「川から遠いから大丈夫」の前に。まちの雨が下水道などからあふれる想定(内水)は洪水とは別の地図です。2026年10月9日時点、国の内水の掲載一覧に名古屋市の行は無く、市は区ごとに内水の地図を公開。住所を2枚の地図で見て4行に書く手順。
結論から書きます。会社の住所の「水の想定」は、川の水があふれる想定(洪水)と、まちに降った雨が下水道などで流しきれずにあふれる想定(内水)とで、別々の地図に載っています。そして、国土地理院の「重ねるハザードマップ」(ハザードマップ=災害の想定を描いた地図。以下、国の地図)で内水の色が付かない場所でも、市町村のハザードマップには内水の想定が載っていることがあります。「川から遠いから水は大丈夫」という判断は、洪水の地図だけを見た判断になりやすい、ということです。
今日は、自社の住所を国の地図と市町村の地図の2枚で見て、〔洪水/内水/高潮/土砂〕の4行を紙に書いてください。高潮は台風などで海面が高くなり海水が陸へあふれること、土砂はがけ崩れなどの土砂災害のことです。その紙が、保険と設備を考えるときの材料になります。
根拠は次の3つです(いずれも2026年10月9日時点)。
この話の対象は、事務所・工場・倉庫・店舗のどれかを使い、そこに設備か在庫を置いている会社です。建物を借りている会社も対象です。名古屋市以外の東海の会社も、自分の市町村のハザードマップで同じ手順を使えます。
1手に入る前に、1つ決めておきます。今日は保険の契約を変えません。補償を外すことも、足すことも、今日はしません。保険会社のサイトなどで契約を触る操作も、今日はしません。今日やるのは、地図を見て紙に書くところまでです。
住所1つにつき、4行×地図2枚の8つの欄すべてに、この3つのどれかが入れば、今日の1手は完了です。探しても見つけられなかった欄は、「載っていない」ではなく「判断できない」と書きます(市町村が、その種類の地図は無いと説明している場合の書き方は、後半に書きました)。
落としてはいけない注意が1つあります。「この地図には色が無い」は、「その想定が無い(安全)」という意味ではありません。国土地理院自身が、よくある質問の中で、重ねるハザードマップで災害リスクの情報が表示されない場所は、被害が想定されていない場所か、今の時点でデータが整っていない場所のどちらかだと答え、最新で詳しい情報は市町村のハザードマップで確かめるよう案内しています。上の名古屋市の例も、国の地図で色が無い地点に、市の地図では想定がありました。だから紙には「安全」「想定なし」と書かず、「この地図には色が無い」とだけ書きます。
会社に冊子のハザードマップを置いているなら、マップの上部に書かれた時点を見てください。名古屋市は令和8年4月に洪水ハザードマップを更新し、中小の川(中小河川)の想定を新たに反映しました。名古屋市の説明では、冊子とWebの地図は、上部に書かれた時点が同じなら、載っている情報も同じです。時点が違えば、Webで公開されている地図で4行を書きます。名古屋市以外の会社は、自分の市町村の地図に時点が書かれていれば、それを紙に写しておきます。
2手目は任意です(今週中で構いません)。4行を書いた紙を手元に、保険の契約先(代理店・保険会社・共済)へ1通で聞きます。聞くのは、大雨・台風で水があふれたときや土砂災害のときの被害が今の契約の対象になっているかと、対象が建物・設備・在庫(商品)のどれか、の2つです。そのまま送れる依頼文を、記事の後半に置きました。依頼文には「今の補償を確かめたいだけで、変更や解約の相談ではありません」の1文を入れてあります。保険証券を探したり、読み解いたりする必要はありません。
4行とも色が無かった会社にも、紙1枚が手元に残ります。保険の更新の案内が来たときや、設備や在庫の置き場所を決めるときに、その紙を出してください。ただし、色が無かったことを「安全」の印や、補償を外す根拠としては使わないでください(理由は上の注意のとおりです)。
今日の4行に出てくる言葉を、もう少しだけ説明します。
川から遠いかどうかは、主に洪水の話です。内水は、まちに降った雨の話なので、川からの距離とは別の地図で見ることになります。
