現場から見た経営とお金の使い方

自社の支払いは何日後ですか|締め日ではなく受け取った日から数える

この記事の要点

取引先への支払いは、締め日ではなく「納品を受け取った日」から数えます。フリーランス法に資本金の基準はなく、義務を負う側・守られる側それぞれに条文の線があります。自社の支払管理表で今日できる数え方を、条文の逐語とあわせて整理しました。

取引先への支払いを「月末締め・翌月末払い」で回している会社は多いと思います。先に結論を書きます。「うちは従業員が数名の小さな会社だから、支払いの期限を決めた法律なんて関係ない」——この前提は、少なくとも一つの法律については成り立ちません。

その法律が、2024年11月1日施行の「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(通称・フリーランス法)です。この法律の条文には、資本金の基準がありません。「資本金」という言葉が一度も出てこないからです。会社の規模ではなく、条文が引いた別の線で対象が決まります。

ただし、誰が義務を負うのかには条文上の線があり、しかもその線は「払う側」と「受け取る側」の両方に引かれています。片側だけを見て動くと、対象外の取引まで支払いを前倒しして、自社の資金繰りを苦しくします。だから今日は、まず数えるところから始めてください。

今日やる1手:支払管理表で「2つの日付の差」を数える

やることは1つ。自社の支払管理表(買掛金の一覧や振込予定表など。無ければ通帳やネットバンキングの振込履歴でも構いません)を開き、一人で仕事を受けている取引先への支払いを数件選んで、次の2つの日付の差を数えてください。

  • ①納品(成果物・データ・役務の提供)を受け取った日
  • ②実際にお金を振り込んだ日

ここが一番間違えやすい。数え始めるのは「締め日」でも「発注した日」でもありません。「受け取った日」です。条文は「……給付を受領した日……から起算して六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。」と書いています。「六十日以内」で文が終わっていないところが大事です。発注から納品まで2か月かかる仕事なら、時計が回り始めるのは2か月後です。

①はどの紙に書いてあるか。支払管理表に「納品日」「受領日」の欄があれば、そこを見てください。無ければ、納品書や検収書の日付を見ます。データやメールで受け取った仕事なら、そのメールやチャットが届いた日で数えます。請求書の発行日や締め日をそのまま使うと、実際より短く出ます。そして、どれも残っていなければ——それが今日の収穫です。「受領日を記録していない」という発見です。条文が数え始めるのはこの日なので、記録が無ければ、自社でも確かめられません。次に納品を受けたとき、その日付を1つ書き留めるところから始めてください。

数えるだけなら、相手も承認も要りません。どの場合も、今日のうちに答えが出ます(記録が見つからなかった場合も、それが答えです)。

数えて60日を超えていた取引先があれば、会社名と日数だけ書き出してください。その取引が法律の対象に当たるかどうかを分ける条文の線は、このあとの章に書きます。ただし、個別の取引が当たるかどうかも、支払条件をどう直すかも、この記事では判断できません。行き先は、この記事の最後に書きます。

60日に収まっていた会社と、日付が見つからなかった会社にこそ、持ち帰ってほしいこと

収まっていたなら結構です。そして、受領日が見つからず測れなかった方も、ここは読んでください。自社の支払いのルールそのものから、おおよその見当がつくからです。ただ、そこで終わらせないでください。同じ支払いルールでも、いつ受け取った分かで日数は変わります。締め日で数えているかぎり、この差は見えません。

支払いのルール 月の頭に受け取った分 月末に受け取った分
月末締め・翌月末払い 58〜61日 28〜31日
月末締め・翌々月末払い 88〜91日 59〜62日

(2026〜2028年の全月で計算)「月末締め・翌月末払い」は、月の頭に受け取った分が60日の線に貼り付いています。31日ある月が2つ続く回——7月分と12月分——だけ、61日になります。今回収まったのは、余裕があったからではなく、その月がたまたま短かっただけかもしれません。1回で終わらせず、31日の月が2つ続く回も確かめてください。

なお、上の日数はカレンダーで単純に引き算した日数です。条文の「起算して」を、受け取った日そのものを1日目として数えるのかどうかで1日ずれます。60日前後の案件は、自社で白黒をつけず、弁護士など専門家にご確認ください。私は法律の解釈を断定できる立場ではありません。

