「人が採れない」の一部は、来た応募を自社で見送っている場合があります。要件に届かないとき「採用しないことが多かった」62.1%(マイナビ・人事1,357名/従業員3〜50名では67.7%・189名)。必須と歓迎に分ける判定質問7つを置きました。
「人が採れない」——そう感じて、求人媒体を1つ増やそうとしている経営者の方に、その前にひとつだけ確かめていただきたいことがあります。この1年、御社は本当に応募が来なかったのでしょうか。それとも、応募は来ていたけれど、条件に届かないので見送ったのでしょうか。
この2つは、同じ「採れなかった」に見えて、打つ手がまったく違います。前者は入口の話なので、媒体を増やす手はあり得ます。ところが後者だった場合、媒体を増やしても、来た応募を同じ場所でもう一度見送ることになります。有料の媒体を足したぶん、掲載費だけが積み上がります。
①結論:マイナビの調査では、応募者が当初求めていたレベルに達していないと分かった場合、「採用しないことが多かった」は62.1%でした(2025年の中途採用について、採用者が1名以上いた人事担当者1,357名の回答)。前の年は54.4%だったので、7.7ポイント増えています。そして従業員3〜50名の会社では67.7%と、規模が小さいほど高い——つまりこの記事を読んでいる方ご自身が、いちばん当てはまる側にいます。
ここを先に申し上げます。見送るのは、悪いことではありません。小さい会社ほど、1人の採用が合わなかったときの痛手が重い。教える人も、抱える余裕も、大きい会社とは違う。だから慎重になるのは、経営者として正しい判断です。私はそれを否定しません。
問題は「慎重さをどこで効かせるか」です。面接で慎重になるのは、人を見て判断できます。けれど求人票の条件欄で慎重になると、人を見ないまま弾くことになります。——ここだけが違います。
②今日やる1手(5分):いま出している求人票を1枚、画面に出してください。条件欄に並んでいる項目のうち、「これが無いと、入社した初日から仕事にならない」ものだけに丸を付けます。それだけです。仕分けも、書き直しも、今日はしなくて構いません。丸を付けたところで、いったん閉じてください。
丸が付かなかった項目が、「必須」ではなく「歓迎」に移せるかもしれない候補です。判定のしかたは、この記事の後半に質問の形で置きました。ここに書いた仕分けは全部、無料で、社長ご自身の手でできます。読んだうえで、私から何かを買っていただく必要はありません。
③この記事の対象:求人を出していて、応募は多少なりとも来ている会社の経営者の方。とくに「応募はあったが、条件に届かないので見送った」ことが年に1回でもある方は、まっすぐ当てはまります。中途採用(経験のある人の採用)を前提にした話です。
逆に、対象でない方:応募が本当に1件も来ていない会社です。それは入口が詰まっている状態で、この記事の話(出口の見送り)とは別の問題です。その場合は 求人を出しても応募が来ない|求人倍率より先に見るべき数字 のほうが役に立ちます。ここで閉じていただいて構いません。
まず、この62.1%が何を聞いた数字なのかを、そのまま引用します。出典はマイナビ キャリアリサーチLabが2026年3月27日に公開した「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」です。
さらに、募集当初に求めたスキルや経験を満たさない場合、「採用しないことが多かった」割合は62.1%で前年より7.7pt増加しており、企業規模別では従業員数が少ないほど高かった。2025年は要件を下げて採用数の確保を優先するより、要件を満たす人材を厳選する動きが強まった可能性が示唆される。
調査報告書(PDF)に載っている設問文は、次のとおりです。
Q25 直近1年間(2025年)の中途採用についておうかがいします。応募条件として当初求めていた資格やスキルについて、求めるレベルに達していないと分かった場合、採用可否はどうなることが多かったですか。[必要資格や経験・スキル全般]
ここが大事です。62.1%は「採用がうまくいかなかった会社の割合」ではありません。「求めていたレベルに届かない応募者が現れたとき、どうしたか」を聞いた、条件付きの数字です。選択肢は2つで、もう一方は「当初求めていたレベルに満たなくても最終的に採用したケースが多かった」(37.9%)です。
| 従業員規模 | 「採用しないことが多かった」 | 回答者数 |
|---|---|---|
| 3〜50名 | 67.7% | 189名 |
| 51〜300名 | 65.3% | 398名 |
| 301〜1,000名 | 59.3% | 324名 |
| 1,001名以上 | 59.0% | 446名 |
| 全体(2025年) | 62.1% | 1,357名 |
