「名前が知られていないから人が来ない」と感じたら、お金をかける前に社名を隠して自社の求人票を読む。厚生労働省の調査で5〜29人の会社に転職した人が選んだ理由の上位4つを問いにし、費用をかけずに確かめる手順と結果ごとの次の一手を書きました。
「うちは名前が知られていないから、人が来ない」——そう感じている社長・採用担当の方へ。求人媒体(求人を載せるサイトや情報誌)の上位プランや、会社を知ってもらうための広告・動画にお金をかける前に、費用をかけずに確かめられることがあります。所要は10分ほどです。
結論から書きます。求職者に「見つけてもらう段階」と、見つけた会社の中から「選んでもらう段階」は、別の段階です。「名前が知られていない」という悩みは、主に見つけてもらう段階の話です。求人票が受け持つのは、選んでもらう段階です。そして、選んでもらう段階の決め手の多くは、社名が無くても文章に残ります。
数字で見ます。厚生労働省が2026年9月25日に公表した「令和7年転職者実態調査」によると、5〜29人の会社(支店や工場ごとではなく、会社全体の人数で分けたもの)に転職した人が、その会社を選んだ理由(3つまで選ぶ)に「会社の規模・知名度のため」を挙げた割合は4.9%でした。上位の4つは次のとおりです。
ただし、この数字は「入った人が、その会社を選んだ理由」です。応募する会社をそもそもどうやって見つけたか——見つけてもらう段階——は、この調査からは分かりません。ですから「知名度は関係ない」とは言えません。パートなど短時間で働く人と新卒は、この調査に入っていません。また、25〜29歳の転職者(会社の大きさを問わない)では、知名度を挙げた割合が12.3%と、転職者全体の7.1%より高くなっています。この数字も、後半で隠さずに扱います。
いま求人を出している会社、または出したことがある会社は、この1手へ進んでください。今は求人を出していない会社や、求人票が見つからない会社には、後半の「求人票が手元に無い方へ」に、記憶だけでできる1手を用意しています。
自社の求人票を1件用意し、社名・ロゴ・社名が写った写真を、付箋や手で隠します。残った文章だけを読んで、次の4つに○か×を付けます。上の調査の上位4つを、そのまま問いにしたものです。
判定の物差しは1行です——答えになる言葉を、紙(画面)の上で指で差せるか。差せなければ×。自分が知っていることで補わない。社名は隠せても、書いた側の頭の中にある知識は隠せません。だから、書いてある言葉だけで判定します。
4つとも指で差せたら、今日は求人票を書き直さなくて構いません。選んでもらう段階の材料のうち、上位4つの理由に当たるものは、そろっています。次に確かめるのは、見つけてもらえているか(入口)のほうです。×があった場合も含めて、結果の受け取り方は後半に書きます。
この悩みを持っている会社は、少なくありません。東海の県の数字として、三重県の調査があります。
三重県は、県内の常用の従業員10人以上300人未満の事業所(本社・支店・工場など、働く場所ごとの単位のこと。個人経営などは除く)2,000か所を対象に、2025年7月31日時点の状況を尋ねる調査を行いました。回答期間は同年8月31日から9月30日までで、866か所が回答しています(回答率43.3%)。
その中で、正規従業者(いわゆる正社員)の採用について「応募者数が少なく、採用計画どおりには進んでいない。」と答えたのが330か所です。この330か所に、理由として考えられることを3つまで選んでもらった結果の、上位2つが次のとおりです。
この記事が扱うのは、2位の「認知度」のほうです。1位の「不人気業種」は、この記事では扱いません。どの業種がそう感じているかにも立ち入りません。
選択肢の「(と思っている。)」は、県の統計表・報告書にある選択肢の文言をそのまま写したもので、私の評価ではありません。この330か所のうち44.5%が、この理由を挙げています。多くの会社が、同じ実感を持っているということです。
ここで、2つの調査が何を測っているかを並べます。
