求人票に書いた条件と、実際に結ぶ労働契約の条件が違うとき。職業安定法と施行規則は「変更」のほかに「特定・削除・追加」を書き分けています。直近に採用した1人分の求人票と労働条件通知書を並べ、5行を突き合わせる手順を条文つきで書きました。
求人票に書いた条件と、実際に結ぶ労働契約の条件。見比べると、どこかの行が違っている——採用の現場では起こりうることです(ここは私の見立てです)。
結論から書きます。職業安定法は、募集のときに示した条件と、契約を結ぼうとするときの条件が違う場面について、「変更する場合」のことだけを書いているわけではありません。この法律から細かい定めを任された職業安定法施行規則(法律の細かいところを定めた省令)が、「特定する場合」「削除する場合」「追加する場合」を、それぞれ別の号(条文の中で一・二・三と番号を振って並べた項目)として置いています。つまり条文の上では、変更・特定・削除・追加の4つが書き分けられています。
今日やることは1つです。求人票を出して直近に採用した1人について、募集のときに出した求人票(ハローワーク・求人サイト・自社の採用ページなどに出した募集)と、契約のときに渡した労働条件通知書(または雇用契約書)を並べます。そして次の5行を突き合わせ、違う行に印を付けてください。
この5行は、施行規則の第4条の2第3項が並べている号のうち5つをもとに、突き合わせやすいように私が5つにまとめたものです。条文の全部の号ではありませんし、見るべきものがこの5つに限られるという意味でもありません(どの号から取ったかは、後半に条文の言葉のまま載せます)。
「同じ」か「違う」かは、書き方ではなく中身で見てください。たとえば、求人票では日給を月額に換算して載せている(換算すれば同じ額になる)、仕事の内容の言い回しが違う、というだけなら「同じ」です。求人票で幅を持たせていた行(「月給22万〜28万円」など)が、通知書で1つに決まっている場合は、「違う」の印を付けて、後で専門家に見てもらう行に入れておいてください。どちらか迷う行は「?」の印で構いません。
5行のどれにも「同じ」「違う」「?」のどれかが付いたら、今日の分は終わりです。「違う」「?」が付いた行には、それが変更・特定・削除・追加のどれに近いかを、ご自身でメモしておいてください(4つの言い換えは後半の表にあります)。
ここで線を引いておきます。その違いが条文のどの型に当たるのか、契約の前に明示(はっきり示して伝えること)が要ったのかどうかを、私は判定しません。それは社会保険労務士など該当分野の専門家や、都道府県労働局の領域です。「違う」と「?」の行だけ、メモを持ってそちらでご確認ください。
当時の求人票が手元に残っていなければ、残っている別の人の分で行ってください。同じ募集を複数の場所に出していたときは、その人が応募してきた場所のものを使います。誰の分も残っていなければ、今日の1手は「次の募集から、求人票の控えを、採用した人の労働条件通知書の控えと一緒に保管する」と決めることに置き換えてください(私の見立てです)。
5行とも「同じ」だった方へ。次の募集で、賃金のように幅を持たせる行を求人票に作るときは、契約の前に相手に何を、どう伝えたかを記録に残す段取りまで、先に決めておいてください。今日のような突き合わせで迷わずに済みます(私の見立てです。伝える必要があるかどうかは、専門家や労働局にご確認ください)。
求人票はあるのに、労働条件通知書も雇用契約書も見当たらないときは、今日の突き合わせはできません。「通知書が見当たらない」とメモして、社会保険労務士など該当分野の専門家や労働局でご確認ください(書面の扱いについて、私は判定しません)。
まず法律です。職業安定法の第5条の3第3項を、途中で切らずに引きます(国の法令検索サイト「e-Gov法令検索」の現行条文)。
求人者、労働者の募集を行う者及び労働者供給を受けようとする者(供給される労働者を雇用する場合に限る。)は、それぞれ、求人の申込みをした公共職業安定所、特定地方公共団体若しくは職業紹介事業者の紹介による求職者、募集に応じて労働者になろうとする者又は供給される労働者と労働契約を締結しようとする場合であつて、これらの者に対して第一項の規定により明示された従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件(以下この項において「従事すべき業務の内容等」という。)を変更する場合その他厚生労働省令で定める場合は、当該契約の相手方となろうとする者に対し、当該変更する従事すべき業務の内容等その他厚生労働省令で定める事項を明示しなければならない。
言葉を少し補います(ここは私の補足です)。「公共職業安定所」はハローワークのこと、「特定地方公共団体」は無料の職業紹介を行う地方公共団体のこと、「職業紹介事業者」は許可や届出をして職業紹介を行う事業者(いわゆる人材紹介会社など)のことです。「労働者供給」は、この記事では扱いません。
この1文から、今日の話に関わる読みどころを3つ、私の言葉でまとめます(言い換えです。判断に使うときは、上の条文の言葉のほうをご覧ください)。
すぐ次の第4項は、明示のしかたについての定めです。
