現場から見た経営とお金の使い方

値上げのお知らせが届いたら|単価だけでなく中身・条件も前と後で写す

この記事の要点

値上げや料金改定のお知らせで変わるのは、単価だけとは限りません。お知らせ1通と改定前の請求書1枚で、1品目の中身・条件・新しく増える請求も前と後で写し、自社の注文や見積に響く所に印を付けます。相手の値上げが正しいかどうかは決めません。

値上げや料金改定のお知らせで、まず単価に目が行くのは自然なことです。いちばん大きな知らせだからです。

結論です。お知らせで変わるのは、単価の行だけとは限りません。中身(量や、保守の回数など)、条件、新しく増える請求(手数料など、これまで無かった行の請求)も、前と後で並べると、自社の注文・置き場・支払い・見積のどこに響くかを確かめられます。たとえば最低ロット(1回に頼める最小の数)が上がると、単価は同じでも、一度に頼む量が増え、置き場と先に出ていくお金が増えることがあります。

これは、相手の値上げが正しいかどうかを決める話ではありません。当社もその判定はしません。受けるか断るかも、この記事では決めません。今日は、自社の段取りの材料を、紙にそろえるところまでです。

この記事の対象

今年、仕入れ(部材・資材・食材・梱包材など)や、機械・設備の保守、ソフトの利用料などについて、値上げ・料金改定のお知らせを受け取った会社・個人事業主の方です。届き方は、紙・メール・FAX・口頭を問いません。家賃・地代のお知らせは、この記事では扱いません。

もう新しい値段で払っている方も、これから適用される方も対象です。受けたご判断を問い直す話ではありません。今日の紙は、新しい値段が初めて載る請求書との突き合わせと、もう頼んで、まだ届いていない分(発注残)の値段の確認に使えます。

今日やる1手——1品目の前と後を写す

出す紙は2枚です。

  • ① 値上げのお知らせ1通。今年届いた中で、支払いの多い相手の1通(紙・FAX、メールなら本文か添付)。口頭だけなら「聞いた日・誰から・何と言われたか」を1行。メールのリンクからログインはしないでください。マイページ(取引先のサイトで、ログインして見るページ)など、ログインが要る所にしか無いお知らせは、今日は選びません(そこでは何も押しません)。
  • ② その相手の、改定前の直近の請求書(無ければ納品書・見積書・注文書)。

品目は1つ。その相手からいちばん多く買っている(使っている)ものです。紙に次の表を書きます。

項目 前(請求書から) 後(お知らせから)
単価(税込=税を含む額どうし、税別=含まない額どうしでそろえる)
中身(量、入数=1箱などに入る数、規格=大きさや型など、保守の範囲や回数)
条件(最低ロット、受け渡しの場所など。お知らせに書いてある項目だけ)
新しく増える請求(手数料・基本料など) 無ければ「なし」

各マスは、次の3つのどれかで書きます。

  • 書いてある → そのまま写す
  • 「変更なし」と書いてある → 「変更なし」と写す
  • 何も書いていない → 「書いていない」と書く

「何も書いていない」は、「変わらない」という意味ではありません。相手が隠している、という意味でもありません。「前」が見つからなければ「不明」と書きます。

表の外に2行書きます。

  • 適用日(新しい値段になる日):「◯月◯日から」と、それが注文・出荷・納品・請求の締めのどれの日付か。書いていなければ「書いていない」。もう頼んで、まだ届いていない分があれば、横に書きます(注文を担当者に任せているなら、社内で聞きます)。
  • 返事の期限:書いてあれば写します。表を書くことを、返事を遅らせる理由にはしないでください。

最後に印を付けます。前と後で違うマスのうち、自社の「注文の数」「置き場」「支払い」「見積・価格表」のどれかに響くものに印。0個でも構いません。

ここまで書けたら済んでいます

  • 品目名・前・後・適用日の4つが書けている(空欄や「書いていない」があっても成立。印は0個でもよい)。
  • 「何も書いていない」のマスに、「変わらない」と書いていない。

