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求人票の賃金は相場ではなく式で確かめる|東海3県は10月1日改正

この記事の要点

求人票や給与の賃金が下限を満たしているかは、他社の相場ではなく国が公開している式で確かめられます。月給÷1箇月平均所定労働時間。東海3県の最低賃金は令和8年10月1日に引き上げられ、業種ごとの額を見てきた会社ほど確認が要ります。

令和8年(2026年)10月1日から、東海3県の最低賃金が上がります。愛知は1,140円から1,195円へ、岐阜は1,065円から1,121円へ、三重は1,087円から1,143円へ。ただ、この記事でお伝えしたいのは、この金額そのものではありません。自社の賃金がその下限を満たしているかどうかは、他社の求人票を何十件めくっても分かりません。国が、確かめるための計算式そのものを公開しているからです。

先に結論だけ言います

①結論:賃金の下限は、相場ではなく式で決まります。厚生労働省は「最低賃金額以上かどうかを確認する方法」というページで、確かめ方を公開しています。月給の場合は、次の1行です。

月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

「所定労働時間」は、会社が働くと決めている時間です(表記は原典のまま引いています)。そして愛知・岐阜・三重は、いずれも令和8年10月1日から額が上がります。

②今日やる1手:求人票と給与台帳を机に出し、月給の人をひとり選んで式に通します。相手も予約も要りません。原典のAさんの例が、そのまま手本になります。Aさんのある月の総支給額は220,000円(基本給150,000・職務手当30,000・通勤手当5,000・時間外手当35,000)。原典はここから通勤手当と時間外手当を外し、職務手当は外さず、220,000-(5,000+35,000)=180,000円を分子にしています(外すものは他にもあります。後半に全部挙げます)。換算式も原典に印字されていて、(180,000円×12か月)÷(250日×8時間)=1,080円(年間所定労働日数250日・1日8時間)。この例の最低賃金1,000円を上回る、が結論です。同じことを自社の数字でやり、出た額を自社の県の額と比べる——それだけです。

要る数字は2つだけです。①年間の所定労働日数②1日の所定労働時間。②に休憩は入れません(9時から18時まで・休憩1時間なら8時間です)。拘束時間の9時間で計算すると答えが低く出て、下回っていると誤判定します——払いすぎる側に外れる誤りです(その計算と、2つの数字の在り処は後半にまとめました)。

時間給だけの会社は、計算は要りません。原典の(1)は「時間給≧最低賃金額(時間額)」。時給をそのまま自社の県の額と見比べて終わりです。

月給の人がいる会社で、給与台帳が税理士事務所や委託先にある場合も、従業員の直近1回分の給与明細1枚と上の2つがあれば足ります。台帳を取り寄せる必要はありません。

下回っていた方は、ここで止めないでください。誰のどの月分がいくら足りないかを1枚に書き出し、社会保険労務士か、所轄の労働基準監督署へご相談ください。厚生労働省は、最低賃金未満だった場合は使用者が労働者にその差額を支払わなくてはならないと説明しています(逐語は後半に引きます)。金額の確定と手続きは、私の領域ではありません。

③この記事の対象:愛知・岐阜・三重で、時間給または月給で人を雇っている会社と、これから求人を出す会社です。業種も規模も問いません。ここを取り違えやすいので先に言います。10月1日の時点で在籍している人が全員対象であり、新しく採る人だけの話ではありません。厚生労働省は、県全体の最低賃金は産業や職種にかかわりなく、県内の事業場で働くすべての労働者と使用者に適用されると説明しています(逐語は後半に引きます)。求人票の額だけを直しても、いま働いている人の賃金は直りません。だから机に出すのは、求人票と給与台帳の両方です。

④計算して余裕があった方へ:「今は上回っている」も情報です。とくに見ていただきたいのは、業種ごとに決められた最低賃金(特定(産業別)最低賃金=特定の産業だけに効く下限額)を目安にしてきた会社です。東海には、10月1日から県全体の額のほうが高くなる業種があります。自社の県の労働局のページに業種ごとの一覧が載っています(3県ぶんのリンクは記事末の「出典」にあります)。自社の業種がその一覧にあるかを、今日のうちに見てください。載っていたら、その業種の額と、自社の県の額(現在の額と10月1日からの額の両方)を並べてください。下限になるのは「県全体の額」と「業種ごとの額」のうち高い方です(すでに県全体の額へ移っている業種もあります)。どちらが高いかを見比べてください。なお一覧に業種名だけあって額が書かれていない場合は、いま自社にいくらが適用されているかを労働局へお尋ねください(愛知の9業種のうち、額を当社が確認できたのは2つだけです)。