| (参考)全体・2024年 | 54.4% | 1,368名 |
3〜50名と1,001名以上の差は8.7ポイントです。劇的な差ではありません。けれど向きははっきりしていて、小さい会社ほど「見送る」側に寄っています。
| 区分 | 「採用しないことが多かった」 | 回答者数 |
|---|---|---|
| メーカー | 66.8% | 307名 |
| 運輸・交通・物流・倉庫 | 63.2% | 106名 |
| 不動産・建設・設備・住宅関連 | 62.6% | 163名 |
| 流通・小売・フードサービス | 58.3% | 103名 |
| 東海 ※この調査の「東海」=岐阜・静岡・愛知・三重の4県/全体62.1%との差は1.7ポイント・回答138名で、地域差の主張には使えません |
63.8% | 138名 |
ここは慎重に読んでください。東海の63.8%は、全体の62.1%より1.7ポイント高いだけです。回答者は138名で、この差をもって「東海は特に厳しい」と言える強さはありません。私はそこまで言いません。言えるのは「東海だけが例外的にゆるい、ということはなさそうだ」という程度です。
あわせて、この調査の「東海」には静岡県が入っています。私がふだん申し上げる東海(愛知・岐阜・三重)とは範囲が違います。また、この区分は会社の本社所在地ではなく「回答した人の勤務地のある都道府県」で分けられています。
同じ調査に、選考基準そのものの変化も出ています。経験者採用の選考基準を「前年より厳しくした計」は44.7%で前年から5.4ポイント増、「前年より甘くした」は8.6%で2022年以降でいちばん低い水準でした(前年と比較できる1,338名の回答)。
つまり、条件を下げずに厳選する方向は、いま業界全体の流れです。御社の求人票が特別に厳しいわけでも、間違っているわけでもありません。むしろ、失敗を避けたいという真っ当な動機から出ている、自然な反応です。
ただ、ここにひとつだけ構造的な事実があります。「条件を下げない」と決めるのは自由ですが、その場合、辻褄はどこかで合わせないと埋まりません。下げないなら、応募してくる人の数そのもの(応募の母集団)を増やす側——賃金・勤務条件・会社の知られ方——で合わせることになります。どちらもやらずに媒体だけ増やすと、同じ場所で同じ見送りがもう一度起きます。
私は独立前、製造業をはじめ複数の現場で、生産管理や営業に15年たずさわってきました。この話は、現場で毎日やっていたことと、まったく同じ形に見えます。
不良が出て、必要な数が揃わない。このとき材料の投入量を増やしても、歩留まり(投入したうちの良品の割合)が変わらなければ、増えるのは不良の絶対数のほうです。材料費だけが上がります。だから現場では、投入量に手を付ける前に歩留まりを見ます。それが順番です。どの工程で、何の基準で落ちているのかを、先に見にいきます。
採用に置き換えると、こうなります。
| 製造の現場 | 採用に置き換えると |
|---|---|
| 投入量(材料をどれだけ流すか) | 求人媒体の数・掲載期間・広告費 |
| 歩留まり(流したうち何割が良品になるか) | 応募→書類→面接→内定の、各段階の通過率 |
| 受入検査の基準(入ってきた品物を合否判定する物差し) | 求人票の条件欄——ここが厳しいと、工程に入る前に落ちる |
| 後工程で直せる不良/直せない不良 | 入社後に教育で埋まる条件/どうやっても埋まらない条件 |
この最後の行が、必須と歓迎の分かれ目そのものです。後から埋まるものを入口の基準に置くと、本来なら通ったはずの人が、工程に入る前に落ちます。そして——受入検査で落ちたものは、記録に残らない限り、誰の目にも触れません。これが、この詰まりがいちばん見えにくい理由です。
※念のため申し添えます。これは「同じ形の話に見える」という私の翻訳であって、人を材料にたとえる意図はまったくありません。また、この考え方を採用に当てはめてどうなったかという話でもありません。使っていただきたいのは「投入量に手を付ける前に、落ちている場所を見る」という順番だけです。
先に、変わらないことから言います。私は「必須要件を減らせば応募が増えます」とは申し上げません。応募数は、賃金・勤務地・時期・その職種の人がそもそも地域に何人いるかなど、求人票の外側にある要因に大きく左右されます。そこを約束できる立場に、私はいません。
私が言えるのは、構造の話までです。すなわち——条件を「必須」と「歓迎」に分けると、応募の入口で機械的に弾かれる条件の数が減ります。それ以上でも、それ以下でもありません。
そのうえで、実務として変わるところが3つあります。
ここが、この記事の本体です。30分の作業だと思うと、今日はやりません。だから最初の一歩を、はっきり小さく切ります。