今年1通も届いていない方は、いちばん支払いの多い相手の直近の請求書から、1品目の「前」の列だけ先に作れば済んでいます。単価のほかは「変更なし」と写した方は、それを確かめたことが今日の結果です(判断は単価だけで足りる、という根拠が紙に残ります)。お知らせが手元に無ければ、事務の担当の方に頼み(ログインが要る所からは探さないよう添えて)、頼んだ日を書けば済みます。

新しい値段が初めて載る請求書が届いたら、「後」の列と突き合わせます。合わない行があれば、それが確かめる1行です。相手の誤りとは決めないでください。適用日の数え方によっては、前の値段の分が混ざることもありえます。

相手に聞くかどうか

今日の1手は、書くところまでです。「書いていない」のマスのうち、次の請求書で分かるものは、待てば足ります。聞くかどうかは任意で、今日でなくて構いません(返事の期限は、これとは別の話です)。次の注文や見積の前に知りたいものだけ、聞くなら「何が・いつから変わるか」の形にします。たとえば「◯◯について、単価のほかに変わるものがあれば、何がいつから変わるか教えていただけますか」。値上げの理由や、原価の内訳は聞きません。

物価を測る側も、値段を中身や条件とセットで見ている

値段を中身や条件と並べて見るのは、相手を疑う見方ではありません。物価を測る側も、そうしています。

日本銀行は、企業どうしで取引される物の値段の動きを表す「企業物価指数」と、企業どうしで取引されるサービスの値段の動きを表す「企業向けサービス価格指数」を作っています。物価指数とは、値段を続けて調べ、その動きを数字にしたものです。その作り方の説明(末尾の出典の2ページ)を、私の言葉で要約すると、次のとおりです(原文の引用ではありません)。

  • 値段だけを聞いているのではありません。値段を調べるときに、商品やサービスの中身、取引先、取引の条件、物の場合は取引の数量なども、あわせて聞き取っています。
  • それらを原則として変えないまま、実際に取引された値段を調べています。物の場合は、中身や条件をできる限り変えないで値段を調べる、という書き方です。ただし、変えないまま調べ続けるのが難しい場合は、変えない条件を一部ゆるめたり、別の調べ方を使ったりすることも書かれています。
  • 調べる商品やサービス、取引先や条件を切り替えるときは、新旧の中身や条件の違いによる値段の差を取り除き、値段そのものの動きだけを数字に反映させるよう努めている、と書かれています(サービスでは原則としてそうしている、という書き方です)。差をつかむのが難しい場合は、やむを得ず、切り替えの前後で数字が動かないようにつなぐことも書かれています。

ここから借りるのは、値段は中身・条件・数量とセットで見る、という見方だけです。この記事では、お知らせの値上げ幅を、中身や条件の違いの分だけ割り引いて計算し直すことはしません。表に書くのは、お知らせと請求書に書いてあるとおりの値段です。