| 三重県の調査 | 厚生労働省の転職者実態調査 | |
|---|---|---|
| 誰に聞いたか | 県内の事業所(正社員の採用で応募が少ないと答えた330か所) | 実際に転職した人(全国) |
| 何を聞いたか | 応募が少ない理由として考えられること | 今の会社を選んだ理由 |
| どの段階の話か | 応募が集まるかどうか(主に、見つけてもらう段階) | 入る会社を決めたとき(選んでもらう段階) |
2つの調査は、同じものを測っていません。ですから、2つを並べて「知名度のせいだと思うのは誤り」とは言えません。言えるのは、見つけてもらう段階と、選んでもらう段階は別であること。求人票が受け持つのは後者であること。そして後者の決め手の多くは、社名が無くても文章に残る、ということです。
厚生労働省の「転職者実態調査」は、実際に転職した人に、入った先で理由を尋ねた調査です。会社の大きさ別の表も、政府統計の総合窓口「e-Stat」で公表されています(第29表)。ここでは、支店や工場ごとの人数ではなく、会社全体の人数で分けた区分(統計の用語で「企業規模」)を使います。「うちは小さい会社だから知られていない」という悩みに対応するのは、会社全体の大きさだからです。
| 選んだ理由(調査の選択肢) | 5〜29人の会社に転職した人 | この記事の問い |
|---|---|---|
| 自分の技能・能力が活かせるから | 38.1% | ① |
| 仕事の内容・職種に満足がいくから | 35.8% | ② |
| 労働条件(賃金以外)がよいから | 22.0% | ③ |
| 転勤が少ない、通勤が便利だから | 21.1% | ④ |
| 賃金が高いから | 16.5% | 5番目。今回は上位4つに絞りました |
| 会社の規模・知名度のため | 4.9% | — |
3つまで選べる設問なので、合計は100%を超えます。
比べるために、数字をもう2つ置きます。転職者全体(会社の大きさを問わない)では、「会社の規模・知名度のため」は7.1%でした。1,000人以上の会社に転職した人では13.0%で、5〜29人の会社(4.9%)より高い数字です。
賃金は5番目(16.5%)でした。賃金が大事でない、という意味ではありません。今日の1手を上位4つに絞ったため、外しただけです。
社名を隠すのは、社名に頼らずに読むための仕掛けです。画面で隠しにくければ、社名に目をやらずに読み進めても構いません。隠しきれなくても、4つの問いに答えられれば、この1手は成り立ちます。
判定の物差しは、4つとも同じです——答えになる言葉を、紙(画面)の上で指で差せるか。差せなければ×。自分が知っていることで補わない。書いた側には、書いていないことまで読めてしまいます。だから、指で差せるかどうかで決めます。
今日の1手は、○か×を付けたところで終わりです。その先は、次の章で結果ごとに書きます。
今日は求人票を書き直さなくて構いません。選んでもらう段階の材料のうち、上位4つの理由に当たるものは、そろっています。次に確かめるのは、見つけてもらう段階——求職者に見つけてもらえているか、です。ただし、4つとも○だったから入口に問題がある、という意味ではありません。次に確かめる場所が1つ決まった、ということです。
ハローワークにいま求人を出している会社なら、求人は出ているのに、条件で絞ると消えていませんか|ハローワーク検索に、求職者と同じように条件で絞って、自社の求人が一覧に残るかを確かめる手順を書いています。ハローワーク以外で募集している会社は、自社の採用ページを、求職者と同じ条件で開く|見るのは2点だけの後半に、「自社名 求人」で検索して、求職者が最初に目にするものを確かめる手順を書いています(採用ページが無い会社にも使えます)。
今は求人を出していない会社は、次に求人を出したときに、この入口を確かめてください。それまでは、後の「求人票が手元に無い方へ」の1行が使えます。