前三項の規定による明示は、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により行わなければならない。
ここでいう「厚生労働省令で定める方法」を定めた施行規則の条文(第4条の2第4項)は、この記事では引きません。既刊の応募が来たのに、面接の前に辞退される|「間」で起きていることで扱っています。明示のしかたで足りているかどうかも、専門家や労働局にご確認ください。
第3項にある「その他厚生労働省令で定める場合」の中身が、施行規則の第4条の2第1項です。続く第2項が、そのときに明示する事項を定めています。2つの項を続けて引きます。
(法第五条の三に関する事項)
第四条の二 法第五条の三第三項の厚生労働省令で定める場合は、次のとおりとする。
一 求人の申込みをした公共職業安定所、特定地方公共団体若しくは職業紹介事業者の紹介による求職者、募集に応じて労働者になろうとする者又は供給される労働者(以下この項において「紹介求職者等」という。)に対して法第五条の三第一項の規定により明示された従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件(以下「従事すべき業務の内容等」という。)の範囲内で従事すべき業務の内容等を特定する場合
二 紹介求職者等に対して法第五条の三第一項の規定により明示された従事すべき業務の内容等を削除する場合
三 従事すべき業務の内容等を追加する場合
2 法第五条の三第三項の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。
一 前項第一号の場合において特定する従事すべき業務の内容等
二 前項第二号の場合において削除する従事すべき業務の内容等
三 前項第三号の場合において追加する従事すべき業務の内容等
法律の「変更する場合」と、施行規則の「特定する場合」「削除する場合」「追加する場合」。冒頭で「4つが書き分けられています」と書いたのは、この2つの条文を並べたときの形のことです。
ここからは私の言い換えです。判断に使うときは、真ん中の列の条文の言葉のほうをご覧ください。
| 型 | 条文の言葉(一部をそのまま) | 私の言い換え |
|---|---|---|
| 変更 | 「…を変更する場合」(法第5条の3第3項) | 募集のときに示した内容を、別の内容に変える |
| 特定 | 「…の範囲内で従事すべき業務の内容等を特定する場合」(施行規則第4条の2第1項第一号) | 募集のときに幅や選択肢で示したものを、その中の1つに決める |
| 削除 | 「…明示された従事すべき業務の内容等を削除する場合」(同 第二号) | 募集のときに示していたものを、外す |
| 追加 | 「従事すべき業務の内容等を追加する場合」(同 第三号) | 募集のときに示していなかったものを、加える |
ここで、条文の言葉と見比べるための題材を1つ置きます(説明のための架空の例です)。求人票では賃金を「月給22万〜28万円」と幅で示し、契約で「24万円」に決めたとします。「幅の中で決めただけだから、何も変わっていない」と受け取りたくなる行です。けれども、法律の「変更する場合」とは別に、施行規則には号として「範囲内で…特定する場合」が置かれています。この行が条文のどの型に当たるのか、明示が要るのかどうかを、私は判定しません。冒頭の突き合わせで、幅が1つに決まった行にも「違う」の印を付けてもらったのは、「変わっていないから関係ない」と読んで通り過ぎずに、この号の言葉と見比べる機会を残すためです(ここは私の考えです)。
今日の5行は、施行規則の第4条の2第3項から取りました。この項は、法律の第5条の3第4項(上で引いた、明示のしかたの項)が「厚生労働省令で定める事項」としているものを並べた規定です。書き出しは、ただし書きまで含めてこうです。
法第五条の三第四項の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。ただし、第二号の三に掲げる事項にあつては期間の定めのある労働契約(当該労働契約の期間の満了後に当該労働契約を更新する場合があるものに限る。以下この項において「有期労働契約」という。)に係る職業紹介、労働者の募集又は労働者供給の場合に限り、第八号に掲げる事項にあつては労働者を派遣労働者(労働者派遣法第二条第二号に規定する派遣労働者をいう。以下同じ。)として雇用しようとする場合に限るものとする。
ただし書きが限定を付けているのは、第二号の三と第八号です。どちらも、今日の5行には入れていません。5行と号の対応は、次のとおりです。
| 今日の5行(私のまとめ) | 施行規則第4条の2第3項の号(言葉のまま) |
|---|---|
| ① 仕事の内容 | 一 労働者が従事すべき業務の内容に関する事項(従事すべき業務の内容の変更の範囲を含む。) |
| ② 契約の期間 | 二 労働契約の期間に関する事項 |
| ③ 働く場所 | 三 就業の場所に関する事項(就業の場所の変更の範囲を含む。) |
| ④ 始業・終業の時刻と休日 | 四 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間及び休日に関する事項 |
