採用ページを作り直す前に、直近に入った正社員を新卒と中途で数え、見出し・メニュー・社員紹介がどちらに宛てて書かれているかと並べる手順です。愛知と三重の事業所調査を物差しに、ずれの有無と、宛先の点で今お金を使うかの判断を持ち帰れます。
「若い人に来てほしい」「新卒を採りたい」——そう考えて、採用ページの作り直しや、新卒向けの手を検討している社長・採用担当の方へ。その願いを否定する記事ではありません。お金を使う前に、机の上で確かめられることが1つあります。
結論から書きます。採用ページを作り直す前に、直近に入った正社員が「新卒」か「中途」かを数え、自社の採用ページの見出し・メニュー・社員紹介が、どちらに宛てて書かれているか(この記事では「宛先」と呼びます)と並べてください。ここでいう新卒は、学校を卒業してすぐに入った人。中途は、ほかの仕事を経てから入った人です。これは年齢の話ではありません。新卒で入ったか、ほかの仕事を経てから入ったか、の話です。
横に置く物差しがあります。愛知県中小企業団体中央会の調査では、2025年3月に卒業した新卒を採用する計画を立て、実際に採用した事業所(本社・支店・工場など、働く場所ごとの単位)は12.9%。中途は、2024年度に募集をして、2025年7月1日までに実際に採用した事業所が45.1%でした。この調査は、県内の組合(事業協同組合など)を通じて選ばれた組合員企業(組合に加入している会社)だけを対象にしたもので、701事業所が答えています。期間の切り方が違う(新卒は卒業1回分、中途は1年あまり)ので、倍率では比べられません。どちらも事業所の数の割合で、入った人数の割合ではありません。
今日やる1手(15分ほど)
印の物差しは1行です——その言葉が、片方の人にしか意味を持たないか。「新卒採用」「会社説明会」「同期」は〔新卒向け〕、「中途採用」「キャリア採用」「前職」は〔中途向け〕。「研修あり」「未経験歓迎」のように判定できないものは、〔どちらにも〕に入れて構いません。社員紹介は、紹介文に新卒入社か中途入社かが書いてあるかだけを見ます。写真は今日は見ません。写真には宛先が書かれておらず、見た目で判定することになるからです。どこを見るときも、年齢を表す言葉では印を付けません(ほかに手がかりが無ければ、〔どちらにも〕に入れます)。
対象と行き先を先に書きます。ここ3年ほどで正社員が3人以上入っている会社は、この1手へ。0〜2人で比べられない会社と、採用ページが無い会社(求人票の「仕事内容」欄の冒頭3行に同じ印を付けます)は、後半の「比べられないとき・採用ページが無いとき」へ進んでください。採用ページが「採用情報」の1枚だけの会社は、その1枚の見出しと冒頭の数行で、同じ印を付けます。
①で多かった側に宛てた印が1つでもあれば、宛先はずれていません。宛先の点では、今は採用ページの作り直しにお金を使わなくて構いません。1つも無かった場合も、直す範囲は「全部作り直す」ではなく、「多い側の人に宛てた見出しか一言が1つあるか」から考えられます。ただし、宛先を合わせれば応募が増える、とは言えません。この記事で確かめるのは、ずれがあるかどうかだけです。
冒頭の愛知の数字を、もう少し詳しく並べます。三重県の数字もあわせて置きます。どちらも、御社の数を数えたときに横に置く物差しとして使います。
愛知県中小企業団体中央会「令和7年度 労働事情実態調査報告書」(2025年12月)は、県内の事業協同組合などを通じて、地域と業種ごとに選ばれた組合員企業(組合に加入している会社)の事業所が答えた調査です。調査時点は2025年7月1日。対象は1,500事業所で、701事業所が回答しました(回収率46.7%)。
| 答え(報告書の選択肢を要約) | 愛知県全体 | うち10〜29人の事業所 |
|---|---|---|
| 新卒:2025年3月に卒業した人を採用する計画 | ||
| 計画して、実際に採用した | 12.9% | 8.1% |
| 計画したが、採用しなかった | 11.0% | 10.0% |
| 計画しなかった | 76.1% | 81.9% |
| 中途:2024年度に募集し、2025年7月1日までに採用したか | ||
| 募集して、実際に採用した | 45.1% | 38.9% |
| 募集したが、採用しなかった | 9.1% | 14.2% |
| 募集しなかった | 45.7% | 46.9% |
三重県「令和7年度三重県内事業所労働条件等実態調査報告書」は、県内の常用の従業者10人以上300人未満の事業所(個人経営などを除く)2,000か所に、オンラインで尋ねた調査です。調査時点は2025年7月31日で、866事業所が回答しました(回答率43.3%)。
この中に、2024年4月以降の正規従業者(いわゆる正社員。短時間正社員を含む)の採用実績を尋ねた設問があります。複数回答(1つの事業所が2つ以上を選べる形)の設問です。表は、この記事に関わる区分だけを抜き出しています。
| 区分(統計表のまま) | 回答した866事業所 | うち10〜29人の485事業所 |