丸を付けるだけなら5分です。仕分けも、原稿の書き直しも、媒体への連絡も、今日はしません。丸が付かなかった項目が何個あったか——それだけ分かれば、今日は十分です。
いつもお世話になっております。
現在、貴社の媒体に掲載いただいている当社の求人原稿について、掲載中の最新版をPDFでお送りいただけますでしょうか。社内で応募条件の見直しを検討しており、いま実際に掲載されている文面を確認したいと考えております。
あわせて、その原稿で「必須」として設定している項目と、「歓迎」として設定している項目が、それぞれどれかも教えていただけますと幸いです。
お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
この依頼は、掲載中の原稿を送ってもらうようお願いしているだけです。この段階で、条件を変更する必要はありません。この依頼は、掲載中の原稿を送ってもらうようお願いしているだけです。この段階で、条件を変更する必要はありません。原稿の作り直しをご検討になる場合は、その場で決めずに、いったん持ち帰って社内で決めてください。——原稿を1部もらうことと、原稿を作り直すことは、別の話です。
丸を付け終わって、まだ手が動きそうなら、ここから先です。1項目ずつ、次の質問を当てていきます。
| # | 判定質問 | 「はい」なら |
|---|---|---|
| 1 | それが無いと、法令や安全のうえで、そもそも着任できないか 例:大型自動車第一種免許、フォークリフト運転技能講習修了、電気工事士など |
必須(ここは動かせません) |
| 2 | その条件を持たない人を、過去に一度でも採ったことがあるか | 歓迎へ(必須ではない場面が、自社に既にあったということです) |
| 3 | 入社後3か月の指導で、埋められるか | 歓迎へ(後工程で直せるものを、入口の検査基準に置かない) |
| 4 | 社内に1人でもできる人がいれば、業務は回るか | 歓迎へ(全員が持つ必要はありません) |
| 5 | 書類だけでは判定できず、会って話さないと分からないか 例:人柄、伝え方、続けられるかどうか |
条件欄から外し、面接で見る(書類では判定できないうえ、応募前に自己判断で辞退される方が出ることがあります) |
| 6 | なぜその条件を書いたのか、社内の誰かが説明できるか——できない | いったん歓迎へ(前回の原稿から引き継がれたままかもしれません) |
| 7 | 「経験◯年以上」を、「◯◯の作業を一人でできること」に書き換えられるか | 書き換える(年数は経験の量であって、できることの中身ではありません) |
仕分けの原則は、1行で言えます。
必須は「無いと初日から仕事にならない」か「法令・安全上、着任できない」の2つだけ。それ以外は、いったん全部を歓迎に置く。
置いてみて、それでも必須に戻したい項目が出てきたら、戻して構いません。大事なのは、戻すときに理由を1行書けるかどうかです。書けない条件は、たぶん必須ではありません。
同じ報告書に、応募者に求めていた項目の順位が上位8項目まで出ています(採用者が1名以上いた1,357名のうち、その項目を求めていた人の割合)。上位5つは、こうです。
そして、その項目を求めていた人を母数に「求めていたレベルに満たない場合は採用しないことが多かった」と答えた割合を見ると、この上位8項目の中でいちばん譲られていなかったのは「同じ業種の経験年数」63.6%と「コミュニケーション能力」62.8%でした。この2つは、上位8項目の中で唯一、6割を超えています。
ここで私が引っかかるのは「業種」のほうです。「職種」の経験はその仕事ができるかどうかですが、「業種」の経験はその業界を知っているかどうかです。業界の知識は、入社後に覚えられる部類のものが多い——にもかかわらず、この調査ではいちばん譲られていない項目のひとつになっています。
ただし、なぜそうなっているのかは、この調査からは分かりません。業界特有の商習慣が重い仕事なら、業種経験が本当に必須ということもあり得ます。これは私の見立てにすぎません。それでも——御社の求人票の必須欄に「同業界での経験」が入っているなら、そこは上の質問3(3か月の指導で埋まるか)を当ててみる価値のある1項目だと、私は思っています。
上の一覧で3位に入っていた「年齢が、希望範囲内であること」については、ここで必須・歓迎の仕分けをする前に、確認していただきたい場所があります。
募集・採用における年齢の扱いは、法律に定めがあります。労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)の第九条は、次のとおりです(e-Gov法令検索・施行日2026年4月1日時点の条文)。
(募集及び採用における年齢にかかわりない均等な機会の確保)
