所得税や住民税を半年分まとめて納めている会社では、給料から預かった住民税は12月10日、給料・賞与から預かった所得税は翌年1月20日まで口座にあります。今日までの額を残高の横に1行書き、年末の使い道は預かり分を引いた数字から考え始めます。
年末に何にいくら使うかを決めるとき、まず口座の残高を見ていませんか。その残高には、自社のお金ではない分が入っていることがあります。
結論です。所得税や住民税を半年分まとめて納めている会社では、年末の口座残高に、給料や賞与から差し引いて”預かっている”税金が、最大で半年分入っています。出ていくのは、住民税が12月10日(6月〜11月に払った給料の分)、所得税が翌年1月20日(7月〜12月に払った給料・賞与の分)です。年末に何にお金を使うかは、その分を引いた数字から考え始めてください。
預かっている税金が、納める日まで口座にあるのは、仕組みどおりの状態です。使い方を問う話でも、半年まとめの形を使え・やめろという話でもありません。今日までに預かった額も、出ていく日付も、今日分かる。だから準備できる、という話です。
給料や役員報酬を払っていない方には、この記事の1手は当てはまりません。「給料を払っていない」と1行書けば、今日の確認は済んでいます。
払っている方は、人数ではなく実際の納め方で、税ごとに見ます。
材料は、納めたときの領収証書(納めた用紙の控え)か、経理や給料の計算を頼んでいる先に1回聞くことです。通帳の印字だけでは決めないでください。住民税は、納める先の市町村ごとに決まります(一部の市町村の分だけ毎月、ということもありえます)。
1手で数えるのは、半年分まとめて納めている税だけです(毎月の分は、たまらないので数えません)。
給料の帳票を出してください。名前(「賃金台帳」「給与一覧表」など)ではなく、1回払うごとに全員分の合計が出ている紙を探します。無ければ、1人ずつの給与明細の控えで構いません。
「差し引いた額」の欄(「控除」とあることも)から、名前に「税」の字が入っている2行を拾います。ふつうは所得税(「源泉所得税」とも)と住民税(「市県民税」とも)です。
足した額を、税金を払っている口座の残高の横に1行書きます。
このうち預かっている分=◯円(住民税は6月に払った回から、所得税は7月に払った回から)
数えた税だけ、カレンダーの2026年12月10日に今日までの住民税の額と「+11月までに払う給料の分(未定)」、2027年1月20日に今日までの所得税の額と「+12月までに払う給料と冬の賞与の分(未定)」を書きます。未定の分を「9月の額×残りの月数」のような掛け算で埋めないでください。今日書けるのは、今日までにもう預かっている額までです。
帳票が手元に無いとき(給料の計算を税理士事務所やご家族などに頼んでいる場合)は、次の1文を送るまでが今日の1手です。「6月以降(12月10日を過ぎたら12月以降)に払った給料から差し引いた住民税と、7月以降に払った給料・賞与から差し引いた所得税の、それぞれ今日までの合計と、半年まとめかどうかを教えてください」。頼んだ日を紙に書けば済んでいます。
ここで判断の順番が変わります。年末に賞与・設備・販促・前払いを決めるときは、残高から、その日に数え直した1行を引いた数字から考え始めてください。ただし、引いた残りは使ってよい上限ではなく、出発点です。ほかにも出ていくお金があります。
ここからは、私の見方です。私は独立する前の15年間、製造・生産管理・営業の現場で働いてきました。
生産管理には、「預かっている物は、自社の在庫に数えない」という考え方があります。お客様から預かった材料や品物は、自社の棚に並んでいても、自社の物ではありません。混ぜて数えると、手元にある物の量を読み違えます。
お金も同じだと、私は考えています。口座に入っていても、預かっている分は、自社のお金として数えない。見えている残高を「自社の分」と「預かっている分」に分けてから、何に使うかを決める。判断の材料は同じでも、順番を1つ入れ替えるだけで、年末の判断を自社の数字から始められます。
見えている数字を、そのまま判断に使う前に中身を分けておく。この考え方は、別の記事「夏の電気代に混ざる国の値引き|予算は足し戻し、前年比は去年の分も」で、電気代を例にして書きました。