手が止まりやすいお知らせの形と、その書き方

  • 率だけ(「◯%改定」「◯〜◯%」)のお知らせ:「後」の欄には、率や幅を書いてあるとおりに写します。自分で計算した値段を書くなら、横に「計算」と添えます(端数の扱いで、届く請求書と少しずれることがあります)。
  • 「詳細は担当者から」とだけあるお知らせ:「後」は「書いていない」で成立です。
  • 前の請求書が「一式」や月額だけ:その額を「前」に書きます。
  • 請求書に、入数や最低ロットなど「中身」「条件」の前が書いていない:「前」は「書いていない」と書けば成立です。覚えている値を書くなら、横に「記憶」と添えます。
  • 単価に、税込か税別かが書いていない:単価の横に「税は書いていない」と添えます。
  • 改定前の請求書が、取引先のサイト(ログインして見るページ)にしか無い:今日はそこへは行きません。改定前の納品書・見積書・注文書が紙かメールの添付であればそれで、無ければ「前」は「不明」で成立です。
  • 品目がたくさん並んでいる:今日は1品目だけ。ほかの品目は、同じ紙の下に後から足せます。
  • 手数料などが、別のお知らせで来ている:今日は1通で構いません。ほかのお知らせまで探しに行かなくて大丈夫です。
  • ソフトの利用料で、プランの名前ごと変わる:プラン名は「前の名前→後の名前」をそのまま写します。前の値段は、その相手の改定前の請求書(紙か、メールの添付で届いたもの)か、カードの利用明細(改定前のもの。紙で届くもの、またはふだん確かめている方法で。明細を確かめる以外の操作はしません)から写します。請求書がソフトの管理画面(ログインして見るページ)にしか無ければ、今日はそこへは行かず、改定前のカードの利用明細から写します。どちらも無ければ、「前」は「不明」で成立です。メールのリンクからは開かないでください。
  • 口頭で聞いただけ:「聞いた日・誰から・何と言われたか」を1行。ほかのマスは「書いていない」で成立です。
  • メールの添付が、スマートフォンでは小さくて写しにくい:パソコンで開くか、印刷して写します。送り主に心当たりのないメールは、今日は選ばないでください(リンクも添付も開きません)。
  • 選べるお知らせが、マイページなどログインが要る所にしか無い:その1通は今日は選びません(そこでは何も押しません)。ほかに選べる1通が無ければ、今年1通も届いていない方と同じく、「前」の列だけ作れば済んでいます。「前」を写す相手がそのお知らせの相手で、値上げがもう始まっているなら、「前」は改定前の直近の請求書から写します。分からなければ、写した請求書の日付を「前」の横に書いておきます(あとで、お知らせの適用日と見比べられます)。
  • お知らせが社長の手元に無い(事務の担当の方が受け取って綴じている):次の文で頼み、頼んだ日を紙に書けば、今日の1手は済んでいます。「今年届いた値上げのお知らせのうち、支払いの多い相手の1通と、その相手の改定前の直近の請求書を出してください。紙か、メールの本文・添付にあるもので構いません。送り主に心当たりのないメールは選ばないでください。メールのリンクからはログインせず、取引先のマイページなど、ログインが要る所からは探さないでください」。
  • 聞いたら「マイページでご確認ください」と返ってきた:今日はそこへは行きません(何も押しません)。聞き直すなら「お手数ですが、何がいつから変わるかを、メールか紙でいただけますか」。聞き直さなければ、そのマスは「書いていない」のままで構いません。

単価のほかに変わりうる4つと、それぞれが響く所

東海(愛知・岐阜・三重)で部材を仕入れて加工している会社なら、最低ロットと適用日。飲食のお店なら、食材の入数や規格。業種を問わず、機械・設備の保守の回数や、ソフトのプランの中身。どれも、単価の欄の外で起きうる変化です(業種ごとの当てはめは、私の見立てです)。4つを順に、自社のどこに響くかと合わせて並べます。

中身(量・入数・規格・保守の範囲や回数)

単価が同じでも、1箱の入数が減れば、1個あたりの値段は上がります。保守なら、点検の回数や、来てもらえる時間の範囲が変わることがあります。飲食のお店なら、食材の入数や規格(1袋の重さ・大きさなど)です。響くのは、自社の見積・価格表(その品目を使っている自社の商品の値段)と、注文の数です。

条件(最低ロット・受け渡しの場所など)

最低ロットが上がって、これまでより大きい単位で頼むことになると、単価は同じでも、一度に置いておく量が増え、一度に払う額も大きくなります。私は独立する前の15年間、製造・生産管理・営業の現場で働いてきました。最低ロットを、単価だけでなく置き場とお金とセットで考えるのは、生産管理や購買の一般的な考え方です。受け渡しの場所が変われば、引き取りに行く手間や、社内で運ぶ段取りが変わることがあります。響くのは、注文の数・置き場・支払いです。

新しく増える請求(手数料・基本料など)

これまで無かった行で請求されるものです。単価は同じでも、請求書の合計は変わります。響くのは支払いと、その分を自社の見積に含めるかどうかです。

適用日(新しい値段になる日)

「◯月◯日から」とだけあっても、それが注文した日なのか、出荷・納品の日なのか、請求の締めの日なのかで、もう頼んで、まだ届いていない分の値段が変わることがあります。これから適用されるお知らせなら、次の注文の時期を考える材料になります。響くのは支払いと注文の時期です。