|---|---|---|
| 高等学校卒の新卒者 | 16.2% | 8.7% |
| 高等専門学校・短大、各種専門学校卒の新卒者 | 11.2% | 7.2% |
| 四年制大学、大学院卒の新卒者 | 14.3% | 10.3% |
| 中途採用(34歳程度までの若年者) | 32.9% | 24.3% |
| 中途採用(35歳以上の中高年者) | 37.3% | 28.9% |
| 採用実績はない。 | 30.0% | 40.0% |
最後に、全国の数字を1つだけ置きます。ここからは、事業所の割合ではなく、入った人の人数の割合です。厚生労働省「令和7(2025)年雇用動向調査結果の概況」(2026年8月31日付)によると、2025年に、パートタイム労働者以外の働き方(調査の用語で「一般労働者」)で入った人(入職者)は4,459.8千人(約446万人)でした。そのうち、入る前の1年間に働いた経験(内職や1か月未満の仕事は数えません)のある「転職入職者」が3,177.3千人(約318万人)で約7割、新卒の「新規学卒者」が886.4千人(約89万人)で約2割です(割合は、公表された人数から計算したものです。残りは、そのどちらにも当たらない人です)。
全国の、常用の労働者5人以上を雇う事業所から無作為に選んだ約1万5千事業所の調査をもとに、全体の姿に近づけるよう計算した数字(推計値)です。東海だけの数字ではありません。
紙を1枚用意して、「新卒」「中途」の2列を作ります。ここ3年ほどの間に入った正社員を思い出し、どちらかの列に、正の字で1本ずつ足していきます。
自社の採用ページを開き、次の3か所だけを見ます。
パソコンとスマホで見え方が違うときや、採用のページを自社サイトの外(就職情報サイトなど)にも持っているときは、どの画面のどのページを見るかを先に1つに決めて、それで通してください。
| 印 | 当てはまる言葉の例 |
|---|---|
| 〔新卒向け〕 | 「新卒採用」「会社説明会」「インターンシップ」「同期」「卒業」「学生の皆さん」 |
| 〔中途向け〕 | 「中途採用」「キャリア採用」「経験者採用」「前職」「転職」「入社日はご相談」 |
| 〔どちらにも〕 | 「研修あり」「未経験歓迎」「先輩の声」「福利厚生」など、どちらの人にも意味を持つ言葉。判定に迷ったものも、ここに入れます |
判定の物差しは1行です——その言葉が、片方の人にしか意味を持たないか。「研修あり」「未経験歓迎」は、学校を出たばかりの人にも、ほかの仕事から移ってくる人にも意味を持ちます。だから〔どちらにも〕です。判定できないものは〔どちらにも〕に入れて構いません。迷って手を止めるより、先に進むほうが、今日の1手には合っています。
社員紹介は、紹介文の中に、新卒で入ったか中途で入ったかが書いてあるかだけを見ます。「新卒で入社」とあれば〔新卒向け〕、「中途で入社」「前職は〜」とあれば〔中途向け〕、どちらも書いていなければ〔どちらにも〕です。
写真は今日は見ません。写真には、だれに宛てたかが書かれていません。写真で印を付けようとすると、写っている人の見た目で判定することになります。それは、今日数えている「新卒で入ったか、ほかの仕事を経てから入ったか」とは別の物差しです。同じ理由で、どこを見るときも、年齢を表す言葉では印を付けません(ほかに手がかりが無ければ、〔どちらにも〕に入れます)。
①の紙と②の印を並べ、①で多かった側に宛てた印が、②に1つでもあるかを見ます。中途が多ければ〔中途向け〕を、新卒が多ければ〔新卒向け〕を探します。新卒と中途が同じ数だったときは、両方の側について見ます。両方の側に印があれば「ずれていません」です。片方の側にだけ印が無いときは、その側の人に宛てた見出しか一言が1つあるか、から考えられます。どちらの側にも無ければ、結果の表の最後の行で受け取ってください。今日の1手は、ここで終わりです。
| 自社の入社者 | ページの印 | 受け取り方 |
|---|---|---|
| 中途が多い | 〔中途向け〕が1つも無い(〔新卒向け〕はある) | ずれています。直す範囲は「全部作り直す」ではなく、「中途の人に宛てた見出しか一言が1つあるか」から考えられます。 |
| 中途が多い | 〔中途向け〕が1つ以上ある | ずれていません。宛先の点では、今は採用ページの作り直しにお金を使わなくて構いません。 |
| 新卒が多い | 〔新卒向け〕が1つ以上ある | ずれていません。宛先の点では、今は採用ページの作り直しにお金を使わなくて構いません。 |
| 新卒が多い | 〔新卒向け〕が1つも無い(〔中途向け〕はある) | 逆向きのずれです。直す範囲は「全部作り直す」ではなく、「新卒の人に宛てた見出しか一言が1つあるか」から考えられます。 |
| どちらでも | 〔どちらにも〕ばかり(〔新卒向け〕も〔中途向け〕も無い) | 「宛先が書かれていない」状態です。やり方を間違えたわけではありません。考えるなら、入社者の多い側に宛てた一言が1つあるか(同じ数なら、両方の側に1つずつあるか)、からです。 |