③の「全員対象」について、愛知労働局は留意事項でさらに具体的に書いています。対象に入る人の種類が並んでいます。

最低賃金(愛知県最低賃金、特定最低賃金)は、事業場で働く常用・臨時・派遣・外国人技能実習生・パート・アルバイト、年金受給者である労働者等すべての労働者に適用され、事業主は使用する労働者に対して最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。

これは愛知労働局のページの記載です。パート・アルバイトの方、技能実習生の方、年金を受けながら働いている方も、一人残らず対象です。「正社員だけ見ればよい」ではありません。

派遣で来ている方については、同じ留意事項が続けてこう書いています。

なお、派遣労働者については、派遣先の都道府県の地域別(特定)最低賃金が適用されますので、派遣先を管轄する都道府県労働局・労働基準監督署にお問い合わせ下さい。

受け入れている事業場がある県の額が基準になる、ということです。厚生労働省も「派遣労働者には、派遣先の最低賃金が適用されます。」と説明しています。自社の給与台帳に出てこない方がいる場合は、上のとおり派遣先を管轄する労働局・労働基準監督署へお問い合わせください。

相場は、下限の答えを持っていません

求人サイトを開いて同業の額を並べる。これ自体は無駄ではありません。むしろ必要な作業です。ただ、そこにあるのは他社が出した額であって、法律上の下限ではありません。

この2つは、別々の問いです。「いくら出せば人が来るか」は相場の問い。「いくら以上でなければならないか」は式の問い。前者は他社を見ないと分かりませんが、後者は他社を1件も見なくても分かります。そして、答え合わせができるのは後者だけです。

独立前の私は、製造業をはじめとする5つの業種で、15年ほど現場にいました。賃金の話が出るときに最初に飛び交うのは、決まって「よそはいくら出しているらしい」でした。相場を気にするのは当たり前のことですし、そこに悪いところは何もありません。ただ、相場の話をいくら重ねても、下限を超えているかどうかの答えは出ません。順番として、式が先です。

国が公開している確かめ方は、5つの場合に分かれています

厚生労働省の「最低賃金額以上かどうかを確認する方法」には、給与の払い方ごとに5つの場合が示されています。原典の区切りのまま、1つずつ引きます。

(1) 時間給制の場合

時間給≧最低賃金額(時間額)

(2) 日給制の場合——ここには但し書きが続いています。但し書きまでが1つのかたまりです。

日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)ただし、日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合には、日給≧最低賃金額(日額)

(3) 月給制の場合

月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

(4) 出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合——歩合給・請負の会社はここです。分子も分母も「出来高払制その他の請負制の分だけ」に限られている点が要です。

出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金計算期間に出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除して時間当たりの金額に換算し、最低賃金額(時間額)と比較します。

この限定を落として「総支給額を総労働時間で割る」と計算すると、答えは実際より高く出ます。原典のCさんの例で言えば、総支給額177,450円を200時間で割れば約887円になりますが、原典が出している答えは840円です。高く出るということは、本当は下回っているのに「足りている」と読み違える向きに外れるということです。ここは1文字も省かずに当てはめてください。

(5) 上記(1)、(2)、(3)、(4)の組み合わせの場合

例えば、基本給が日給制で、各手当(職務手当など)が月給制などの場合は、それぞれ上記(2)、(3)の式により時間額に換算し、それを合計したものと最低賃金額(時間額)を比較します。

多くの会社は(1)〜(3)で足ります。歩合給や請負がある会社は(4)と(5)まで読んでください。

ここで大事なのは、式の中身より「式が公開されている」という事実のほうです。自社の賃金が下限を満たしているかどうかは、誰かに聞かなくても、自分で確かめられます。

分子に何を入れるか——原典の計算例が、いちばん分かりやすい答えです

実務でつまずくのは、式そのものではなく「分子に何を入れて、何を外すか」です。ここは、条文や一覧を読むより、原典に載っている計算例をそのまま見るのが早いと思います。

