてくる性質です。だから地方別の数字を資料に載せるなら、幅も一緒に書く。それが誠実です。

落とし穴3:報道発表の資料に、企業の地方別の数字は載っていません

ここは実際に確かめました。今回公表された「ポイント」(別紙1)と「結果(概要)」(別紙2)に載っている企業向けの内訳は、産業別と資本金規模別だけです。地方別の内訳が出てくるのは、企業ではなく個人(世帯構成員)のインターネット利用状況のほうです。

∴ 企業の「東海の◯%」を引きたい場合、この2つの資料だけでは足りません。統計表を別に開く必要があります。もし手元の資料に企業の地方別の数字があり、出典が別紙1・別紙2になっていたら、そこは一度確認したほうがよい箇所です。

製造の現場で見てきた「平均」の扱い方と、まったく同じ構造です

私は独立する前、製造業をふくむ5つの業種で15年ほど現場にいました。生産管理や営業も担当していました。

その経験から言うと、この話は不良率の扱い方と同じ構造です。※以下は、統計の読み方に当てはめて説明したものです。特定の会社の実例ではありません。

全社平均の不良率が1%だったとします。この1枚だけを見ているうちは、どこにも手が入りません。ところが工程ごとに割ると、A工程は0.1%、B工程は5%だった——改善が始まるのは、平均を見ている間ではなく、内訳を割った瞬間からです。そして、もっと大事なことがあります。そもそもB工程が集計の対象に入っていなければ、どれだけ平均を眺めても、B工程は永遠に見つかりません。

統計を自社に当てるときも、順番はまったく同じです。

  1. 自社は、そもそも数えられているか(=調査対象に入っているか)
  2. 入っているなら、内訳を割るとどうか(=規模別・産業別で崩れないか)
  3. そのうえで、自社の実測とどう違うか

1を飛ばして3をやると、「うちは平均より遅れている」という、根拠のない焦りだけが残ります。そして焦りは、たいてい要らない買い物につながります。何にお金を使うかを決める前に、どこが詰まっているのかを先に見つける——その考え方そのものは、中小企業のお金の使い方|投資の前に「ボトルネック」を見つける現場術に書きました(ボトルネック=ビンの首のこと。会社全体の流れる速さを決めている、いちばん詰まっている一か所を指します)。

今日やる30秒チェック(3ステップ)

対象は1つに絞ってください。「これから統計を見るときは気をつけよう」では、まず何も起きません。いま手元にある紙や画面の中から、%の数字を1つだけ選ぶ——ここから始めます。

ステップ0:数字を1つ選ぶ(準備)

  • 直近にもらった提案書・見積書に添えられた説明資料
  • 社内の会議資料・稟議書
  • 読んで気になったニュース記事・業界メディアの記事

この中から、「企業の◯%が〜しています」という形の一文を1つ選びます。いちばん自社の投資判断に効いていそうなものを選んでください。

選び終えたら、ここから先のステップ1・2・3が、各10秒。合わせて30秒です。

ステップ1:出典を開く(10秒)

資料の脚注や記事の末尾にある出典名・URLをたどって、元のページを開きます。

  • 出典が書かれていない場合、ここで終わりです。その数字は、自社の基準には使えません(後述の依頼文をお使いください)
  • 出典が「◯◯総研の調査」のような名前だけの場合も、元ページが見つからなければ同じ扱いです

ステップ2:「調査の概要」「調査対象」の欄を探す(10秒)

探す言葉は、この4つだけです。

  • 調査対象調査の範囲調査の概要調査設計

PDFなら、キーボードで Ctrl+F(Macは Command+F)を押して「対象」と打つのがいちばん速いです。たいてい1ページ目か、いちばん最後にあります。

ステップ3:従業員規模の下限を見る(10秒)

そこに書かれている「何人以上か」を読みます。判定は3つに1つです。

調査対象欄に書かれていること その数字の扱い方
下限が自社の人数より上
例:100人以上/300人以上/上場企業
自社の基準には使わない。「世の中の大きな流れ」を知る参考として読む。資料に載せるなら、対象の条件を必ず併記する
自社が含まれている
例:中小企業基本法の定義に基づく/全国の中小企業
使える。ただし、次に規模別・業種別の内訳を見る。見出しの数字が内訳で崩れていないかを確認する
どこにも書かれていない 自社の基準には使わない。数字が間違っているという意味ではなく、当てはまるかどうかを判断できないという意味。判断できないものを判断材料にしない

