現場から見た経営とお金の使い方

うちはデジタルに年いくら払うのが普通か|中央値130万円の読み方

この記事の要点

日本政策金融公庫(中小企業事業)取引先の調査で、2024年度にデジタル化へ投じた金額は平均586.5万円・中央値130万円。ただし「払うべき額」ではありません。平均と中央値で結論が反転する理由と、自社の位置を測る手順をまとめました。

「うちは、デジタルに年いくら払うのが普通なんでしょうか」——経営者の方が知りたいのに、いちばん誰も教えてくれない数字だと思います。

見積書は目の前にある。金額も書いてある。けれどその金額が高いのか安いのか、判断する物差しが手元に無い。だから最後は「まあ、こんなものか」で押印することになります。金額より、物差しが無いことのほうが、経営にはつらいはずです。

数字を出す前に、いちばん大事なことを先に言います

この記事では、公的な調査で分かっている金額をそのままお見せします。ただし、その金額は「払うべき額」ではありません。

根拠ははっきりしています。この調査は「いくら払ったら成果が出たか」を一度も示していません。金額を尋ねた集計と、成果を尋ねた集計は、同じ資料の中に別々に載っているだけで、両者を突き合わせた表はどこにもありません。私は資料を最後まで確認しましたが、ありませんでした。

ですから、「◯◯万円払えば成果が出る」「うちは少ないから増やすべきだ」という読み方は、この調査からはできません。これは目標ではなく、物差しです。自分がいまどのあたりに立っているかを知るための、それだけのものです。そのつもりで、この先を読んでください。

先に結論だけ言います

①結論:中小企業が2024年度にデジタル化へ投じた金額は、平均586.5万円、中央値(ちゅうおうち)130万円でした。日本政策金融公庫 総合研究所が2025年5月21日に公表した調査結果です。

この2つの数字は、同じ設問の、同じ回答から出ています。それなのに——

  • 平均586.5万円を物差しにすると、多くの会社は「うちは全然足りない」と感じます
  • 中央値130万円を物差しにすると、まったく同じ会社が「うちは足りている」と感じます

見る数字を変えるだけで、結論がひっくり返るのです。そして、「真ん中の会社の実感」に近いのは中央値のほうです。理由はすぐ下で説明します。

②今日やる1手:A4の紙を1枚出して、自社が昨年度デジタルに払った金額を、全部書き出してください。目安30分。会計ソフトで期間と科目を絞り込めるなら5分で終わります。書き出すのは次の5つです。

  • (1)ツールの月額 × 12か月——会計・給与・勤怠・受発注・在庫・チャット・Web会議・電子契約など、毎月引き落とされているもの
  • (2)サーバー代・ドメイン代・通信回線・セキュリティソフト——年に1回まとめて払うものは見落としやすい場所です
  • (3)保守費・サポート費——ホームページの保守、システムの年間保守、サポート契約
  • (4)社外へ払った制作費・改修費・研修費・採用費——ホームページ、求人ページ、動画、広告の運用料、パソコン等の機器代、使い方の講習費
  • (5)社内の誰かが、それに使った時間 × 自社の実額単価

この5つ目を数えないと、自社の支出は実際より小さく見えます。ただし(5)は、調査の数字と比べる側には入れません(理由は後半)。数え方は後半に書きました。

③この記事の対象:デジタルの費用について見積書を承認する立場にある方——つまり社長ご本人か、決裁権をお持ちの方です。従業員49人以下の会社向けに、その区分だけの中央値と分布も用意しました。会計ソフトを使っていない会社、通帳とクレジットカードの明細しかない会社も対象です。その場合は1時間見てください。

逆に、対象でない方:「うちはいくら払うのが正解か」の答えをここで受け取りたい方です。その答えはこの記事にはありませんし、私も持っていません。金額の正解は、業種・成長段階・いま詰まっている課題によって当然に変わるからです。この記事が渡せるのは、自分の位置を測る物差しだけです。