津波は、今日の4行に入れていません。日本損害保険協会の企業向けの一般的な説明では、企業向けの火災保険の基本の補償で、地震・噴火・津波による損害は対象外とされ、地震の側の補償として別に扱われるためです(補償の内容は保険会社によって異なります)。今日の4行は、2手目で、大雨・台風や土砂災害のときの補償を聞くための材料にします。なお、名古屋市の中川区のページには、津波ハザードマップも並んでいます。
浸水想定区域とは、ある条件の雨や高潮が起きたときに、水につかると想定される区域のことです。名古屋市は、被害の想定には計算の前提となる条件があり、データが完全だとは約束していない、と注意書きしています。地図に描かれているのは、条件を決めて計算した想定です。
国の地図の項目名には、想定最大規模という言葉も出てきます。考えられる中で最大級の規模を想定した、という意味です。名古屋市の説明では、市のハザードマップは、今の科学でわかっている範囲で、現実に起こりうる最大級の自然災害を前提にしたもので、その起きやすさは1年あたりおおむね1000分の1です。
重ねるハザードマップは、国土地理院のハザードマップポータルサイトの中にあります。画面の仕様は次のとおりです(端末によって、画面の並びが違うことがあります)。
国土地理院は、ハザードマップポータルサイトのよくある質問で、次のように答えています。
Q23. 「重ねるハザードマップ」で災害リスク情報が表示されない場所は安全ということでしょうか?
災害リスク情報が表示されない場所は、災害による被害の危険性が想定されている場所ではない、もしくは現時点で災害リスクに関するデータが未整備の場所です。
重ねるハザードマップでは、国や都道府県等の関係機関が作成した災害リスク情報を掲載しております。浸水想定区域図等は作成途上段階にあり、今後、新たな災害リスク情報が追加になる予定であるため、現時点で災害リスクがない場合であっても、状況が変わる可能性があります。また、新たな浸水想定区域図等が公表されてから重ねるハザードマップに反映するまでに、チェック作業等に期間を要します。
災害リスクが表示されない場合であっても、周りと比べて低い土地や崖のそばなど危険を感じる場合には、地方自治体からの避難情報などを参考に必要に応じて避難してください。最新かつ詳細な情報については各市町村が作成するハザードマップをご確認ください。
出典:「ハザードマップポータルサイト」(よくある質問 Q23)
つまり、国の地図で色が無いことには、想定されていない場合と、データがまだ整っていない場合の両方が含まれます。紙に「安全」と書かない理由は、ここにあります。名古屋市の地点で国の地図に内水の色が付かない理由までは、国の地図からは分かりません。分かっているのは、2026年10月9日時点で、国の地図の内水の表示では名古屋市の中川区などの地点に色が付かず、市の内水氾濫ハザードマップにはそのあたりにも想定がある、ということです。ここに書いたのは名古屋市内の限られた地点の表示で、名古屋市全体について言えることではありません。国の地図は更新されます。
なお、内水の掲載状況一覧のページには、次の注記もあります。
※こちらの一覧ページは現在整備中のため、一部の情報が空欄の市町村がございます。順次整備・更新してまいります。
出典:「ハザードマップポータルサイト」(重ねるハザードマップ 内水(雨水出水)浸水想定区域(想定最大規模) 掲載状況一覧)
この注記は、一覧のページについてのものです。国の地図そのものについての説明は、上のQ23のほうです。
名古屋市も、なごやハザードマップのページの留意事項で、重ねるハザードマップは各機関が作った情報をまとめて見られるようにしたもので、作った機関の情報やハザードマップと、地図の細かさや描き方、凡例などの表示が同じでない場合や、情報が整っていない場合があるとして、最新で詳しい情報は市町村のハザードマップで確かめるよう案内しています。国の地図を使わない、ということではありません。2枚を並べることで、1枚だけでは分からなかったことが、紙の上で見えることがあります。