対象かどうかは「払う側」と「受け取る側」の両方で見る

60日の支払期日を定めるのは第四条です。働くのは、払う側と受け取る側の両方が条文の線の内側にいるときだけ。一方でも外れれば発動しません。

どちらの側を見るか 条文が引いている線(第二条)
払う側=自社
(第二条第六項「特定業務委託事業者」=業務委託事業者のうち、次に当たるもの)
一号「個人であって、従業員を使用するもの」
二号「法人であって、二以上の役員があり、又は従業員を使用するもの」
受け取る側=相手
(第二条第一項「特定受託事業者」=業務委託の相手方である事業者のうち、次に当たるもの)
一号「個人であって、従業員を使用しないもの」
二号「法人であって、一の代表者以外に他の役員……がなく、かつ、従業員を使用しないもの」

読み替えます。

  • 従業員を1人でも雇っている個人事業主は、法人でなくても「払う側」の線の内側です。(第二条第六項第一号)
  • 役員が2人以上いる法人は、従業員がゼロでも内側です。(同第二号)
  • 反対に、相手が従業員を雇っているフリーランスや、代表者以外にも役員がいる法人、従業員を雇っている法人なら、その取引に第四条は及びません(第二条第一項)。
    ここで言えるのは第四条についてだけです。
    なお、自社が「払う側」の線の外側(代表者1人だけの法人・従業員を雇っていない個人事業主)でも、相手が上の線の内側なら、第三条の明示義務は負います(後述)。

ただし、相手が線の内側かどうかは、外から見ても分かりません。従業員を雇っているか、ほかに役員がいるかは、相手の内部の話です。この2つを確かめる方法は1つで、相手に伺うことです。「支払いの期日を見直したいので」と理由を添えて、「ご自身のほかに、従業員の方や役員の方はいらっしゃいますか」と1問だけ聞けば足ります。伺えていないうちは、支払いの前倒しを決めないでください。今日は、60日を超えていた取引先を書き出すところまでで構いません。

そして、返事をもらえたあとにも、ひとつ注意があります。上の判定を分けているのは「従業員を使用する/しない」という一語ですが、「従業員を使用する」の数え方によって、判定は変わります。短い時間だけ来てもらっている方を含むのかどうかは、条文の文字だけでは決まりません。短時間の方がいる場合は、自社側でも相手方でも自分で白黒をつけず、弁護士など専門家か、公正取引委員会の相談窓口でご確認ください。ここを読み違えると、本当は対象なのに長い支払条件を続けてしまうことも、対象ではないのに急いで前倒ししてしまうことも起こります。

条文には、こう書いてあります

ここからは根拠です。逐語で引きます。なお、公正取引委員会はこの法律を「フリーランス・事業者間取引適正化等法」と呼んでいます。条文そのものには「フリーランス」という言葉が一度も出てきません。条文の言葉は「特定受託事業者」です。

第四条第一項(報酬の支払期日)

「特定業務委託事業者が特定受託事業者に対し業務委託をした場合における報酬の支払期日は、当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日(第二条第三項第二号に該当する業務委託をした場合にあっては、特定受託事業者から当該役務の提供を受けた日。次項において同じ。)から起算して六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。」

条文の「給付」は、委託した物品や成果物のことです。役務(サービス)の提供を委託した場合は、その提供を受けた日が起算点になると、同じ条文の中に書かれています。

読みどころは3つです。①検査(検収)をするかどうかは関係ない。②起算点は受領した日。③「六十日以内」だけでなく「かつ、できる限り短い期間内において」とも書いてある——つまり条文は、60日ぎりぎりを推奨してはいません。

第四条第二項(決めなかったとき/60日を超えて決めたとき)

「前項の場合において、報酬の支払期日が定められなかったときは特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日が、同項の規定に違反して報酬の支払期日が定められたときは特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日から起算して六十日を経過する日が、それぞれ報酬の支払期日と定められたものとみなす。」

ここは実務に直結します。支払期日を決めていなければ「受領した日」が支払期日とみなされ、60日を超える期日を決めていた場合は「受領した日から起算して六十日を経過する日」が支払期日とみなされる、という条文です。契約書や注文書にどう書いてあるかとは別に、法律の側が期日を置き換える、という構造になっています。

再委託は「三十日」=まったく別の起算点

他の事業者から受けた仕事の一部を再委託した場合には、第四条第三項が別の期日を定めています。こちらは「元委託支払期日から起算して三十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。」と書かれています(一定の明示を行った場合に限られます)。60日と30日は起算点も日数も違います。混ぜないでください。