Aさんの条件は、原典にこう書かれています。

○○県で働く労働者Aさんは、月給で、基本給が月150,000円、職務手当が月30,000円、通勤手当が月5,000円支給されています。また、この他残業や休日出勤があれば時間外手当、休日手当が支給されます。M月は、時間外手当が35,000円支給され、合計が220,000円となりました。なお、Aさんの会社は、年間所定労働日数は250日、1日の所定労働時間は8時間で、○○県の最低賃金は時間額1,000円です。

ここが大事なところです。Aさんが実際に受け取った額は220,000円です。基本給・職務手当・通勤手当を足した185,000円ではありません(M月は、これに時間外手当35,000円が乗っています)。原典は、この220,000円から何を外すかを、次のように書いています。

(1)Aさんに支給された賃金から、最低賃金の対象とならない賃金を除きます。除外される賃金は通勤手当、時間外手当であり、職務手当は除外されませんので、220,000円-(5,000円+35,000円)=180,000円

(2)この金額を時間額に換算し、最低賃金額と比較すると、(180,000円×12か月)÷(250日×8時間)=1,080円>1,000円となり、最低賃金額以上となっています。

この2行から、3つのことが数字で分かります。

  • 通勤手当5,000円と、時間外手当35,000円は、分子から外れている。
  • 職務手当30,000円は、分子に入っている。原典が「職務手当は除外されません」と明記しています。
  • 時間額への換算は、原典が式ごと印字している。当社が推測で補ったものではありません。

とくに見落としが出やすいのは、残業代です。Aさんの総支給額220,000円のうち35,000円は時間外手当で、これを分子に残したまま計算すると、答えは実際より高く出ます。「足りている」と読み違える向きに外れる、ということです。「手当だから全部入る」でも「手当だから全部外れる」でもない——それを原典が1例で示してくれています。

自社の数字を入れるときに要るのは、①年間の所定労働日数と、②1日の所定労働時間です。①は年間カレンダーに、②は就業規則に書かれていることが多い数字です。

ここで一番多い取り違えが、②の「1日の所定労働時間」です。休憩を含めてはいけません。9時から18時まで・休憩1時間の会社なら8時間です。これを拘束時間の9時間で計算すると、分母は250×9÷12=187.5時間に膨らみ、Aさんと同じ180,000円でも180,000÷187.5=960円。1,080円が960円に落ちて、本当は足りているのに「下回っている」と判定してしまいます。払いすぎる側に外れる誤りなので、ここは指で確かめてください。

どちらも無い会社もあります。従業員が常時10人に満たない会社では、就業規則を備えていないことがあります。その場合は、雇用契約書や労働条件通知書の、始業・終業の時刻と休憩時間が書かれている欄(「所定労働時間」「勤務時間」などの見出しになっていることもあります)を見てください。始業から終業までの時間から休憩を引いた時間が、②です。①が見つからなければ、去年1年分のカレンダーで、実際に出勤日とした日を数えるのが一番確かです。「紙が無いから計算できない」で止まることは、ほとんどありません。

外すもの——6項目にまとまっています

分子から外すものは、厚生労働省の最低賃金 特設サイトに6項目でまとめられています。この箇条書きは、先ほどの「確認する方法」のページではなく、特設サイトのほうに載っています(出所は記事末に記載します)。逐語で引きます。

  1. 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  2. 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  3. 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
  4. 所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
  5. 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
  6. 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

この6項目に職務手当は入っていません。だからAさんの分子に30,000円が入っているわけです。残業代・休日出勤手当・深夜割増・賞与も、この式の分子には入りません。「残業代を含めれば下限を超えている」という数え方はできない、ということです。

歩合給がある会社は、Cさん・Dさんの例が近い

同じページには、Aさんのほかに3つの計算例が載っています。日給と月給を組み合わせているBさん(結論900円=下回る)、原典が「完全歩合給制の場合」と呼んでいるCさん(840円=下回る)、固定給と歩合給が併給されるDさん(1,050円=以上)。B・C・Dの例の最低賃金は時間額950円です。

Cさんは、この記事でいちばん丁寧に見ていただきたい例です。原典のCさんは、タクシー会社で働く方です。ある月の総支給額177,450円の内訳は、歩合給168,000円・時間外割増賃金6,300円・深夜割増賃金3,150円。原典は「除外される賃金は、時間外割増賃金、深夜割増賃金であり」として、177,450円-(6,300円+3,150円)=168,000円を分子にしています。総支給額ではなく、歩合給の168,000円だけが分子です。