平均値と中央値——同じ回答から、逆の結論が出るしくみ

ここを説明せずに2つの数字を並べるのは不誠実だと思うので、先に片付けます。

  • 平均値=全部足して、社数で割った数字
  • 中央値=金額の小さい順に全社を一列に並べたとき、ちょうど真ん中に立っている会社の金額

商店街に10社あるとします。9社が年10万円、1社だけが年5,000万円払っていたとしましょう。

  • 平均値=509万円(10万円×9社+5,000万円=5,090万円 ÷ 10社)
  • 中央値=10万円(小さい順に並べて真ん中に立っている会社)

この商店街に「509万円払っている会社」は1社もありません。平均値は、飛び抜けて大きい1社に強く引っ張られるからです。一方の中央値は引っ張られません。だから「ふつうの会社がどのあたりにいるか」を知りたいときは、中央値を見ます。

今回の調査でも同じことが起きています。平均586.5万円に対して中央値130万円。差が4.5倍もあるということは、上のほうに金額の大きい会社が少数いて、平均を持ち上げているということです。

実際、分布を見るとそうなっています。回答した会社の36.6%は、年100万円未満です。いちばん多いのは「100万円以上1,000万円未満」の48.7%。「1億円以上」は0.7%です。この少数が、平均値を押し上げる側にまわります。

だから、こういうことが起きます

年120万円払っている、従業員30人の会社があるとします。同じ会社、同じ年、同じ調査で——

何と比べるか 出てくる結論
平均586.5万円
全体の平均
「5分の1ほどしかない。うちは大幅に遅れている
中央値130万円
全体の真ん中
「わずかに下。ほぼ真ん中だ
49人以下の中央値100万円
規模を合わせた真ん中
むしろ真ん中より上

3つとも同じ調査の、同じ設問から出た数字です。それでも結論は3通りに割れます。数字が経営者を惑わせるのは、数字が嘘をつくからではなく、どの数字を見せられるかで結論が変わるからです。

だから、「業界平均は◯◯万円です」と説明を受けたときに、確かめていただきたいことが2つあります。「それは平均値ですか、中央値ですか」「誰に聞いた数字ですか」——この2つが分かれば、その先の話は安心して進められます。その場ですぐ答えが出なくても、何もおかしくありません。調べて返していただければ済む話です。


この数字は「誰に聞いた」ものか(ここを飛ばすと読み違えのもとになります)

数字を使う前に、出どころを確認します。これは相手を疑うためではなく、自分が読み違えないためです。

項目 内容
調べた人 日本政策金融公庫 総合研究所
聞いた相手 同公庫(中小企業事業)の取引先 13,479社
※「中小企業事業」は公庫の窓口のひとつ。小規模事業者向けの「国民生活事業」とは別
答えた会社 4,328社(回答率32.1%)
いつ聞いたか 2025年3月中旬。尋ねたのは2024年度に投じた金額
金額を答えた社数 2,618社

ここから、押さえておくべき限定が3つ出てきます。

限定1:日本の中小企業全体の代表値ではありません

聞いた相手は公庫(中小企業事業)の取引先です。つまり公庫と融資の取引がある会社に寄っています。公庫でも小規模事業者向けの窓口(国民生活事業)だけを利用している事業者は、この4,328社には含まれていません。無借金で回している会社も、ここにはほとんど入っていないと考えられます(これは資料に書かれた事実ではなく、私の見立てです)。

「日本の中小企業の平均」と書かれていたら、それは正確ではありません。「公庫の中小企業事業と取引のある会社に聞いたら、こうだった」——これが正しい読み方です。数人でやっている会社が、この数字より下に位置することは、何もおかしくありません。(この最後の一文は、資料に書かれた事実ではなく私の見立てです)

限定2:「まったく取り組んでいない」会社は、この金額に入っていません

これは資料の注記を読まないと気づけない、大事な点です。金額を尋ねた設問は、「デジタル化にまったく取り組んでいない」と答えた会社を除いて集計されています。

49人以下の会社では、13.8%が「まったく取り組んでいない」と答えています。この13.8%は、金額の集計から外れています。

ですから、49人以下の中央値100万円は、「何らかの形でデジタル化に取り組んでいる49人以下の会社」の真ん中であって、49人以下の会社全部の真ん中ではありません。会社全部で並べ直せば、真ん中はもっと下がります。「うちは100万円も払っていない」と感じた方は、この一段を思い出してください。