「60日を過ぎたら罰金」ではありません

ここは、よく縮めて語られてしまうところです。条文をたどると、順序はこうなっています。

  • 支払義務(第四条第五項)に違反したと認めるとき、公正取引委員会は勧告ができる(第八条第二項)
  • 勧告を受けた者が正当な理由なく措置をとらなかったとき、公正取引委員会は命令ができる(第九条第一項)
  • 命令をした場合、公正取引委員会はその旨を公表することができる(第九条第二項)
  • その命令に違反したときに、五十万円以下の罰金(第二十四条第一号)。法人にも刑を科す両罰規定がある(第二十五条)

つまり、支払いが60日を超えたその瞬間に罰金がかかる、という構造ではありません。勧告・命令という段階が先にあります。「罰金が怖いから」ではなく、「取引先との関係を長く続けたいから」を理由に見直すほうが、実務としても筋が通ると思います。

第三条・第四条・第五条は、主語が違います

この法律でつまずきやすいのが、義務ごとに主語(誰が負うか)が違う点です。ここを混ぜると読み違えます。

条 何の義務か 誰が負うか
第三条 取引条件の明示(給付の内容・報酬の額・支払期日などを、直ちに書面または電磁的方法で明示する) 業務委託事業者(第二条第五項=特定受託事業者に業務委託をする事業者)
第四条 60日以内の支払期日と、支払義務 特定業務委託事業者(第二条第六項)
第五条 受領拒否・報酬の減額・買いたたき(同種・類似の内容の給付に通常支払われる対価に比べ、著しく低い報酬の額を不当に定めること)などの禁止/不当な利益提供の要請ややり直しの禁止 特定業務委託事業者+業務委託の期間が一月以上のもの(契約の更新で一月以上続くものを含む)

実務上、大事なのは次の2点です。

  • 第三条の明示義務は、より広い「業務委託事業者」が主語です。従業員がおらず代表者1人だけの法人や、従業員を使わない個人事業主は(ここでも「従業員を使用する」の数え方は先に書いたとおりです)、第四条・第五条の線の外側でも、相手が第二条第一項の「特定受託事業者」であれば、第三条の明示義務は負います。「うちは対象外だ」と読み飛ばさないでください。なお、第三条第一項には但し書きがあり、内容が定められないことにつき正当な理由がある事項は、その時点での明示を要しないとされています(条文は「当該事項の内容が定められた後直ちに」明示する、と続きます)。何が「電磁的方法」にあたるかは、公正取引委員会規則で定められています。
  • 第五条には期間の制限があります。第五条第一項の「政令で定める期間」は、施行令(令和六年政令第二百号)第一条が定めています。条見出しは「法第五条第一項の政令で定める期間」で、本文は「……第五条第一項の政令で定める期間は、一月とする。」です(冒頭で法律の名称を示している部分を「……」で省きました)。つまり第五条の禁止行為は1か月以上の業務委託に限られます。そのうえで、この「1か月以上」を数えるのは、1本の契約の長さだけではありません。第五条第一項は、期間の限定に「当該業務委託に係る契約の更新により当該政令で定める期間以上継続して行うこととなるものを含む」という括弧書きを付けています。契約は短くても、更新によって1か月以上「継続して」行うことになるのであれば、含まれることがあります。どこまでが「更新により継続して行うことになるもの」に当たるかは、契約の切れ目や依頼のしかたで変わり得ます。私は個別の当てはめを判定できる立場にありません。ここは条文の言葉のまま載せます。なお、第三条(明示)と第四条(60日)には、この期間の制限はありません。

公正取引委員会が公表している数字は、母数を分けて読む

公正取引委員会は2026年6月10日に、令和7年度(2025年4月〜2026年3月)の運用状況を公表しています。数字だけを切り出すと誤読しやすいので、どの数字が、どの母数の中の数字なのかを分けて書きます。

  • 令和7年度に処理した違反被疑事件は1,597件。このうち1,552件について、勧告または指導の措置を講じた。
  • その内訳は勧告10件、指導1,542件。
  • この措置を違反行為の類型別に数え直すと、全体で2,727件。そのうち最も多いのが「期日における報酬の支払義務違反」の1,135件(違反行為の類型別件数の合計の41.6%)、次いで取引条件の明示義務違反1,126件(同41.3%)、買いたたき250件(同9.2%)。

この食い違いについては、公正取引委員会自身が注記しています。第3表に付いている注を、2つとも原文のまま引きます。

(注1)1つの事件において複数の違反行為類型について勧告又は指導を行っている場合があるため、違反行為の類型別件数の合計と第1表の「措置」の件数(「勧告」及び「指導」の合計件数)とは一致しない。
(注2)取引条件の明示義務違反については、取引条件の不明示のほか、一部の事項の明示不備も含まれる。

