AIで現場を軽くする

研修テストをAIに作らせる|Googleフォーム新機能の使いどころ

この記事の要点

Googleフォームの作成補助がクイズ生成に対応しました。通常展開は2026年8月5日から順次。安全教育や力量管理の記録づくりに効きますが、対象プランは限られます。公式の条件と、対象外の会社が今日できることを整理しました。

Googleフォームに、AI(Gemini)がテストそのものを作る機能が入りました。公式の告知は2026年7月30日。通常の展開は、本日2026年8月5日から順次はじまります。

この機能の値打ちは、時短ではありません。「作るのが面倒で後回しになっていた教育を、記録として残せるようになること」です。時間が浮くのは結果であって、目的ではありません。

この話が当てはまる会社・当てはまらない会社

最初に、ここをはっきりさせます。読み進めてから「うちは対象外だった」となるのは、時間の無駄だからです。

公式に対象として挙げられているのは、次の契約です。

  • Google Workspace の Business Standard/Business Plus
  • 同 Enterprise Standard/Enterprise Plus
  • 同 Education Plus
  • 個人向けの Google AI の有料プラン(公式の表記は「Consumer: Google AI, Pro, and Ultra」)
  • 教育向けアドオン(Google AI Pro for Education、Teaching and Learning)

無料のGmail(有料のAIプランを付けていない状態)や、Google Workspace の Business Starter は、この対象一覧に載っていません。「まだ来ていない」のではなく、公式が示した一覧の外側にある、という意味です。

自社の契約が分からないときは、Googleからの請求メールか、契約時の書面に記載があります。管理者に一言確認してください。

さらに、Workspace をお使いの会社にはもう1つ関門があります。「スマート機能とパーソナライズ」という設定が有効になっていないと、そもそもGeminiがフォームの横に出てきません。公式は「利用者側でこの設定が有効になっている必要がある」と書いたうえで、「管理者は管理コンソール(Google Workspace の管理者だけが入れる設定画面)で、利用者の既定の設定を有効にできる」と続けています。つまり、管理者側の設定と、利用者本人の設定の両方を確認する必要があります。

そして、有効にしてあっても今日すぐ全員の画面に出るとは限りません。公式には、最大15日かけて段階的に展開すると書かれています。上の設定を有効にしたうえで画面に出てこないときは、設定を疑う前に数日おいて確認してください。

今日やる1手

対象の会社も、対象外の会社も、最初の1手は同じです。

「テストのもとになる資料が、Googleドライブに「データ」として置いてあるか」を確認してください。ここが済んでいないと、この先の話はすべて空振りします。

この機能は、ドライブにあるGoogleドキュメント・Googleスライド・PDFを出典として指定してテストを作れます。もとになる資料がデータで存在しないと、この機能の一番の値打ち——手元の資料に沿った問題が出てくること——が使えません。

ありがちなのは、この状態です。

  • 作業標準書が紙のバインダーで、事務所の棚にある
  • 安全衛生の資料が、紙をスマホで撮った写真のままドライブに入っている
  • 前任者が作ったExcelが、誰かのパソコンの中にだけある

この3つは、AIが読める形になっていません。「AIを入れる前に、AIが読めるものを用意する」——これが順番です。逆にここさえ済んでいれば、あとはプランと設定の話に絞られます(設定の有効化と、公式が示す最大15日の段階的展開を経て、画面に出てきます)。

ここまでが、この記事の骨です。以下は「なぜ教育の記録なのか」「実際にどう進めるか」「先に決めておくこと」の順で、根拠と手順を書きます。

何が新しくなったのか(公式の記述)

Google Workspace の公式アップデート情報(2026年7月30日付)には、こう書かれています。

「Help me create in Google Forms now supports generating quizzes.」(Googleフォームの作成補助機能「Help me create」が、クイズの生成に対応しました)

これまでの「Help me create」は、アンケートのような回答を集めるフォームを作る機能でした。今回、そこに正解・不正解のあるテストが加わりました。

実務上の違いは、次の3点です。

  • ドライブの資料を出典に指定できる。「この作業標準書からテストを作って」と指示できます。ゼロから文章を考えさせるのではなく、手元の資料に沿った問題が出てきます。
  • 正解があらかじめ入った状態で出てくる。問題を作ってから正解を1問ずつ設定し直す、という一番面倒な工程が省けます。
  • 設問の形式が複数使える。公式は、選択式(multiple choice)、グリッド(表形式)、チェックボックスといった複数の設問形式に対応していると記載しています。