| ⑤ 賃金の額 | 五 賃金(臨時に支払われる賃金、賞与及び労働基準法施行規則(昭和二十二年厚生省令第二十三号)第八条各号に掲げる賃金を除く。)の額に関する事項 |
表の「施行規則第4条の2第3項の号(言葉のまま)」の列を見ると、5行の呼び名が短くしてあることが分かります。見比べるときは、次の3点も同じ行に入れてください(ここは私の補足です)。
号は全部で11あります(一・二・二の二・二の三・三・四・五・六・七・八・九)。今日の5行に入れていないのは、二の二(試用期間)・二の三(期間を定めた契約を更新する場合の基準)・六(健康保険・厚生年金・労災保険・雇用保険の適用)・七(雇おうとする側の氏名または名称)・八(派遣労働者として雇おうとする旨)・九(受動喫煙を防ぐための措置)の6つです(かっこ内は私の短い呼び名です)。試用期間を設けている会社は、二の二を足して6行で見てもかまいません。11の号を全部並べた確認リストは、先ほどの既刊に載せています。
採用ページに何を書くか|求職者が探しているのに、載っていない項目では、募集の場面は職業安定法、契約を結ぶ場面は労働基準法と、参照する条文の入口が分かれていることを書きました。今日の第5条の3第3項は、その職業安定法の中にあり、時点を「労働契約を締結しようとする場合」と書いています。募集のときに示した内容が、契約の前の段階で違ってくる——その継ぎ目について、職業安定法の側にも定めがある、ということです。この記事は、既刊の整理を置き換えるものではありません(この位置づけは私の読み方です。契約を結ぶ場面の労働基準法の定めとの関係は、専門家にご確認ください)。
違う行が見つかったことをもって、良い・悪いを決めないでください。どの型に当たるか、明示が要ったか、明示できていたかは、私は判定しません。「違う」と「?」の行のメモ(どの行が、どう違って、どの型に近いと思ったか)を持って、社会保険労務士など該当分野の専門家か、労働局でご確認ください。
求人票は、会社が求職者に最初に出す約束です。その約束と、実際に結ぶ契約とのあいだに違いがあれば、応募した人の会社への信頼に響きます(ここは私の見立てです)。だから今日の突き合わせは、過去の採用を責めるためのものではありません。次の募集を出す前に、その違いに自分で気づいておくためのものです。
なお、国の指針「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、特定地方公共団体、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針」(平成27年厚生労働省告示第406号)は、青少年の募集・採用について、この場面の定めを置いています。その中に、学校を卒業する見込みの方(新卒等)についての別の定めもあります。若い方・新卒の方を採る会社で「違う」「?」の行があったときは、この指針のこともあわせて専門家にお尋ねください。内定のときと入社のときの両方に書面を渡していれば、両方を並べておくと、専門家に見せやすくなります(私の見立てです)。
私は採用そのものを代行しません。求人票や労働条件通知書・雇用契約書を作ったり直したりすることも、違いがどの型に当たるか・明示が要るかの判定もしません。それは社会保険労務士など該当分野の専門家や、労働局の領域です。
今日の突き合わせは、社長ご自身で完結します。費用もかかりません。私に依頼していただく必要はありません。
私が有償のご支援としてお引き受けしているのは、自社サイトの採用ページの構成や、応募までの流れの設計といった、採用の入口の部分です。ここは有償のご支援になります。無料でお受けしているのは、次にご案内する初回面談(90分程度)までです。
無料相談はこちらのお問い合わせフォームからお知らせください。初回面談(90分程度)で伺うのは、現状とお困りごとです。そのうえで、新たな投資が不要と判断すれば、その旨を誠実にお伝えします。実際に手を動かす部分をご依頼いただく場合は、有償のご支援としてお引き受けします(たとえば、自社サイトの採用ページの構成や、応募までの流れの設計といった、自社サイト側の作業。求人票・募集要項や募集の投稿文など、募集に載せる文章そのものの作成と、募集を代わりに出すことは含みません)。
※本文の囲みの引用は、上記の条文からその言葉のまま引いています(「あつて」などの表記も原文どおりです)。条・項・号の番号のあとの空白と改行は、読みやすさのために入れたものです。表の「条文の言葉」の列は、同じ条文の一部をそのまま抜き出したもので、「…」は省略した箇所です。
※次のものは私の言葉であり、条文の言葉ではありません:「今日の5行」とその呼び名/4つの型の言い換え/号のかっこ内の短い呼び名/賃金の幅の例(架空の例)。
※本記事は、御社の採用で明示が必要かどうか、明示が足りているかどうかを判定・保証するものではありません。
※当社は”何に・どう投資するか”の交通整理(マーケティング支援)を担います。労働関係法令や採用手続きの個別判断は社会保険労務士など該当分野の専門家へご相談ください。
※2026年9月25日時点の法令に基づきます。最新はe-Gov法令検索・厚生労働省の公式サイトでご確認ください。