現場から見た経営とお金の使い方

相見積もりの正しい取り方|「一番安い」に飛びつくと損をする理由

この記事の要点

複数の会社から見積もりを取る「相見積もり」。でも一番安い会社を選んで、後から追加費用や品質でかえって高くついた——そんな失敗は珍しくありません。営業や生産管理の現場を15年見てきた外部CMOが、金額の裏を読む見積書の見方と、発注前の5つの問いをやさしく解説します。

「念のため、何社かに見積もりを取ってみよう」——ホームページの制作でも、機械の入れ替えでも、広告の運用でも、複数の会社から見積もりを取る「相見積もり(あいみつもり)」は、まっとうな進め方です。私も、社長のみなさんに「必ず取ってください」とお願いしています。

ただ、ひとつだけ落とし穴があります。取った見積もりの「金額の数字」だけを横に並べて、一番安いところに決めてしまう——これをやると、あとで追加費用が積み上がったり、品質が足りずにやり直しになったりして、かえって高くつくことが少なくありません。

私は独立前、製造業をはじめ複数の現場で、営業や生産管理に15年携わってきました。見積もりを「出す側」も「もらう側」も、両方の内側を知っています。その経験から言えるのは、見積書は「金額」ではなく「中身」を読むものだ、ということです。この記事では、一番安いに飛びついて損をしないための、見積書の見方と、発注前に外さない5つの問いを、できるだけやさしく解説します。

そもそも相見積もりは、何のために取るのか

まず、目的を勘違いしないことが大事です。相見積もりは「値切るため」ではありません。「その金額が、自分の会社にとって適正かどうかを見極めるため」に取ります。

1社だけの見積もりだと、その金額が高いのか安いのか、そもそも判断できません。2〜3社を比べて初めて、「この作業はだいたいこのくらいの相場なんだな」「A社だけ極端に安いのは、何か理由があるはずだ」と、金額の”意味”が見えてくるのです。相見積もりの本当の価値は、値段を下げることではなく、自分が何にお金を払おうとしているのかを、正しく理解できることにあります。

一番安い見積もりに飛びつくと、なぜ損をするのか

ここで、はっきりさせておきたいことがあります。「安い会社=手を抜く悪い会社」ではありません。安いのには、たいてい理由があります。そしてその理由の多くは、悪意ではなく「前提が違う」ことです。

たとえばホームページ制作で、A社が80万円、B社が40万円だったとします。数字だけ見ればB社が半額です。でも中身を開くと、こういうことがよくあります。

  • A社は「文章の作成・写真撮影・スマホ対応・公開後3か月のサポート」まで含んでいる
  • B社は「デザインとページ作成のみ」で、文章と写真はお客様(あなた)が用意する前提。撮影を頼めば追加、公開後の修正も1回いくら

これは、B社が悪いのではありません。そもそも売っているものの範囲が違うだけです。ところが、その違いに気づかないまま「B社が安い」と決めてしまうと、いざ始まってから「文章はそちらで用意してください」「その修正は別料金です」と言われ、気づけば追加でどんどん膨らんでいく。最初の40万円が、フタを開ければ70万〜80万円に膨らむ、といったことも起こり得ます。これが、相見積もりでつまずきやすい典型的なパターンです。

「一式」という言葉には、特に注意する

見積書に「◯◯一式(いっしき)」と書かれていたら、少し立ち止まってください。「一式」は、その中に何が入っていて何が入っていないかを、書き手が言い切っていない言葉です。生産管理の現場でも、この「一式」の解釈違いが、あとの追加やトラブルの火種になります。「この一式には、具体的に何と何が含まれますか?」と一言聞くだけで、後々の”言った・言わない”の大半は防げます。

見積書の「金額の裏」を読む、5つの問い

では、実際に見積もりが手元に届いたら、何を確認すればいいのか。私がいつも社長のみなさんにお渡ししている、発注前の5つの問いです。金額を比べる前に、この5つを各社に同じように投げてみてください。

  • ①【範囲】何が含まれ、何が含まれないか。 「これは料金に入っていますか?」を、思いつく作業ごとに確認する。含まれないものこそ、後の追加になる。
  • ②【内訳】数量・単価・一式の中身が分かるか。 総額だけの見積書は比べられない。「何を・いくつ・いくらで」が分かれば、どこで差がついているかが見える。
  • ③【追加条件】追加費用が出るのは、どういうときか。 「修正は何回まで無料か」「見積もり後に増える可能性がある費用は何か」を、先に文字で出してもらう。
  • ④【納期】いつ終わるか、遅れたらどうなるか。 安くても半年待ち、では意味がないこともある。納期と、遅れた場合の扱いを確認する。
  • ⑤【責任者】誰が担当で、困ったときの窓口は誰か。 発注後にやり取りする相手が誰なのかが見えている会社は、たいていトラブル対応も丁寧です。