注2は、上に挙げた1,126件の読み方にかかります。「取引条件の明示義務違反」は、まったく明示していない場合だけの数字ではなく、一部の事項の明示が足りない場合も含んだ数字です。

つまり、1,542という数字と1,135という数字は母数が違います。1,542は「指導」という措置の件数。1,135は「2,727件」を分母とする類型別の内訳です。この2つを割り算しても、意味のある数字は出てきません。

もう1つ。これらはいずれも「社数」ではありません。同じ資料の中で、措置件数は「勧告又は指導を行った事件の件数をいう」と定義されています。これを「◯◯社が指導を受けた」と読み替えるのは誤りです。数字を社内資料や商談で引くときは、「件」を「社」に置き換えないでください。私は、母数の違う数字を並べたり割ったりしないことを、自分の決まりごとにしています。

これは「払っていない会社が悪い」という話ではありません

ここまで条文と数字を並べましたが、この記事は、支払いが遅れている会社を責めるために書いていません。支払いサイト(納品してから入金されるまでの期間のこと)は、多くの場合、悪意で決まっているものではないからです。経理の締めの流れ、銀行の振込日、前任者から引き継いだ慣行——そういうものが、誰も疑わないまま何年も残っているだけ、というのが実際のところだと思います。

実際、令和7年度に公正取引委員会が講じた措置1,552件のうち、1,542件は「指導」でした。是正を求めて直してもらう、という段階の対応が大半だということです。

私自身、従業員を使わない個人事業主です。条文の言葉でいえば「特定受託事業者」にあたります。つまり私も、この法律では受け取る側に立つことがあります。両方の側が見えるからこそ書きますが、受け取る側に立つ私にとって一番ありがたいのは、早く払ってもらうことそのものより、「いつ入るかが読めること」です。期日が読めれば、こちらも仕入れや稼働の計画を立てられます。そして払う側にとっても、これは相手のためだけの話ではないと思います。支払期日が読める会社は、次も仕事を受けてもらいやすい——ここは私の見立てですが、人が足りない時代には効いてくるところだと考えています。

東海のものづくりや建設の現場でも、次のような形は当てはまり得ます。あくまで例です。ご自身の取引に置き換えて読んでみてください。

  • 図面の清書や仕様書・資料の作成を、一人でやっている方に単発で頼んでいる
  • ホームページの更新やチラシのデザインを、毎月決まった額で個人の方に頼んでいる
  • 現場の応援や配送を、法人化していない個人の方に継続的に頼んでいる

やることが多すぎて手が回らない、という感覚はよく分かります。経営の課題は数え上げればきりがありません(この点は経営課題は31項目。全部やろうとするから全部止まるにも書きました)。だからこそ今日は、数えるところまでで構いません。

私にできること、できないこと

ここまで読んで、「では、うちの支払条件をどう組み替えればいいのか」「契約書をどう直せばいいのか」と思われたかもしれません。そこは私の担当ではありません。私は弁護士でも、社会保険労務士でも、行政書士でもありません。契約書や覚書を作ること、支払条件の是正を代わりに進めること、法律相談をお受けすること——いずれも、私はできません。その部分は、弁護士や、公正取引委員会が設けている相談窓口へお願いします。

私がお手伝いできるのは、その手前です。会社のボトルネック(詰まっている一番の課題)がどこにあるのかを数字で切り分けて、何に投資して何に投資しないかの順番を決めるところ——マーケティングの交通整理の部分です。ここは有償のご支援になります。無料でお受けしているのは、次にご案内する初回面談(90分程度)までです。

無料相談はこちらのお問い合わせフォームからお知らせください。初回面談(90分程度)で伺うのは、現状とお困りごとです。

初回面談はオンラインで90分程度。こちらから契約を急かしたり、その場で契約をお願いしたりすることはしません。新たな投資が不要と判断すれば、その旨を誠実にお伝えします。

実際に手を動かす部分(この記事でいえば、支払いや取引の数字を見ながら、何に投資して何に投資しないかの順番を決めていくところ。契約書の作成や、法令の是正の代行は含みません)をご依頼いただく場合は、有償のご支援としてお引き受けします。

当社は“何に・どう投資するか”の交通整理(マーケティング支援)を担います。法令の個別の判断は、弁護士など該当分野の専門家や、公正取引委員会の相談窓口でご確認ください。

出典と、時点について

本記事の条文および数値は、2026年9月11日時点で確認したものです。法令は改正され、統計は毎年度更新されます。最新の内容は、上記の公表元でご確認ください。個別の取引が法律の対象になるかどうかの判断は、この記事では行えません。弁護士など、その分野の専門家にご相談ください。

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