限定3:2024年度の実績です。いまの相場ではありません

聞いたのは2025年3月中旬、対象は2024年度に払った金額です。この記事を書いている2026年8月から見ると、1年以上前の実績です。ツールの値上げ、為替、新しい道具の登場は反映されていません。「いまの相場表」として使わないでください。使えるのは「自分の位置をおおまかに知る」ところまでです。


金額の定義——ツール代だけ数えると、比べているものが違ってきます

この調査が「デジタル化に投じた金額」として何を数えているか。資料の注記に、そのまま書かれています。

デジタルツールの導入費用、システムの保守・運用費用、専門人材の獲得費用、従業員の教育費用などを含む

デジタルツールとは、会計ソフト・勤怠管理・受発注・Web会議など、仕事に使うコンピューターの道具のことです。)

ここに「専門人材の獲得費用」「従業員の教育費用」が入っていることに注目してください。つまり——

  • 詳しい人を採用したときの採用費
  • 社員に使い方を覚えてもらうための研修費・講習費

これらも金額に含まれています。ですから、毎月のツール代だけを足して「うちは平均以下だ」と結論づけると、比べているものが違います。相手は人の費用まで含めた数字、こちらはツール代だけ。これでは物差しになりません。

ここは正直に線を引きます

いま引用した定義は「などを含む」で終わっています。「社内の人が、それに使った時間の金額(社内工数)」を含むとは、資料には明記されていません。ですから私は、調査の数字と比べるときには社内工数を含めないほうが正確だと考えています。

とはいえ、社内工数を数えないと自社の本当の支出は見えません。そこで、A4の紙を2列に分けてください。

何を書くか 使い道
A列
社外に出ていったお金
前半に挙げた(1)〜(4)。ツール代・サーバー代・保守費・制作費・機器代・研修費・採用費 調査の数字と比べるのは、この列だけ
B列
社内で使った時間の金額
(5)社内工数。導入・移行の作業、毎月の運用、業者との打ち合わせ 比較には使わない。自社の意思決定のために持つ

比較にはA列。判断にはA+B。この2段構えにしておけば、外の数字と比べるときに正確さを失わず、自社の中では本当の重さが見えます。

社内工数の数え方(そのまま使える手順)

工数とは、その作業に何時間かかったかのことです。金額に直す手順は3つだけです。

  1. 自社の1時間あたりの実額単価を出す。年間の人件費総額 ÷ 年間の総労働時間。
    例)人件費3,000万円 ÷(10人 × 年2,000時間=20,000時間)= 1時間あたり1,500円
  2. デジタルに使った社内の時間を拾う。思い出せる範囲で構いません。
    例)導入・移行でまとめて40時間ぐらい + 毎月の入力・締め・トラブル対応が月4時間×12=48時間 + 業者との打ち合わせが月1時間×12=12時間 → 合計100時間
  3. 掛ける。100時間 × 1,500円 = 15万円

精度は要りません。桁が合っていれば十分です。大事なのは、翌年も同じ数え方をすることです。数え方さえ揃っていれば、去年と今年を比べられます。物差しは、絶対値より一貫性のほうが効きます。

なぜ、ここにこだわるのか

私は独立する前、製造業の生産管理に長く携わってきました。その世界には原価計算——製品1つを作るのにいくらかかったかを積み上げる計算——があります。ここで昔から言われている基本が、材料費だけを積んで、加工にかかった時間を積まなければ、原価は実際より小さく出るということです。安く見えている原価をもとに値決めをすれば、売れば売るほど苦しくなります。

まったく同じ構造が、デジタルの支出でも起きます。請求書に載っている金額(=材料費)だけを数えて、社内の誰かがそれに費やした時間(=加工の時間)を数えない。結果、「うちは安く済んでいる」と見えてしまう。見えていない支出は、削ることも、活かすこともできません。