展開の日程は公式に明記されています。Rapid Release(先行展開の設定にしているドメイン)は2026年7月24日から、Scheduled Release(通常展開の設定にしているドメイン)は2026年8月5日から、それぞれ最大15日かけて順次。先行展開のほうは、告知(7月30日)より前の7月24日にすでに始まっています。自社がどちらの設定かは、管理コンソールに入れる管理者に聞けば分かります。分からないまま待つより、一言確認するほうが早いです。

なぜ「教育の記録」に効くのか

私は独立する前、製造業や運送の現場にいました。ISOの審査対応や力量管理そのものを担当していたわけではありませんが、教えられる側・教える側として現場にいた立場から引っかかるのは、中小企業でいちばん後回しにされるのが、教育そのものではなく「教育をやった証拠を残す作業」だということです。

ベテランが新人に3時間つきっきりで教える。中身は濃い。けれど記録は「◯月◯日 安全教育実施」の一行だけ。何を教えたのか、相手が理解したのか、どこが分かっていなかったのかは、どこにも残りません。

これは、担当者が手を抜いているからではありません。テストを一から作ると、それなりの時間がかかるからです。教えることより、理解を確かめることのほうが後回しになる。順序として、そうなります。

ここが、今回の機能が刺さる一点です。もとになる資料を指定して下地が出てくるなら、「面倒だから省く」という理由は、かなり小さくなります。

そして、記録は積み上がります。

  • 誰が何を理解しているかが、数字で見える。10人が受けて、7人が同じ設問を間違えたなら、それは受けた側ではなく教え方か、資料そのものに原因があると分かります。
  • 資料の”読みにくさ”が、逆算で見つかる。AIが資料から問題を作りにくいときは、構成や書き方を整える余地があるサインとして使えます(資料そのものの価値が下がるという意味ではありません)。
  • 結果が手元に残る。広告のように”今すぐ効かせる一手”とは役割が違い、この記録は止めても手元に残り、次の教育の材料になります。

とくに製造・建設・運送のように、作業内容や設備が変わるたびに教育とその記録が必要になる業種では、この積み上がりが効いてきます。ここ東海は、まさにその業種が厚い土地です。なお力量の管理とは、誰にどの作業を任せられるかを会社として把握しておくことを指します。ISO9001やISO14001を運用している会社なら、力量について教育を実施した記録に加えて、とった処置の有効性を評価した記録の保持が求められます(ISO9001:2015/ISO14001:2015 いずれも箇条7.2)。テストの結果は、その「有効性を確かめた側」の材料の一つになり得ます。ただし、何がどこまで要求を満たすかは、規格の解釈と審査機関の判断によります。

ベテランの頭の中にあるものを形にする話は、以前属人化をAIで解く|ベテランの技を「引き継ぎマニュアル」にする方法でも書きました。今回のテスト生成は、その次の工程——作ったマニュアルが本当に伝わったかを確かめる側——に当たります。

進め方(4ステップ)

1. もとになる資料を1つだけ選ぶ

いきなり全部をやろうとすると止まります。いちばん教える回数が多いものを1つだけ選んでください。新人が必ず通る作業手順、毎年やる安全教育、その年に変わった規則。この3つのどれかに、たいてい当てはまります。

2. その資料をドライブに、読める形で置く

Googleドキュメント、Googleスライド、あるいはPDFです。紙をそのまま撮った写真は避けてください。文字として認識できないと、AIは中身を読めません。スキャンする場合も、文字が選択できる(コピーできる)状態かどうかを確認してください。

3. フォームで「作成を手伝って」から指示する

Googleフォームを新規に開き、Geminiの「作成を手伝って(Help me create)」を使います。指示の書き方は、次のように目的・出典・条件をそろえると精度が上がります。

  • 目的:「新入社員向けの、フォークリフト作業の安全確認テストを作ってください」
  • 出典:「◯◯作業標準書(ドライブのファイルを指定)の内容だけを使ってください」
  • 条件:「選択式で10問。実際に手を動かす順番を問う設問を必ず入れてください」

「だけを使ってください」と書くのは大事です。指定しないと、一般論が混ざります。自社の手順と世間の手順が違う場合、混ざったテストは害になります。

4. 出てきた問題を、人が確かめる

ここは省けません。公式も「生成されたクイズはプレビューでき、挿入したあとで必要に応じて内容を調整できる」と書いています。つまり、人が確かめて直すことを前提にした設計です。そして自社の作業手順は、自社の人しか正誤を判定できません。

確かめる観点は3つで足ります。

  • 正解が本当に正解か(自社の手順と一致しているか)
  • 危ない問題が混ざっていないか(「やってはいけない手順」が正解になっていないか)
  • 資料に書いていないことを聞いていないか