名古屋市の場合は、市の公式ウェブサイトのなごやハザードマップのページから、区ごとのハザードマップを開きます。16区それぞれにページがあります。
岐阜・三重・愛知の、名古屋市以外の会社は、自分の市町村のハザードマップで同じことをします。国の地図の内水に載っている東海3県の市町は9つだけで、そのうち5つは、一覧では一部の地域だけのデータとされています。そして上の名古屋市のように、国の一覧に無くても市町村が自ら内水の地図を作っている例があります。市町村の地図で内水が見当たらないときは、その欄は「判断できない」と書きます。市町村が自分のページで、その種類の地図は無いと説明しているときだけ、「この地図が無い(市町村の説明)」と書きます。
自分の市町村のハザードマップを探すときは、国のハザードマップポータルサイトのトップページにある「わがまちハザードマップ」で、都道府県・市区町村・ハザードマップの種類を選んで「この内容で閲覧」を押すと、市町村のハザードマップへ移れます。ただし、移った先は、市町村が公開している最新のハザードマップではない場合がある、と国の利用規約に書かれています。移った先の地図に時点が書かれていれば、紙に書き添えます。最新の情報は各市町村に確かめるよう、国は同じ箇所で書いています。また、スマートフォンのSafari(インターネットを見るためのアプリ=ブラウザの1つ)では、市町村のハザードマップの画面に移らないことがある、と国のよくある質問に書かれています(国はSafari以外のブラウザを使うよう案内しています)。移れないときは、市町村の公式サイトのハザードマップのページを直接開きます。名古屋市の会社は、上のなごやハザードマップのページを直接開くのが早道です。
紙1枚に、次の表の形を写します。いちばん上に、住所と、地図を見た日付を書きます。表の中の小さな字は、見る場所の目安です。紙のその欄には、凡例の区分の文字か、「この地図には色が無い」か、「判断できない」を書きます。市町村が、その種類の地図は無いと説明している欄だけは、「この地図が無い(市町村の説明)」と書きます(「想定なし」とは書きません)。
| 想定の種類 | 国の地図 | 市町村の地図 |
|---|---|---|
| 洪水 | 〔洪水・内水〕の洪水浸水想定区域の行 | 洪水の地図 |
| 内水 | 〔洪水・内水〕の内水浸水想定区域の行 | 内水の地図(名古屋市は内水氾濫ハザードマップ) |
| 高潮 | 〔高潮〕 | 高潮の地図(名古屋市の千種・東・守山・名東の4区には無い) |
| 土砂 | 〔土砂災害〕 | 土砂災害の地図(名古屋市は洪水ハザードマップなどで見る) |
市町村の地図の欄には、見た地図の時点も小さく書き添えます。書き終えたら、紙の下に数行あけておきます。2手目で契約先から返ってきた答えを書く場所です。
ここからは任意の2手目です。今週中で構いません。メールでも、いつもの連絡手段でも構いません。次の文を、そのまま写して送ってください。〔 〕の中だけ書き換えます(建物を借りている会社は、下に書いた1文も足します)。証券が手元に無くても、この文は送れます。
件名:今の補償の確認のお願い(変更や解約の相談ではありません)
〔契約先のご担当者〕様
いつもお世話になっております。〔会社名〕の〔氏名〕です。
今の補償を確かめたいだけで、変更や解約の相談ではありません。
〔住所〕の事業所について、大雨や台風で川・下水道・海の水があふれたときや、がけ崩れなどの土砂災害のときの被害は、今の契約の対象になっていますか。対象になっている場合、建物・設備・在庫(商品)のどれが対象ですか。
お手すきのときに、ご返信いただけますと幸いです。
建物を借りている会社は、依頼文の「…どれが対象ですか。」の後ろに、次の1文を足してください。
なお、この建物は借りていますので、御社との契約で上の被害の対象になっているものを教えてください。
建物を借りていても、2手目で聞くことは同じです。返ってきた答えのうち、設備と在庫についての答えを、特に書き取ってください。