書いた紙の使い道

判断ではなく、実務の使い道を3つ挙げます。どれも、するかどうかは御社が決めることです。

  1. 新しい値段が初めて載る請求書と、「後」の列を突き合わせる。いつ届くかは、締め日によって違います。合わない行があれば、それが確かめる1行です(相手の誤りとは決めない)。
  2. 自社の見積・価格表に、その品目が入っている行があるかを確かめる。
  3. 最低ロットや適用日が変わったなら、次の注文の数と時期を考える材料にする。前倒しでまとめて頼めば、その分、置き場と手元のお金を先に使います。これも生産管理や購買では一般的な考え方で、前倒しを勧めるものでも、止めるものでもありません。

受けるかどうかは、御社が決めること

この記事が、受けるか断るかに踏み込まないのは、答えが会社ごとに違うからです。相手との関係、ほかの仕入先、自社の売値——どれによっても答えが変わり、決めるのは御社です。

今日の紙は、その判断の材料になります。次の注文の数と時期、置き場、自社の見積への反映。どれも、相手に何かを頼まなくても、自社だけで決められることです。

9月18日の記事「値上げの根拠は、自社の原価表でなくていい|国が示す公表資料」は、値上げをお願いする側の話でした。その中で、買う側の立場の方への持ち帰りとして、「自社は、取引先に原価の内訳を出させていないか」を確かめることを書いています。今日、原価の内訳を聞かないのは、それと同じ向きです。

今日のまとめ

  • 値上げのお知らせで変わるのは、単価の行だけとは限りません。中身・条件・新しく増える請求も、前と後で並べると、自社の注文・置き場・支払い・見積のどこに響くかを確かめられます。
  • 相手の値上げが正しいかどうかを決める話ではありません。受けるか断るかも、この記事では決めません。
  • 今日やることは1つ。お知らせ1通と、その相手の改定前の直近の請求書1枚で、1品目の単価・中身・条件・新しく増える請求を、前と後で写す。表の外に適用日と、返事の期限(書いてあれば)。響くマスに印(0個でもよい)。
  • 「何も書いていない」は「変わらない」ではありません。「隠している」でもありません。「書いていない」と書きます。
  • 単価は、税込どうし・税別どうしでそろえて比べます。
  • メールのリンクからログインはしません。ログインが要る所にしか無いお知らせは、今日は選びません。請求書も、ログインが要る所にしか無ければ、今日はそこへは行きません。
  • 返事の期限が書いてあれば写します。表を書くことを、返事を遅らせる理由にはしません。
  • 聞くかどうかは任意です。聞くなら「何が・いつから変わるか」だけ。理由や原価の内訳は聞きません。
  • 新しい値段が初めて載る請求書と合わない行があっても、相手の誤りとは決めません。
  • 日本銀行も、企業物価指数・企業向けサービス価格指数を作るときは、値段だけでなく中身や条件もあわせて聞き取り、原則として(物の場合はできる限り)それらを変えないまま値段を調べています(続けるのが難しい場合は、変えない条件を一部ゆるめたり、別の調べ方を使ったりもします)。借りるのはその見方だけで、値上げ幅を計算し直すことはしません。

ご相談について

ここまでは、御社の中だけでできることです。

当社は、値上げが妥当かどうかを判定したり、取引先との価格交渉に立ち会ったり、交渉を代わりに行ったりはしません。契約・法律・税の判断もしません。

私が有償のご支援としてお引き受けするのは、値上げを受けたあとに、自社の見積・価格表・販促(売るための宣伝や仕掛け)のどこから組み直すかを決め、形にする部分です。ここは有償のご支援になります。無料でお受けしているのは、次にご案内する初回面談(90分程度)までです。

紙に写してみて、気になっている点がある方は、無料相談はこちらのお問い合わせフォームからお知らせください。初回面談(90分程度)で伺うのは、現状とお困りごとです。そのうえで、新たな投資が不要と判断すれば、その旨を誠実にお伝えします。実際に手を動かす部分をご依頼いただく場合は、有償のご支援としてお引き受けします。

※本記事で紹介した日本銀行の資料の内容は、2026年10月12日に確認したものです。最新は日本銀行のホームページでご確認ください。

出典

※本文の日本銀行の資料についての記述は、上の2ページの内容をマークレストが要約したものです(原文の引用ではありません。図表は載せていません)。

記事にない「御社だけの課題」は、直接。
無料相談を予約する