実際にやってみます(この記事の出典で)

手順が本当に30秒で終わることを、この記事の出典そのもので示します。

  1. 数字を選ぶ——「テレワークを導入している企業の割合は50.1%」
  2. 出典を開く——総務省「令和7年通信利用動向調査(企業編)の概要」
  3. 「調査の範囲」の欄を見る——「常用雇用者が100人以上の企業」

ここで終わりです。従業者20人の会社の社長にとって、この時点で「50.1%」は自社の基準から外れました。0.1%まで書かれた精密な数字が、自社にとっては1文字も使えない——これが、調査対象欄を先に見る理由です。

数字の出どころを尋ねるときの、そのまま送れる文

出典が書かれていなかったとき、あるいは対象が分からなかったときに使ってください。大事なのは、相手を問い詰める形にしないことです。先ほど書いたとおり、この種の数字は悪意で使われているわけではなく、信頼できる出所から来ているからこそ疑われずに通ってしまうだけだからです。聞かれた側も、たいてい快く教えてくれます。

お世話になっております。〇〇(会社名)の△△です。
先日いただいた資料の中に「企業の◯%が〜」という数字がありました。とても参考になりましたので、当社側でもう少し詳しく読みたいと思っています。

お手すきの際で結構ですので、次の2点を教えていただけますでしょうか。

1. この数字の出典(調査名・公表元・公表年)
2. その調査の「調査対象」の条件(対象となる企業の従業員規模など)

当社は従業員◯名ですので、当社が調査の対象に含まれているかどうかを確認したうえで、社内の判断材料にしたいと考えております。お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

この一文があるかないかで、社内の議論の質が変わります。「なんとなく遅れている気がする」から「当社は対象外なので、別の物差しで測る」へ、話が一段進むからです。

では、代わりに何を見ればよいのか

中小企業を対象にした調査は、ちゃんとあります。ここでは名前とURLだけをお伝えします。数字は挙げません。数字を先に見せてしまうと、この記事でお伝えしたかったこと(=自分で調査対象欄を見る)が丸ごと台無しになるからです。

1. 中小企業基盤整備機構(中小機構)「中小企業アンケート調査」

中小企業向けの実態調査が、年度ごとにまとめて置かれています。ここの資料は、調査対象の書き方がとても分かりやすいので、ステップ2の練習にも向いています。たとえば、ある調査の1ページ目には次のように書かれています。

・調査対象:全国の中小企業10,000社 (中小企業基本法における中小・小規模企業の定義に基づく)

※中小機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査(2026年3月)」ポイント版の1ページ目より。本記事では、この調査の結果の数値には触れません。

この1行があるかどうかが、決定的です。「中小企業基本法における中小・小規模企業の定義に基づく」と明記されていれば、従業員20人の会社も、5人の会社も、数えられる側にいます。

2. 日本政策金融公庫「刊行物・調査結果」

景況、経営指標、新規開業などの調査が公開されています。中でも「小企業の経営指標調査」は、公庫自身の説明によれば次のようなものです。

本調査は、決算データをもとに小企業の収益性や生産性などの指標値を集計したものです。業種ごとに隔年で実施しています。

業種別のPDFに加えて、「従業者規模別」のPDFが分けて置かれているのが、この調査の使いやすいところです。自社に近い規模の列だけを見に行けます。

ただし、ここでも同じことをしてください。私が名前を挙げたからという理由で、そのまま使わないでください。開いたら、まず調査対象欄を見る。それがこの記事の全部です。

ここまで読んで、勘違いしていただきたくないこと

誠実に、3つ書いておきます。

  • 「大きい会社の数字だから、自社には無関係」ではありません。取引先や採用の競合が100人以上の会社なら、その動きは、取引条件のすり合わせや求人での見られ方を通じて、自社にも及んできます。「自社の現在地を測る物差し」としては使わない。「世の中がどちらへ動いているかを知る材料」としては使う。この2つを分けてください。
  • 「対象外だから、その施策は要らない」でもありません。テレワークの導入率が19.5%だろうが88.3%だろうが、自社にとって必要かどうかを決めるのは、平均ではなく自社の事情です。統計は、判断の材料であって、判断そのものではありません。
  • この記事は、統計を疑えという話ではありません。むしろ逆で、統計を正確に使うために、書いてある条件をそのまま受け取ろうという話です。総務省は対象を隠していません。1ページ目に、はっきり書いています。その1行に目が向きにくいだけです。