契約先のサイトやアプリから送るときも、送るのは上の依頼文だけです。契約の内容を変える画面には進みません。返事が「マイページで確かめてください」という案内だったときも、その画面では契約を触らず、紙には「確認中」と書きます。そのうえで、同じ依頼文の最後の行(お手すきのときに…)の前に「お手数ですが、マイページではなく、ご返信の文章で教えていただけますと助かります。」の1文を足して、もう一度送ります(件名と「今の補償を確かめたいだけで、変更や解約の相談ではありません。」の1文は、そのまま残します)。2通目でも文章での答えが無いときは、紙は「確認中」のままで構いません。
答えが返ってきたら、紙の下の空いた行に、〔建物〕〔設備〕〔在庫〕それぞれについて、契約先の言葉をそのまま書きます。はっきりしないところは「確認中」と書き、聞いた日付を添えます。答えの中に、補償を足す・外す・変えるといった提案が入っていても、その場では決めず、紙に書き写すところまでにしてください。
ここからは、東海の会社で起こりそうな場面を、私の見立てとして書きます。実在の会社の話ではありません。
名古屋市内で、大きな川から離れた場所に倉庫を借り、在庫を置いている卸売の会社を考えます。社長は「川から遠いから水は大丈夫」と考えていました。国の地図で〔洪水・内水〕を表示しても、倉庫の位置に色は見えません。ここで紙を閉じると、内水の行は国の地図の欄しか埋まっていません。区のページから内水氾濫ハザードマップを開き、倉庫の位置を拡大して探して、凡例の区分を写すか、「この地図には色が無い」と書いて、初めて内水の行が埋まります。倉庫は借りているので、2手目では、依頼文の下に書いた借りている建物の1文も足します。
岐阜県や三重県の町で、冊子のハザードマップを事務所の壁に貼っている店を考えます。冊子に時点が書かれていれば、まずそれを紙に写します。次に、町が公開しているハザードマップと見比べます。内水の地図が見当たらなければ、内水の行の市町村の欄は「判断できない」です。国の地図の欄も見て、2列とも埋めます。
拠点が3つある会社は、今日は1か所だけにします。設備か在庫がいちばん多い1か所です。残りの2か所は、別の日に同じ紙をもう1枚ずつ作れば足ります。1日で全部やろうとして、どれも途中で止まるより、1か所の8つの欄を埋め切るほうが、2手目にそのまま使えます。
私は、会社のお金の使い方を考えるとき、新しくお金をかける前に、今ある情報で自社の位置を確かめることを先に置くべきだと考えています。ハザードマップは、国と市町村がすでに公開している、今ある情報です。保険も、設備をどこに置くかも、決めるのは社長ご自身です。そのときに「いつ、どの地図に、何が書かれていたか」を書いた紙が1枚あれば、話を始める場所がはっきりします。4行とも色が無かった会社にとっても、その紙は、見た日と見た地図の記録として残ります。
保険の補償が足りているかの判断や、保険のご案内はしません。補償のことは、契約先(代理店・保険会社・共済)にお尋ねください。
私が担うのは、今日の紙と契約先の答えがそろったその先——それも材料の1つにして、会社のお金をどこから先に使うかの順番を、社長が決められるように組み立てる、その部分です。ここは有償のご支援になります。無料でお受けしているのは、次にご案内する初回面談(90分程度)までです。
4行を書いてみて、気になっている点がある方は、無料相談はこちらのお問い合わせフォームからお知らせください。初回面談(90分程度)で伺うのは、現状とお困りごとです。そのうえで、新たな投資が不要と判断すれば、その旨を誠実にお伝えします。実際に手を動かす部分をご依頼いただく場合は、有償のご支援としてお引き受けします。
※この記事の地図・一覧の内容は、2026年10月9日時点のものです。国の地図・市町村の地図は更新されます。最新は各サイトでご確認ください。国土地理院の文章は、引用ブロックの中だけにそのまま載せています。それ以外の国土地理院の内容は、「ハザードマップポータルサイト」をもとに作成した要約です。名古屋市と日本損害保険協会の文章は、そのまま載せてはいません。公表内容をもとに、この記事の言葉で書いたものです。地図の画像は載せていません。