支出の点検そのものについては、製造現場の「7つのムダ」で、マーケティングの支出を点検する にも書きました。あわせてどうぞ。


自分の位置を当てはめる(3つの表)

ここからが物差しです。A列(社外に出ていったお金)の合計を持って、当てはめてください。

表1:従業員規模・業種別(2024年度/単位:万円)

区分 平均値 中央値
全体(n=2,618) 586.5 130
49人以下(n=1,548) 348.2 100
50〜99人(n=588) 625.4 200
100人以上(n=482) 1,304.3 500
製造業(n=1,070) 683.5 160
非製造業(n=1,548) 519.5 116.5

※「n」は、その区分で回答した会社の数です。/出典の公表資料に基づき、私が表として整理し直したものです(図表そのものは転載していません)。

製造業の中央値160万円に対して、非製造業は116.5万円。愛知・岐阜・三重のように製造業の厚い地域では、まわりの会社の水準がやや上に見えることがあります。ただしこれは「製造業だから多く払うべき」という話ではありません。設備と結びついたシステムを持つかどうかで金額の性質が変わる、というだけのことです。

表2:金額の分布(2024年度)

投じた金額 全体 49人以下
100万円未満 36.6% 43.9%
100万円以上1,000万円未満 48.7% 48.2%
1,000万円以上1億円未満 13.9% 7.6%
1億円以上 0.7% 0.3%

※構成比は小数第2位を四捨五入して表示されているため、合計が100%にならない場合があります(出典資料の注記による)。

49人以下の43.9%、つまり4割超が年100万円未満です。「まわりはもっと払っているらしい」という漠然とした不安を持っている方は、この一行を見てください。そして繰り返しますが、この表に「まったく取り組んでいない」会社は入っていません。その会社まで含めれば、100万円未満の割合はさらに上がります。

表3:49人以下 × いまの取り組み方針別(単位:万円)

ここがいちばん実用的な表だと思います。同じ「49人以下」でも、いまデジタル化にどういう姿勢で向き合っているかで、金額はきれいに分かれます。

いまの取り組み方針 平均値 中央値
かなり積極的に取り組んでいる 745.3 300
積極的に取り組んでいる 527.6 200
どちらでもない 186.1 50
あまり取り組んでいない 117.5 10

※出典資料に示されている回答社数は、取り組み方針ごとの全規模合計(かなり積極的128社/積極的1,257社/どちらでもない852社/あまり取り組んでいない381社)です。規模と方針を掛け合わせた1マスごとの社数は資料に示されていません。とくに「かなり積極的に取り組んでいる」は全規模を合わせても128社と少ないため、この行の数字は幅を持って読んでください。

中央値300万円と10万円。30倍の開きがあります。そして念のためもう一度書きますが、この表は「300万円払えば積極的になれる」という意味ではありません。因果は示されていません。読める順序は逆で、「積極的に取り組んでいる会社は、結果として金額も大きい」という関係が見えているだけです。

使い方はこうです。自社の方針(左の列)を先に選び、その行の金額と自社のA列合計を比べてください。「うちはどちらでもない、でも金額は300万円」なら、方針と支出がずれています。そのずれこそが、点検すべき場所です。


差が出たとき、金額の上げ下げを先に考えない

ここからは調査の話ではなく、私の判断軸です。

物差しに当てはめて、上でも下でも差が出たとします。そのとき「増やそう」「減らそう」と考えるのは、順番が違います。先に見るのは「何に使ったか」です。同じ100万円でも、中身がまったく違うからです。

書き出したA列の1行1行を、次の3つの箱に仕分けてください。

中身 見るところ
①土台
止まると仕事が止まる
会計・給与・勤怠・受発注・在庫・メール・サーバー・回線・セキュリティ 安さで選ばない。止まったときの損害と比べる
②攻め
売上・採用に効かせにいく
ホームページ、求人ページ、広告、動画、SNS(インスタグラム等の交流サイト)、メール配信 数字を見ているか。見ていないなら、増やす前に見る
③見直し候補
当時は必要だった
契約したときの目的が、いまは別の道具で満たされているもの/使う人が変わって出番が減ったもの 「当時は正しかった」を前提に、いまも要るかだけを確認する