どの行でも、直せば応募が増える、とは言えません。この記事で確かめたのは、宛先がずれているかどうかだけです。また、「ずれていません」は、宛先の点で今お金を使う理由が見つからなかった、という意味です。採用ページ全体に問題が無い、という意味ではありません。
正社員の入社が0〜2人だった方、採用ページが無い方は、次の章へ進んでください。
0〜2人では、比べる材料として数が少なすぎます。今日は数えるのをやめて構いません。三重県の調査では、10〜29人の事業所の40.0%が、2024年4月以降の正社員の採用について「採用実績はない。」と答えています。
代わりに、「物差し」の章の愛知と三重の表を横に置いたまま、手帳に1行だけ書いて終えてください——「次に正社員が1人入ったら、その人に『入社前に、うちの何を見ましたか』と1つ聞く」。聞くときは、答えるかどうかは本人の自由だと、先に伝えてください。聞いた答えを書き留めるときも、名前は書きません。
そして、「宛先の点では、今は採用ページの作り直しにお金を使わない」という判断を持ち帰ってください。数える材料がそろっていない今は、宛先を理由に作り直す根拠が、まだ手元に無いからです。
求人票の「仕事内容」欄の、冒頭の3行に、同じ3種類の印を付けます。物差しも同じです。そのうえで、①の数と並べてください。
なお、求人票に何が書いてあるか(求職者に選んでもらう材料がそろっているか)を確かめる手順は、知名度にお金をかける前に、社名を隠して自社の求人票を読む|4つの問いに書いています。今日の印付けとは、見る点が違います(あちらは書いてある中身、今日はだれに宛てているかです)。
見出しが分かれていなくても、1手は成り立ちます。その1枚の見出しと、冒頭の数行だけに、同じ3種類の印を付けてください。全部が〔どちらにも〕になったら、結果の表の最後の行(「宛先が書かれていない」状態)で受け取ってください。
「若い人に来てほしい」「新卒を採りたい」という願いを、この記事は否定しません。あきらめてください、とも言いません。言っているのは1つだけです——いま実際に入ってきている人にも、宛てた一言があるか。
新卒採用、採用ページの作り直し、求人媒体(求人を載せるサイトや情報誌)、制作会社への依頼——どれも、役に立つ場面があります。この記事は、それらを否定する話ではなく、順番の話です。直近の入社者とページの宛先を先に並べておけば、何にお金を使うかを、自社の数字から考えられます。
私は独立する前の15年間、製造・生産管理・営業の現場で働いてきました。今は外部CMO(社外からマーケティングの責任者を担う立場)として仕事をしています。
私の見立てはこうです。採用ページは、作った時点で思い描いた読み手に宛てて書かれます。その後、実際に入ってくる人の顔ぶれが変わっても、ページの言葉は作ったときのまま残りやすい。だから、作り直すかどうかを考える前に、まず直近の入社者を数えて、ページの宛先と並べるのがよい、と考えています。
ずれていたとしても、それは、作った時点で思い描いた読み手に宛てて書かれていた、ということだと私は考えています。そして、そのページがあるから、今日こうして宛先を並べられます。
この順番なら、ずれていなかった会社は、宛先を理由に作り直しへお金を使わずに済みます。ずれていた会社も、直す範囲を小さいところから考え始められます。どちらの結果でも、手元に判断が1つ残ります。
ここまでの1手は、社長ご自身が、今日、費用をかけずにできることです。私は採用そのものを代行しません。募集を代わりに出すことや、応募者を集めることを請け負う立場でもありません。また、募集の書き方が法令に合っているかどうかの判断にも、私は立ち入りません(社会保険労務士など、該当分野の専門家の領域です)。
私の手が要るのは、その先——採用ページのどこに、だれに宛てた見出しを置くかの設計と、そのページがどう見られているかを数字で確かめること、その部分です。ここは有償のご支援になります。無料でお受けしているのは、次にご案内する初回面談(90分程度)までです。
数えてみたら、ずれていて手が止まっている方や、気になっている点がある方は、無料相談はこちらのお問い合わせフォームからお知らせください。初回面談(90分程度)で伺うのは、現状とお困りごとです。そのうえで、新たな投資が不要と判断すれば、その旨を誠実にお伝えします。実際に手を動かす部分をご依頼いただく場合は、有償のご支援としてお引き受けします(たとえば、採用ページのどこに、だれに宛てた見出しを置くかを設計する作業や、ページの見られ方を数字で確かめる作業。求人票・募集要項や募集の投稿文など、募集に載せる文章そのものの作成と、募集を代わりに出すことは含みません)。
この記事の数値は、2026年10月時点で公表されている数値です。最新は公表元でご確認ください。本文の表は、下の公表資料を基に、この記事のために作成したものです。愛知県中小企業団体中央会の報告書の選択肢は、言葉を要約して載せています(原文をそのまま転載してはいません)。