この5つは、専門知識がいりません。相手の業界に詳しくなくても、「入っていますか」「増えるとしたら何ですか」「いつ終わりますか」「誰が担当ですか」と、素朴に聞けばいいだけです。そして、これらの質問に面倒がらず、はっきり文字で答えてくれる会社かどうか——それ自体が、金額と同じくらい大事な判断材料になります。

比べる前に、「条件をそろえて」から見積もりを取る

もう一歩だけ、上手なやり方をお伝えします。各社にバラバラの伝え方で「見積もりください」と頼むと、返ってくる見積もりもバラバラの前提になり、そもそも横に並べて比べられません。A社は撮影込み、B社は撮影なし、C社はサポート付き——これでは、金額の差が「値段の差」なのか「範囲の差」なのか、区別がつかないのです。

そこで、見積もりを頼む前に、「やってほしいこと」を紙1枚にまとめて、全社に同じものを渡す。これだけで、比較の精度が大きく上がります。難しく考えなくて大丈夫です。次の3つが書いてあれば十分です。

  • 目的:何のためにやるのか(例:問い合わせを月◯件増やしたい/古い機械の故障を減らしたい)
  • やってほしいこと:思いつく範囲でいいので箇条書きに(例:ページ数、撮影の有無、公開後のサポート)
  • 譲れない条件:予算の上限、いつまでに、といった外せない線

同じ紙を渡せば、各社は同じ土俵で見積もりを作ります。すると、金額の差が「本当の実力・範囲の差」として、くっきり見えてくるのです。

東海の中小企業で、よくある場面に当てはめると

愛知・岐阜・三重で、私が実際に相談を受ける場面に当てはめてみます。

  • ホームページ制作:「文章と写真は誰が用意するのか」で金額は大きく変わる。安い見積もりは、たいていここがお客様任せになっている。①範囲を必ず確認。
  • 設備・機械の入れ替え:本体価格だけでなく、設置・調整・古い機械の撤去・その後の保守まで含むか。生産管理の現場では、この「本体以外」で総額が数割変わることは珍しくありません。②内訳と③追加条件が要。
  • 広告運用の代行:「運用してもらう手数料」と「広告そのものに使うお金(実費)」は別物。ここが分かれて書かれていない見積もりは、後で金額の感覚が狂いやすい。②内訳を必ず分けてもらう。

どの場面にも共通するのは、「本体の値段」より「本体以外に、あとから足されるもの」を先に見る——この一点です。

それでも迷ったら、「金額」より「順番」を疑う

ここまで見積もりの読み方をお話ししてきましたが、最後にもう一段、根っこの話をさせてください。見積もりで迷うとき、本当の原因は「どの会社が安いか」ではなく、「そもそも、これに今お金を使うべきなのか」がはっきりしていないことだったりします。目的があいまいなまま見積もりを取ると、金額でしか比べられなくなり、一番安いに流れてしまうのです。

私がいつも社長のみなさんにお伝えしているのは、「課題が先、道具は後」という順番です。何に困っていて、それを解けばいくら得するのか——そこがはっきりすれば、「40万円は高いのか安いのか」の答えは、自然と出ます。この考え方は、投資の前に「ボトルネック」を見つける現場術はこちらの記事で詳しく書きました。あわせて読んでいただけると、見積もりの読み方がもう一段深くなるはずです。

私が相見積もりで「一番安いを選びましょう」と安易に言わないのは、マークレストが掲げる「損得より善悪」という考え方はこちらでお読みいただけるとおり、目先の金額ではなく、その会社にとって本当に良い一手を選んでほしいからです。安さで飛びついて無駄が出るくらいなら、少し高くても後悔しない発注のほうが、結局は安い。私はそう考えています。

「この見積もり、どう読めばいいか分からない」「そもそも何にお金を使えばいいか整理したい」——そんなときは、外部CMO(社外のマーケティング責任者)として、発注の前の”交通整理”からお手伝いします。特定の会社に発注させるためではなく、あなたの会社が無駄なお金を使わないための壁打ち相手として、まずは気軽に使ってください。無料相談はこちらのお問い合わせフォームからお寄せいただけます。

相見積もりは、正しく使えば、あなたの会社を守る強力な道具です。金額の数字ではなく、その裏にある「中身」を読む。今日の5つの問いを、次の見積もりで一度試してみてください。

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