分母の作り方も、月給のときとは違います。原典はCさんの分母を「月間総労働時間数」と呼び、168,000円÷200時間=840円と計算しています。この200時間が何を足した数なのかは、原典に書かれていません。条件として示されているのは「1箇月平均所定労働時間は月170時間」と「M月の時間外労働は30時間」で、この2つを足すと200時間になります(170+30=200。この足し算は当社が原典の条件から再現したものです)。所定の170時間ではなく、実際に働いた200時間で割っている——ここが月給の式との違いです。先ほどの(4)が「出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除して」と書いているのは、このことです。

総支給額177,450円を200時間で割れば約887円ですが、原典の答えは840円。総支給額の多さと、この式の答えは、別のものだからです。運送・タクシー・訪問系など、歩合の比重が大きい会社は、こちらの例のほうが自社に近いはずです。

東海3県の、10月1日からの額

3県の額を、現在の額と並べてまとめます。なお「効力発生日」はその額がいつから効き始めるかを指す言葉で、このあと出てくる「官報」は、国が法令などを知らせる公式の刊行物のことです。

県 現在の県の最低賃金 令和8年10月1日からの県の最低賃金
愛知 1,140円 1,195円
岐阜 1,065円 1,121円
三重 1,087円 1,143円

上の6つの数字は、すべて「県の最低賃金(地域別最低賃金)」の額です。業種ごとの額ではありません。出所の書き方も添えておきます。愛知労働局の表は、最低賃金名の欄に「令和8年9月30日までの愛知県最低賃金」と掲げ、時間額(円)の欄に1,140と記しています。岐阜労働局のページは、最低賃金の件名(改正発効日)の欄に「岐阜県最低賃金(令和7年10月18日~)」と掲げ、時間額の欄に1,065と記しています。三重については、三重労働局のページに現行の三重県最低賃金が時間額1,087円である旨が記されています。いずれも表の別の欄に分かれている数字です(欄をまたいで1つの文のようにつなげると、どの額が何を指すのかが崩れます)。

上がり幅も書いておきます。愛知は1,195−1,140=55円、岐阜は1,121−1,065=56円、三重は1,143−1,087=56円です(この引き算は、上の表の額から当社が計算したものです)。1時間あたり55円や56円でも、1箇月160時間なら8,800円〜8,960円の差になります(こちらも当社の計算です)。式に通したときの答えが新しい額とぎりぎりの人がいれば、その差はここで効いてきます。

各労働局のページに書かれている言葉を、そのまま引きます。

※令和8年10月1日から愛知県最低賃金が改正されます。(愛知労働局)

※令和8年10月1日に岐阜県最低賃金が改正されます。(岐阜労働局)

三重については、三重労働局のページに次のように書かれています。

(前略)三重県最低賃金を、令和8年10月1日から、時間額1,143円に改正することとし、令和8年9月1日に官報公示を行いました。

※原文はこの前に「三重労働局長(氏名)は、」が入る1つの文です。主語にあたるこの部分を(前略)としています。

ここは正確に書きます。官報に公示したことを当社が確認できたのは、三重だけです。愛知・岐阜については、当社が確認できたのは労働局のページの掲示(「改正されます」)までで、それ以上のことは書きません。「3県とも官報公示が済んでいる」とは、当社は言えません。確認できていないことを、確認できたかのように書かないためです。

ここが本題です:自社の業種の額を見ていた会社ほど、気づきにくい

最低賃金には2種類あります。厚生労働省の説明を引きます。

地域別最低賃金は、産業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用されます。特定最低賃金は、特定地域内の特定の産業の基幹的労働者とその使用者に対して適用されます。

要するに、県全体に効く下限と、特定の産業だけに効く下限の2つがあるということです(「基幹的労働者」に誰が当たるかは産業ごとの定めがあり、本記事では扱いません)。そして両方が当たる場合の扱いも、明記されています。

なお、地域別最低賃金及び特定最低賃金の両方が同時に適用される場合には、使用者は高い方の最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。

ここに、東海の製造業・小売業にとって見過ごしやすい落とし穴があります。これまで「自社の業種の額」のほうが高かった会社は、その額だけを見ていれば足りていました。ところが県全体の額が上がっていくと、ある時点で高さが入れ替わります。愛知では、それが10月1日に起きます(具体的な額は次の項に書きます)。見るべき額が、自社の業種の額から県全体の額へ移るわけです。ここに気づかないまま、業種の額だけを見続ける——これは、真面目に自社の業種の決まりを守ってきた会社ほど起きやすい話だと思います。