この仕分けで、たいてい次のどれかが見えます。

  • ①ばかりで②がほぼゼロ——金額を増やす前に、「何を攻めるのか」を先に決めるのが順番です。攻める先が決まっていないところにお金を足しても、①が増えるだけになりがちです。
  • ②に払っているのに、数字を一度も見ていない——増やすのも減らすのも、まだ判断できません。先に見るのが順番です。
  • ③が出てきた——これは収穫です。ここで大事なのは、過去の判断を責めないことです。契約したときは必要だったから契約したのであって、そのあと会社も道具も変わっただけです。過去に投じた金額は、失敗ではありません。いまの物差しが1枚できたという、次の一手の土台です。

金額の多寡そのものに、良いも悪いもありません。業種が違えば必要な道具が違い、成長段階が違えば急ぐ場所が違います。私は「払いすぎです」とも「足りません」とも申し上げません。見るべきは配分であって、合計額ではないからです。

そもそも「何から手を付けるか」の順番の決め方——つまり経営のボトルネック(いま詰まっている一番の課題)の見つけ方そのものは、中小企業のお金の使い方|投資の前に「ボトルネック」を見つける現場術 に書きました。お金を動かす前に読む順番としては、こちらが先です。


この数字で、やってはいけない読み方(6つ)

大事なので、最後にまとめて置いておきます。社内で共有するときは、数字よりこちらを先に渡してください。

  1. 「130万円払えば成果が出る」と読まない。この調査は、投じた金額と成果を突き合わせた集計を一切示していません。金額の集計と成果の集計は、別々に載っているだけです。
  2. 「日本の中小企業全体の数字」と読まない。聞いた相手は公庫(中小企業事業)の取引先13,479社です。融資の取引がある会社に寄っています。
  3. 「49人以下の会社”全部”の真ん中」と読まない。この集計からは「デジタル化にまったく取り組んでいない」会社(49人以下で13.8%)が外されています。会社全部で並べ直せば、真ん中はもっと下がります。
  4. 「ツール代だけ」で比べない。調査の金額には専門人材の獲得費用と従業員の教育費用が含まれています。月額だけ足した数字を持ってくると、自社を実際より低く見積もることになります。
  5. 「いまの相場」と読まない。2025年3月中旬に、2024年度の実績を尋ねたものです。
  6. 平均値と中央値を混ぜない。同じ調査でも、どちらを物差しにするかで結論は反転します。

差が出たら、誰に聞くか

同じ調査に、相談相手のデータもあります。デジタル化について「相談した先がある」と答えたのは55.9%(全業種計 n=3,306。49人以下では51.8%/n=1,981)。そのうち具体的な相談相手まで答えた1,836社をみると、多い順にITベンダー50.5%、税理士・公認会計士32.8%、自社の役員・従業員27.7%、取引先21.0%でした。ITベンダーとは、システムやソフトを提供している会社のことです。

ここでお伝えしたいのは、いま御社には、会計を見てくれている税理士がいて、システムを入れてくれた会社があり、サーバーを預かっている会社があるということです。これは資産です。新しくどこかを探す必要はありません。「去年デジタルにいくら払ったか、一覧で出せますか」——それだけで十分に通じます。会計ソフトを使っているなら、顧問税理士に頼めば科目別の集計はすぐ出ます。

そして「自社の役員・従業員」が3番目に来ていることも見逃せません。実際に毎日その道具を触っているのは現場です。時間を数えるとき(B列)は、現場に1回聞いてください。社長が思っているより長いか、短いか。どちらに転んでも収穫があります。