年末には、「税金が減るから、今のうちに何か買っておこう」という話が出ることもあると思います。その場合も、順番は同じです。まず、残高から預かっている分を引いた数字を見る。買うかどうかを考えるのは、そのあとです。
ここからは根拠です。引用と条文は、いずれも末尾の出典(公的な一次情報)で確かめられます。
給料から差し引いた所得税は、原則として、払った月の翌月10日までに国へ納めます。そのうえで、国税庁は次のように案内しています。
ただし、給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者は、源泉徴収した所得税および復興特別所得税を、半年分まとめて納めることができる特例があります。
これを納期の特例といいます。
出典:国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/taxes/
shiraberu/taxanswer/gensen/2505.htm)
「源泉徴収」は、給料などを払うときに税金を差し引いておくこと、「源泉徴収義務者」は、それをして国へ納める立場の会社や個人などです。「復興特別所得税」も、所得税と一緒に差し引いて納めるものです(このページの表題にも「源泉所得税及び復興特別所得税」とあります)。
どの分が、いつ出ていくのかは、同じページの続きに書かれています。
この特例の適用の対象となるのは、給与や退職金から源泉徴収をした所得税および復興特別所得税と、税理士、弁護士、司法書士などの一定の報酬から源泉徴収をした所得税および復興特別所得税に限られています。
この特例の適用を受けていると、その年の1月から6月までに源泉徴収した所得税および復興特別所得税は7月10日、7月から12月までに源泉徴収した所得税および復興特別所得税は翌年1月20日が、それぞれ納付期限となります。
この特例の適用を受けるためには、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」(以下「納期の特例申請書」といいます。)を提出することが必要です。
出典:国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/taxes/
shiraberu/taxanswer/gensen/2505.htm)
※国税庁ホームページの同じページから、段落を抜き出して掲載しています。
つまり、半年分まとめて納めているのは、申請書を出して、この特例の適用を受けている会社だけです。人数の条件に当てはまっていても、申請書を出していなければ、原則どおり毎月納めます。申請するかどうかは、この記事では扱いません。顧問の税理士や税務署の領域です。なお、今年の途中で特例を受け始めた会社や、受けなくなった会社は、7月10日の納め方と今の納め方が違うことがあります。今の納め方と、どの月に払った回から半年まとめになったかは、経理や頼んでいる先、顧問の税理士にご確認ください(それより前に払った回は、毎月納める分なので数えません)。
人数の条件(引用の「給与の支給人員が常時10人未満」)を、自社がどう満たすかの数え方も、税の判定です。国税庁のこのページには、関連する質疑応答事例として「給与等の支払を受ける者が常時10人未満であるかどうかの判定」が挙がっています。この記事で、対象かどうかを人数ではなく実際の納め方で確かめていただいたのは、このためです。
賞与の分も、1月20日に入ります。引用のとおり、1月20日に納めるのは「7月から12月までに源泉徴収した」所得税です。そして所得税法第28条第1項は、給与に賞与を含めています。だから、7月から12月に払った賞与から差し引いた所得税も、同じ1月20日の分です。冬の賞与を12月に払う会社では、その分も入ります。
給料から差し引いて会社が市町村へ納める住民税(この形を「特別徴収」といいます)は、原則として、1年分を12に分けた額を6月から翌年5月まで毎月差し引き、差し引いた月の翌月10日までに納めます(地方税法第321条の5第1項)。この額を、ここでは「毎月差し引く額」と呼びます。
そのうえで、住民税にも半年分まとめて納める定めがあります。地方税法第321条の5の2第1項の趣旨は、次のとおりです。
(趣旨)住民税を給料から差し引いて納める会社などは、給与の支払を受ける者が常時十人未満の事務所などについて、住民税を納入すべき市町村の長の承認を受ければ、6月から11月までに払った給与から差し引いた住民税を12月10日までに、12月から翌年5月までに払った給与から差し引いた分を6月10日までに、まとめて納めることができる。