愛知:9つの業種が名指しで挙がっています

愛知労働局のページは、次の9つの産業を名指しして「令和8年10月1日から愛知県最低賃金 1,195円 が適用されます」と書いています。産業名を、原文の表記のまま並べます。

  1. 染色整理業
  2. はん用機械器具、生産用機械器具、業務用機械器具製造業
  3. 計量器・測定器・分析機器・試験機、光学機械器具・レンズ、時計・同部分品製造業
  4. 電子部品・デバイス・電子回路、電気機械器具、情報通信機械器具製造業
  5. 各種商品小売業
  6. 自動車(新車)、自動車部分品・附属品小売業
  7. 自動車(新車)小売業
  8. 製鉄業、製鋼・製鋼圧延業、鋼材製造業
  9. 輸送用機械器具製造業

機械器具、電子部品、鉄鋼、輸送用機械器具。愛知のものづくりの中心が、そのまま並んでいます。加えて、各種商品小売業と自動車関連の小売業——小売業も3つ入っています(上の5・6・7)。

※労働局の「表」のほうの業種名には、上の一覧に無い括弧書きの限定が付いていることがあります。表では、業種名の下に改行して括弧書きが置かれています(製鉄業の行なら「(表面処理鋼材を除く)」)。自社が当たるかどうかは、表の括弧書きまでご覧ください。

ここで1つ、はっきり書いておきます。この9つのうち、いま適用されている特定最低賃金の額が公表されているのは、当社が確認できた範囲で2つだけです。

  • 製鉄業、製鋼・製鋼圧延業、鋼材製造業(表の業種名は、この下に改行して「(表面処理鋼材を除く)」と続きます)——この業種の特定最低賃金が1,175円です。労働局の表には「令和8年9月30日までは特定最低賃金」と書かれています。そして令和8年10月1日からは、愛知県最低賃金の1,195円が適用されます(表の記載は「令和8年10月1日からは愛知県最低賃金」)。
  • 輸送用機械器具製造業(表の業種名は、この下に改行して「(建設用ショベルトラック製造業を含む。船舶製造・修理業、舶用機関製造業、自転車・同部分品製造業を除く。)」と続きます)——この業種の特定最低賃金が1,146円です(同じく「令和8年9月30日までは特定最低賃金」)。令和8年10月1日からは、愛知県最低賃金の1,195円が適用されます。

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい構図です。いま、この2つの業種の特定最低賃金(1,175円と1,146円)は、現在の愛知県最低賃金1,140円より高い額です。だからこの2業種の会社は、業種の額を見ていれば足りていました。ところが10月1日から愛知県最低賃金が1,195円になり、1,175円も1,146円も下回ります。見るべき額が、業種の額から県の額へ移るわけです。残る7つの業種の額は、当社が確認した範囲では、愛知労働局のページにも愛知県のページにも見当たりませんでした。ですので「9業種の特定最低賃金は◯円」という言い方は、本記事ではしません。自社の業種が上の一覧にあるなら、現在いくらが適用されているかは、労働局に確認するのが確実です。

岐阜:10月1日に切り替わるのは1件です。残る2件は、すでに切り替わっています

岐阜県には業種ごとの最低賃金が3件あります。この3件は、同じ日に一斉に切り替わるわけではありません。時点が違います。岐阜労働局のページは、最低賃金の件名(改正発効日)の欄に「岐阜県自動車・同附属品製造業最低賃金(令和7年12月21日~)」と掲げ、時間額の欄に1,117と記しています。そのうえで、次のように書かれています。

岐阜県自動車・同附属品製造業最低賃金は、令和8年10月1日以降岐阜県最低賃金を下回るため、同日以降は上記の岐阜県最低賃金が適用されます。

これが10月1日から切り替わる1件です。1,117円は、10月1日からの1,121円を下回ります。残る2件については、こう書かれています。

岐阜県電子部品・デバイス・電子回路、電気機械器具、情報通信機械器具製造業最低賃金(時間額965円)及び岐阜県航空機・同附属品製造業最低賃金(時間額1,049円)については、上記岐阜県最低賃金を下回っているため、岐阜県最低賃金が適用されます。