まとめ

  • 日本政策金融公庫(中小企業事業)と取引のある中小企業が2024年度にデジタル化へ投じた金額は平均586.5万円・中央値130万円。49人以下では平均348.2万円・中央値100万円日本の中小企業全体の代表値ではありません。
  • これは「払うべき額」ではない。この調査は金額と成果を突き合わせた集計を示していない。目標ではなく物差し。
  • 平均と中央値で結論は反転する。平均は少数の大きな金額に引っ張られる。ふつうの会社の位置を知りたいなら中央値。
  • 金額の定義には、専門人材の獲得費用と従業員の教育費用が含まれる。ツール代だけ数えて比べない。
  • 今日やる1手:A4を1枚出して、昨年度デジタルに払った金額を全部書き出す。A列(社外に出ていったお金)とB列(社内で使った時間の金額)の2列に分ける。目安30分、会計ソフトがあれば5分。
  • 調査と比べるのはA列だけ。B列は自社の判断のために持つ。社内工数を数えないと、支出は実際より小さく見える。
  • 差が出ても、金額の上げ下げより先に「何に使ったか」を見る。①土台/②攻め/③見直し候補の3つに仕分ける。
  • 過去に投じた金額は失敗ではない。物差しが1枚できたという、次の一手の土台。

私が名古屋を拠点に、愛知・岐阜・三重の中小零細企業を対象に仕事をしていて強く思うのは、金額で迷っている経営者の多くは、金額そのものではなく「比べる相手がいないこと」で迷っているということです。この記事に書いた書き出しは、全部お金をかけずに、社長ご自身の手で全部できます。まずは1枚書いてみていただくのが、いちばん速いと本気で思っています。

ここから先は、私の役割の線引きです。私は「御社はいくら払うのが正解です」とはお答えできません。金額の正解は業種・成長段階・いま詰まっている課題によって変わり、この調査もそれを示していないからです。また、書き出しそのものを代行することもしません。自社の数字は、社長ご自身や経理の方の手元にあるものがいちばん速く、いちばん正確だからです。私がお引き受けできるのは、書き出したあと——その支出の配分がいまの経営課題に効いているかを数字で見極め、何に・どう投資するかを整理し、実行まで伴走する、その部分です。ここは有償のご支援になります。無料でお受けしているのは、次にご案内する初回面談(90分程度)までです。

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出典(すべて2026年8月20日に取得)

  • 日本政策金融公庫 総合研究所(日本公庫総研)「『デジタル化に取り組む中小企業の実態に関する調査』結果 ~「全国中小企業動向調査・中小企業編」 2025年1-3月期特別調査~」(2025年5月21日発表)
    https://www.jfc.go.jp/n/findings/
    pdf/tokubetu_250521.pdf

    ※本記事の金額・構成比・回答社数・金額の定義は、すべてこの資料によります(図-1、図-4、図-5、図-6、表-3、調査の実施要領)。
  • 日本政策金融公庫「景況に関する調査結果」(特別調査(中小企業)の一覧)
    https://www.jfc.go.jp/n/findings/
    tyousa_sihanki.html

    ※2026年8月20日時点で、この一覧に掲載されている特別調査(中小企業)のうち、デジタル化をテーマとした最新の回が上記2025年5月21日発表分であることを確認しました。

※本記事の数値は、2025年3月中旬に実施され2025年5月21日に公表された調査(対象=2024年度に投じた金額)に基づくものです。いまの相場を示すものではありません。調査は今後更新される可能性がありますので、最新の内容は上記の公式ページでご確認ください。
※本記事は、出典資料の図表を転載していません。数値は公表資料に基づいて私が本文および表として整理し直したものです。枠で囲った引用箇所は原文のままで、強調などの改変は加えていません。
「社内工数(社内の人が使った時間の金額)」を出典資料の金額の定義に含めるかどうかは、資料に明記がありません。本記事で社内工数を「B列」として分けているのは、私の実務上の考え方です。調査の数値と比較する際は、社内工数を含まないA列で比べてください。
※本文中で「私の見立て」と記した箇所は、出典資料に書かれている事実ではなく、私自身の判断です。
※当社は「何に・どう投資するか」の交通整理(マーケティング支援)を担います。支出の科目分けや会計処理、税務上の取り扱いの個別判断は、顧問税理士や該当分野の専門家にご確認ください。

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