※条文を当社が要約したものです。正確な文言は、出典のe-Gov法令検索(国の法令を調べられるサイト)でご確認ください。
承認するのは「納入すべき市町村の長」です。つまり、住民税の半年まとめは、納める先の市町村ごとに決まります。名古屋の会社が、岐阜や三重の市町村にも住民税を納めている、といった場合には、市町村によって、年2回のところと毎月のところが混ざることもありえます。帳票の住民税の行が市町村ごとに分かれていなければ、今日は全員分を足したうえで、横に「一部は毎月かもしれない」と書き添えてください。どの市町村の分が年2回かは、納めたときの領収証書の控えか、給料の計算を担当している方や頼んでいる先で確かめてください。今年の途中のある月から年2回になった市町村の分は、その月より前に払った回を数えません。
東海の例として、名古屋市の案内を引きます。半年分まとめて納める場合の時期を、名古屋市は次のように示しています。
- 1回目…6月分から11月分までの月割額を12月10日までに納入
- 2回目…12月分から翌年の5月分までの月割額を6月10日までに納入
(土曜日・日曜日、祝日のときはその翌日)(注)納期の特例分の納入書は、それぞれの納期限の10日前までに送付します。なお、給与支払報告書の提出時に、総括表の「納入書の送付」欄において「不要」を選択された場合は、納期の特例分の納入書を送付しません。
名古屋市:名古屋市公式ウェブサイトから引用
「月割額」は、上で書いた「毎月差し引く額」のことです。名古屋市の案内でいう6月分から11月分までの月割額は、条文でいう、6月から11月までに払った給与から差し引いた分にあたります。だから、今日の1手では、月を支給日で数えます。
「納期の特例」は、半年分まとめて納める仕組みの名前です。(注)のとおり、給与支払報告書を出すときの「総括表」で「納入書の送付」欄をどう選んだかによって、納入書が届かない会社もあります。答え合わせの手がかりを、納入書1つにしないのはこのためです。名古屋市以外の市町村の時期や送り方は、それぞれの市町村の案内でご確認ください。
日本年金機構の案内では、健康保険・厚生年金保険の保険料は、事業主が毎月の給料や賞与から本人の負担分を差し引き、会社の負担分とあわせて納める仕組みです。差し引いてから納めるまでの間は、これも口座にあります。この記事では、保険料の額や計算には触れません。
納める日が休日に当たる年は日がずれますが、2026年12月10日(木曜日)と2027年1月20日(水曜日)は、どちらも土日・祝日ではありません。
半年分まとめて納めている場合、12月に払った給料から差し引いた住民税は、翌年6月10日に納める分です(12月10日の分には入りません)。12月10日を過ぎてから数え直すときは、住民税は12月に払った回から数えます(6月〜11月に払った給料の分は、12月10日に納めた後です)。
ここまでが、公表されている事実と、私の見方です。当社は、税額の計算や、納付・納期の特例の申請についての個別の判断はしません。そこは顧問の税理士や、税務署・市町村の領域です。
私が有償のご支援としてお引き受けするのは、その先の部分です。預かっている分を引いた数字をもとに、年末に何へお金を使うか、使わないかの順番を決める——そこが私の仕事です。ここは有償のご支援になります。無料でお受けしているのは、次にご案内する初回面談(90分程度)までです。
数えてみて、気になったことがあれば、無料相談はこちらのお問い合わせフォームからお知らせください。初回面談(90分程度)で伺うのは、現状とお困りごとです。そのうえで、新たな投資が不要と判断すれば、その旨を誠実にお伝えします。実際に手を動かす部分をご依頼いただく場合は、有償のご支援としてお引き受けします。
当社は「何に・どう投資するか」の交通整理(マーケティング支援)を担います。税務・申請手続きの個別判断は、税理士・該当分野の専門家や、各窓口(税務署・市町村)でご確認ください。
※本記事に書いた制度の内容(人数の要件を含みます)と期限は、2026年10月5日時点で各公式サイトに公表されていたものです。制度・期限は変わることがあります。最新は下記の各公式サイトでご確認ください。