第九条 事業主は、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められるときとして厚生労働省令で定めるときは、労働者の募集及び採用について、厚生労働省令で定めるところにより、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。
条文が「厚生労働省令で定めるところにより」と書いているとおり、具体的な範囲や例外は省令で決まっています。個別の求人票について、その書き方が問題ないかどうかを判断するのは私の役割ではありません。私は社会保険労務士でも弁護士でもなく、その判断をする立場にありません。
ですので、年齢の条件については、求人を出しているハローワークの窓口か、顧問の社会保険労務士へご確認ください。私がこの記事でお伝えできるのは、「他の条件と同じノリで必須欄に書く前に、一度確認する場所がある」ということだけです。
仕分けが終わったら、最後にひとつだけ習慣を足してください。応募を見送るたびに、3列だけ書きます。
| 日付 | どの条件で見送ったか | その条件は必須か歓迎か |
|---|---|---|
| 8/20 | 同業界での経験が無かった | 歓迎(のはず) |
| 9/3 | 同業界での経験が無かった | 歓迎(のはず) |
紙でも、スマートフォンのメモでも構いません。これを1か月続けると、「同じ1つの条件で、何人を見送ったか」が数字になります。
同じ条件で3人以上を見送っているなら、その条件は、いま媒体費より高くついている可能性があります。——ここではじめて、「その条件を必須のままにしておくか」を、感覚ではなく数字で決められるようになります。これは、私が何かをしなくても、御社の中だけで完結します。
求人票そのものに何を書くか——事実をどう並べるかについては、求人票は、AIに書かせない|募集する会社が先に作る「事実台帳」の手順 に、先に手元で作る材料の集め方を書きました。条件欄の仕分けが終わった方は、次はこちらが順番として自然です。
私は名古屋を拠点に、愛知・岐阜・三重の中小零細企業を対象に仕事をしています。この地域で多い業種に、上の質問を当てるとどうなるか——あくまで想像の例として置きます。
この4つは、私が御社の現場を見ずに書いた仮の例です。実際にどれが必須かは、その現場を毎日見ている社長にしか分かりません。私がお渡ししているのは答えではなく、当てる質問のほうです。
私が中小零細企業の経営者の方とお話ししていて強く思うのは、「お金が足りない」より「どこで落ちているかが見えていない」ほうが、はるかに多いということです。この記事に書いた仕分けと記録は、すべて無料の手段で、社長ご自身の手でできます。まずご自身の目で見ていただくのが、いちばん速いと本気で思っています。
ここから先は、私の役割の線引きです。私は社会保険労務士ではないので、求人票が法令に適合しているかの判断や、労務の手続きは行いません。また「必須要件を減らせば応募が増えます」ともお約束しません。私がお引き受けできるのは、媒体ごとの応募数・見送った理由・各段階の通過率といった数字を見て、詰まっている場所がどこなのかを見極め、何にいくら使うかを整理し、実行まで伴走する、その部分です。ここは有償のご支援になります。無料でお受けしているのは、次にご案内する初回面談(90分程度)までです。
そのうえで、まずは状況をお聞かせいただきたいという方は、無料相談はこちらのお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。初回面談はオンラインで90分程度。こちらから契約を急かしたり、その場で契約をお願いしたりすることはしません。新たな投資が不要と判断すれば、その旨を誠実にお伝えします。
※本記事に記載した調査結果は、マイナビ(求人サービスを提供する事業者)による自社調査です。調査対象は、従業員数3名以上の企業において直近(2025年1〜12月)に中途採用業務を担当し「採用費用の管理・運用」に携わっている人事担当者1,500名(1,500社ではありません)。インターネット調査、調査期間は2025年12月17日〜12月22日。「採用しないことが多かった」62.1%の母数は、このうち採用者が1名以上いた1,357名です。
※本記事の法令情報は2026年8月20日時点のものです。法令および厚生労働省令は変わります。最新の条文は上記のe-Gov法令検索でご確認ください。個別の求人票が法令に適合しているかどうかの判断は、ハローワークの窓口、または社会保険労務士など該当分野の専門家へご確認ください。マークレストは、”何に・どう投資するか”の交通整理(マーケティング支援)を担います。
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※記事内の「判定質問」「歩留まりへの翻訳」「業種経験についての引っかかり」は、公式の記載ではなく、私自身の見立てです。