一から作る作業が、出てきたものを確かめる作業に変わる。効き方はここです。そして、確かめる工程そのものは省けません。

使う前に決めておく3つのこと

個人の評価に使うかどうかを、先に決める

テストの結果は、扱い方を決めずに集め始めると必ずもめます。「教え方を直すために見る」のか「個人を評価するために見る」のか。どちらが正しいという話ではなく、受ける人に先に伝えておくかどうかが分かれ目です。伝えずに評価へ流用すると、次から正直に答えてもらえなくなります。

入力してよい情報の線を引く

出典に指定する資料に、取引先名・個人情報・図面のような社外秘が含まれていないかを確認してください。生成AIに何を入れてよいかの考え方は、生成AIの落とし穴|IPAが警告したリスクと中小企業3つの守りにまとめています。「便利だから」で線を引かずに使い始めるのが、いちばん危ない入り方です。

資料が変わったら、テストも変える段取りにする

作業手順が変わったのに、古い手順のテストが残っている——これは記録があるぶん、記録が無いより厄介です。「標準書を改訂したら、同じ日にテストも作り直す」を手順に組み込んでください。作り直しの負担が下がるからこそ、現実的な運用になります。

対象プランでない会社こそ、順番が効く

無料のGmailやBusiness Starterは、公式の対象一覧に載っていません。現時点では使えないとみるのが妥当です。ですが、やることが無いわけではありません。むしろ、ここからが本番です。

先ほど書いたとおり、この機能を使えるかどうかを決めているのは、ツールではなく資料の状態です。紙の作業標準書をデータにする作業は、契約プランに関係なく今日から進められます。そしてそれが済んでいなければ、プランを上げても値打ちは出ません。

順番はこうです。

  • まず、いちばん使う資料を1つデータにする(プラン不問・今日できる)
  • 次に、テストが本当に必要な頻度かを見る(年1回なら手作りで足りる場合もあります)
  • 頻度が高いと分かってから、プランを検討する

「新しい機能が出たからプランを上げる」は、順番が逆です。困っていることが先にあって、道具は後です。月額を上げる判断は、資料をデータにしてみて「これは毎月やる作業だ」と分かってからで遅くありません。

まとめ

もう一度だけ整理します。Googleフォームのクイズ生成が値打ちを持つのは、時間が浮くからではありません。「面倒だから省かれていた確認」を、記録として残せるようになるからです。教えた事実ではなく、伝わったかどうかを確かめた記録が残る。ここが変わります。

今日動かすのは1つだけいちばん教える回数が多い資料を1つ選んで、Googleドライブに読める形で置く。ここが出発点です。対象プランかどうかに関わらず、変わりません。使い始める前に決めておくこと(上の3つ)は、その次で間に合います。

最後に、少し違う角度からひとつ。社内の教育を整えても、その会社の良さが外に伝わっていなければ、来てほしい人には届きません。どこから来て、どこで離れているのか——ここは感覚ではなく、数字で見るところです。マークレストは、名古屋を拠点に中小企業の外部CMO(頼れる右腕)として、生成AIをどこに使い、どこには使わないかの交通整理からご一緒します。ツールの導入代行や、Google Workspace の契約手続きそのものを代行する立場ではありません。また、安全衛生教育が法令上の義務を満たすかどうか、ISO規格の要求に適合するかどうかを判断する立場でもありません(ここは所轄の労働基準監督署・審査機関・該当分野の専門家の領域です)。
この記事と同じで、初回のご相談でもこちらから話を盛ることはしません。オンライン面談を基本に、まずは90分程度、お話をうかがいます(ご希望があれば対面でも伺います)。契約を急かしたり、その場で契約をお願いしたりすることはしません。新たな投資が不要と判断すれば、その旨を誠実にお伝えします。無料相談のお申し込みはこちらからどうぞ。

参考(出典)

※対象プラン・展開日程・設定の前提は、いずれも上記の公式ページに記載されている内容です(2026年8月5日取得)。本文で引用した英文は原文のままです。日本語表示になる場合は、URLの末尾に「?hl=en」を付けると原文が表示されます。

※本記事は2026年8月5日時点で確認できた公式情報にもとづく一般的な情報提供です。機能の提供状況・対象プランは変更されることがあります。導入の可否や契約内容については、Google の公式ヘルプおよび管理コンソールの表示をご確認ください。労働安全衛生法上の教育義務やISO規格の要求事項に関する個別の判断は、所轄の労働基準監督署や審査機関、該当分野の専門家にご確認ください。

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