まとめ

  • 「企業の8割はクラウドを利用」「テレワーク導入5割」の出典としてよく使われる総務省「通信利用動向調査」の企業向けの調査は、常用雇用者100人以上の企業が対象従業者20人の会社は、母集団に1社も入っていない。
  • 統計に落ち度はない。国の情報通信政策の基礎資料という目的に照らせば設計は妥当。問題があるとすれば、読み替えずに自社へ当てる使い方のほう。
  • 「資本金1,000万円未満」の区分も、全社が常用雇用者100人以上。これを「零細企業の姿」として紹介したら誤り。
  • それでも内訳は役に立つ。資本金規模の8区分で割ると、テレワークは19.5%〜88.3%(68.8ポイント差)まで開くのに、クラウドは74.8%〜99.8%(25.0ポイント差)にとどまる。見出しの数字が内訳で崩れるかどうかは、割ってみるまで分からない。
  • 総務省の「東海」は岐阜・静岡・愛知・三重の4県。愛知・岐阜・三重の3県ではない。東海の回答は302社、標本誤差は5.5%(全体は1.9%)。そもそも企業の地方別の内訳は、今回の別紙1・別紙2には載っていない。
  • 今日やる1手:手元の資料から%を1つ選び、出典を開いて「調査対象」「調査の範囲」の欄の従業員規模の下限を見る。出典が手元にあれば30秒、探すところからでも15分ほど。書かれていなければ、その数字は自社の基準に使わない。
  • 代わりの物差しは中小機構「中小企業アンケート調査」日本政策金融公庫「刊行物・調査結果」開いたら、そこでもまず調査対象欄を見る。

課題が多すぎて、どれから手を付けるか決めきれない——という状態そのものについては、経営課題は31項目。全部やろうとするから全部止まる|順番の決め方に書きました。数字を疑う前に、順番を決めるほうが先という場面もあります。

ここから先は、私の役割の線引きです。私が「この数字は御社に当てはまります/当てはまりません」と一言で判定して差し上げることはできません。当てはまるかどうかは、御社の人数・業種・すでに持っている設備によって変わるからです。また、統計の作成・調査の代行も行いません。私がお引き受けできるのは、どの数字を自社の物差しに据えるかを決め、そこから何に・どう投資するかを整理し、実行まで伴走する、その部分です。ここは有償のご支援になります。無料でお受けしているのは、次にご案内する初回面談(90分程度)までです。

そのうえで、まずは状況をお聞かせいただきたいという方は、無料相談はこちらのお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。初回面談はオンラインで90分程度。こちらから契約を急かしたり、その場で契約をお願いしたりすることはしません。新たな投資が不要と判断すれば、その旨を誠実にお伝えします。


出典(すべて2026年8月20日に取得)

※本記事で引用した総務省「令和7年通信利用動向調査」の数値・調査対象・地方区分は、2026年8月20日時点で公表されている内容です。調査時点は2025年8月末、公表は2026年5月29日。同日時点で、総務省の「正誤情報」ページに令和7年調査に関する訂正の掲載はなく、次年度(令和8年)調査の結果も未公表であることを確認しています。統計は毎年更新され、訂正が入ることもあります。最新の内容は上記の公式ページでご確認ください。
※引用(枠で囲んだ部分)は、公開されている資料の本文からそのまま写しています。強調・省略・言い換えなどの改変は加えていません。ただし「数字の出どころを尋ねるときの、そのまま送れる文」の枠だけは引用ではなく、私が作成した文例です。
※「30秒チェック」の3ステップ、および記事内の見立て・当てはめは、公式資料の記載ではなく、私自身が実務で用いている考え方です。
※私は「何に・どう投資するか」の交通整理(マーケティング支援)を担います。統計の専門的な解釈や、税務・申請手続きの個別判断は、それぞれの専門家や公表元へお問い合わせください。

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