「下回るため」と「下回っているため」。この2つは、指している時点が違います。965円と1,049円の2件は、現在の1,065円をすでに下回っているので、10月1日を待たず、いまこの時点で岐阜県最低賃金が適用されています。「10月1日に3件がまとめて変わる」という理解は、事実と違います。10月1日に切り替わるのは1件、残る2件はすでに切り替わっている。ここは分けて読んでください。

三重:本記事では業種ごとの額を挙げません

三重県にも業種ごとの最低賃金があります。ただし当社は、今回それぞれの効力発生日(その額がいつから効いているか)まで一次情報で確認できていません。確認できていない以上、本記事では額を挙げません。三重の会社で自社の業種が該当しそうな方は、三重労働局のページ(10月1日から最低賃金が時間額1,143円になります!)でご確認ください。

合意していても、下回った分は無効になります

厚生労働省の最低賃金 特設サイトには、こう書かれています。

仮に最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額と同様の定めをしたものとみなされます。

そして、下回っていた場合にどうなるかも、同じページに書かれています。窓で先にお伝えした、差額の逐語はこれです。

使用者が労働者に最低賃金未満の賃金しか支払っていない場合には、使用者は労働者に対してその差額を支払わなくてはなりません。

「本人が納得しているから」は理由になりません。賃金の話でいちばん誤解されやすいのが、ここだと思います。最低賃金法第四条第一項は、次のとおりです。

使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。

罰則も定められています。ただし、どの最低賃金に対する違反かによって、根拠となる法律も金額も変わります。ここを一括りにすると間違えます。最低賃金法第四十条を逐語で引きます。

第四条第一項の規定に違反した者(地域別最低賃金及び船員に適用される特定最低賃金に係るものに限る。)は、五十万円以下の罰金に処する。

カッコの中が射程です。この「五十万円以下の罰金」は、地域別最低賃金(東海3県の1,195円・1,121円・1,143円がこれです)と、船員に適用される特定最低賃金の違反に限られています。それ以外の特定(産業別)最低賃金の違反は、この条文の射程に入っていません。厚生労働省は、この2つを並べて次のように説明しています(条件の部分も含めて引きます)。

地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められています。なお、特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、労働基準法に罰則(30万円以下の罰金)が定められています。

労働基準法の条番号は、当社として条文で直接確認していないため、本記事では書きません。船員についても本記事では扱いません(東海3県の陸上の事業所を前提にしています)。

罰則の重さを言いたいのではありません。「罰則の話ですら射程が分かれている」ということは、賃金まわりは伝聞や要約で受け取ると簡単にずれる、ということです。だからこそ、自社の数字は自社で式に通す。今日の1手は、そのためのものです。

ここから先、私にできること・できないこと

ここまでの作業は、社長ご自身で全部できます。費用は1円もかかりません。私に頼む理由はありませんし、頼むべきでもありません。当社は、お客様に無駄なお金を使わせないことを判断の軸に置いています。

できないことを先に書きます。賃金をいくらに設定するか、就業規則や賃金規程をどう定めるか、労働時間をどう管理するか——これらは社会保険労務士など労務の専門家の領域です。私はそこには立ち入りませんし、届出や手続きの代行も行いません。本記事で私が書いたのは、国が公開している式と、各労働局が掲示している言葉までです。それ以上の判断は、必ず専門家か労働局にご確認ください。

そのうえで、私がお引き受けできるのはその先です。下限が上がるということは、同じ条件の会社が横並びに見えやすくなるということでもあります(これは私の見方であり、公的機関が示したものではありません)。求人票の数字で差が付きにくくなるぶん、求職者が社名で検索したあとに自社サイトで何が見えているかが効いてくる、というのが私の見方です。そこの導線(見た人が次にどこへ進むかの流れ)を、経営のボトルネック(詰まっている一番の課題)から逆算して組み立てる部分です。関連して「求人票の外側で、いま動かせる場所はどこか」という記事も書いています。ここは有償のご支援になります。無料でお受けしているのは、次にご案内する初回面談(90分程度)までです。また、応募や採用の結果をお約束することはできません。

自社サイト側のことでお困りがあれば、無料相談はこちらのお問い合わせフォームからお知らせください。初回面談(90分程度)で伺うのは、現状とお困りごとです。そのうえで、新たな投資が要らないと判断すれば、その旨をお伝えします。実際に手を動かす部分をご依頼いただく場合は、有償のご支援としてお引き受けします。