×の問いの答えを知っているのは、御社です。毎日どんな作業をするのか、車で通えるのか——社内の誰かが、もう知っています。それを社内で、知らない人が指で差せる言葉に書き出すこと自体に、費用はかかりません。
ただし、その言葉を求人票に書き足したからといって応募が増える、とは私には言えません。この記事で言えるのは、選んでもらう段階の材料のうち、上位4つの理由に当たるものがそろう、というところまでです。
もう1つ。×は、求人票を書いた人の評価ではありません。この点検が見ているのは、書いた人ではなく、紙(画面)の上の言葉です。×が付きやすい構造があります。仕事をよく知っている人が書くと、知っている人には伝わる文章になります。書いた人は、その時点で分かる言葉で書いています。そして、その求人票があるから、今日この点検ができます。過去に出した求人票は、次の一手の土台です。
今は求人を出していない会社も、ここから始められます。記憶だけでできる1手です。直近で入った人(いなければ、面接に来た人)が、面接で最初に聞いてきた質問を、1つ思い出して書いてください。名前など、誰のことか分かる情報は書きません。書くのは質問だけです。
その質問は、求人票が答えていなかったことの手がかりになります。たとえば「車で通えますか」なら④、「未経験でも大丈夫ですか」なら①、「どんな作業ですか」なら②に近い質問です。ただし、手がかりであって、答えではありません。その質問が出た理由は、ほかにもあり得ます。
4つとも○だった会社にも、この1行は役に立ちます。○を付けた問いと、実際に最初に聞かれた質問が食い違っていないかを、自社の1件で確かめられるからです。
求人媒体の上位プラン、広告、会社を紹介する動画——知名度を上げる施策が役に立つ場面はあります。この記事は、それらを否定する話ではなく、順番の話です。選んでもらう段階の材料のうち、上位4つの理由に当たるものがそろっているかを先に確かめておけば、お金を使うかどうかを、見つけてもらう段階の問題として切り分けて考えられます。
私は独立する前の15年間、製造・生産管理・営業の現場で働いてきました。現場の仕事は、中にいる人には当たり前すぎて、言葉にされないまま残りやすいものだと、私は考えています。社名を隠して読む、という今日の1手は、その当たり前を、知らない人の目で読み直すための仕掛けです。
外部CMO(社外からマーケティングの責任者を担う立場)として、私は、新しくお金を使う前に、手元にあるものが働いているかを確かめる順番を大事にしています。求人票は、求人を出したことのある会社なら、すでに手元にある資産です。知名度にお金を使うかどうかは、その資産が、選んでもらう段階の材料のうち上位4つの理由に当たるものをそろえているかを確かめてからでも、遅くありません。
ここまでの1手は、社長ご自身が、今日、費用をかけずにできることです。私は求人票の文章を代わりに書く立場でも、募集を代わりに出す立場でもありません。私の手が要るのは、その先——求人票の外側、つまり採用ページ・写真・短い動画・求人から採用ページへの道筋で、仕事の中身や通い方をどう見せるかを設計する、その部分です。ここは有償のご支援になります。無料でお受けしているのは、次にご案内する初回面談(90分程度)までです。
知名度にお金をかけるかどうかで迷っている方は、無料相談はこちらのお問い合わせフォームからお知らせください。初回面談(90分程度)で伺うのは、現状とお困りごとです。そのうえで、新たな投資が不要と判断すれば、その旨を誠実にお伝えします。実際に手を動かす部分をご依頼いただく場合は、有償のご支援としてお引き受けします(たとえば、求人票の外側——採用ページ・写真・短い動画・求人から採用ページへの道筋——で、仕事の中身や通い方をどう見せるかを設計する作業。求人票・募集要項や募集の投稿文など、募集に載せる文章そのものの作成と、募集を代わりに出すことは含みません)。
この記事の数値は、2026年9月時点で公表されている数値です。最新は公表元でご確認ください。本文の表は、下の公表資料を基に、この記事のために作成したものです。