初回面談はオンラインで90分程度。こちらから契約を急かしたり、その場で契約をお願いしたりすることはしません。新たな投資が不要と判断すれば、その旨を誠実にお伝えします。

まとめ

  • 賃金の下限は相場では決まらない。国が「月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)」という式を公開している。
  • 分子は、通勤手当と時間外手当(残業代)を外し、職務手当は入れる。Aさんの計算例が数字でそれを示している。賞与・休日出勤手当・深夜割増も外れる。
  • 東海3県の県の最低賃金は、いずれも令和8年10月1日から引き上げ(愛知1,140→1,195円・岐阜1,065→1,121円・三重1,087→1,143円)。官報公示を当社が確認できたのは三重のみ。
  • 10月1日時点で在籍している人が全員対象。求人票だけ直しても、いま働いている人の賃金は直らない。
  • 愛知は9業種が名指しで挙がっている。ただし当社が額を確認できたのは2業種のみ(製鉄業等1,175円・輸送用機械器具製造業1,146円。いずれも令和8年9月30日までの額)。
  • 岐阜は10月1日に切り替わるのが1件(1,117円)。残る2件(965円・1,049円)はすでに切り替わっている。3件が同時に変わるのではない。
  • 罰則は射程が分かれる。最低賃金法40条の五十万円以下の罰金は、地域別最低賃金と船員の特定最低賃金に限られる。

出典(いずれも2026年9月11日に取得)

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※本文中の引用は、上記の各ページ・条文からその言葉のまま引いています。記号の全角・半角も原典どおりです。
※原典は「箇月」と「か月」を使い分けています。式の「1箇月平均所定労働時間」は「箇月」、Aさんの計算の「12か月」は「か月」です。どちらも原典の表記のまま引いており、当社が統一のために書き換えることはしていません。
※厚生労働省の最低賃金の特設サイトには見出しタグ(H1・H2)が置かれていません。本記事では、画面に見えている「対象となる賃金は?」「最低賃金とは?」の表示でページを指しています(両ページのブラウザのタイトル表示はいずれも「あなたの賃金を比較チェック|最低賃金制度」です)。
※本記事の額・発効日・掲示の文言は2026年9月11日時点で確認したものです。制度の内容は変わりますので、最新は各労働局の公式ページでご確認ください。
※官報公示について当社が一次情報で確認できたのは三重県のみです。愛知県・岐阜県については、労働局のページの掲示(「改正されます」)までを確認しました。確認できていないことを、確認できたかのようには書いていません。
※異議申出などの手続きの進み具合については、3県とも当社は確認していません。本記事は、各労働局が現時点で掲示している内容をお伝えするものです。
※Aさんの時間額への換算は、原典に式ごと印字されているものをそのまま引きました((180,000円×12か月)÷(250日×8時間)=1,080円>1,000円)。当社が推測で補った箇所はありません。
※愛知県の9業種のうち、特定最低賃金の額が公表されているのは2業種のみです(製鉄業等1,175円・輸送用機械器具製造業1,146円。いずれも令和8年9月30日までの特定最低賃金の額)。残る7業種の額は、当社が確認した範囲の公開情報には見当たりませんでした。
※最低賃金法第四十条の「五十万円以下の罰金」は、条文上「地域別最低賃金及び船員に適用される特定最低賃金に係るもの」に限られています。船員以外の特定(産業別)最低賃金の違反について、厚生労働省は「労働基準法に罰則(30万円以下の罰金)が定められています。」と説明しています。労働基準法の条番号は、当社として条文で直接確認していないため書いていません。なお条文は e-Gov の法令データで取得して確認しました。
※「相場は下限の答えを持っていない」「下限が上がると同じ条件の会社が横並びに見えやすくなる」——これらは私の見方であり、公的機関が示したものではありません。
※本記事は、賃金や求人内容の見直しによって応募・採用の結果が得られることを保証するものではありません。
※当社は”何に・どう投資するか”の交通整理(マーケティング支援)を担います。賃金の設定・就業規則・労働時間の管理・各種届出といった労務の個別判断は、社会保険労務士など該当分野の専門家へ、最低賃金の適用や手続きの取り扱いは、所轄の労働基準監督署・各労働局の公式ページでご確認ください。

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