採用動画は、置き場所を先に1つ決めると、長さも縦横比も構成もほぼ決まります。自社の採用ページ/プラットフォーム/説明会は制約の出どころが違い、プラットフォームでは長さと縦横比が種別を決めます。公式ドキュメントと公的資料を引いて、撮影前に決める順序を整理しました。
結論から先に申し上げます。採用動画は、カメラを回す前に「どこに置くか」を1つだけ決めてください。置き場所が決まった瞬間に、動画の長さも、画面の縦横の比率も、構成も、ほぼ自動的に決まってしまうからです。逆に言えば、置き場所を決めずに撮った動画は、どこに置いても少しずつ合わないものになります。
今日やっていただきたいことは1つだけです。企画メモの一番上に「置き場所:◯◯」と1行だけ書いてください。そして、その1行が埋まるまで、絵コンテ(どんな絵をどの順番で撮るかの設計図)を描き始めないでください。お金はかかりません。かかるのは、社内で1つに決めるための15分だけです。
この記事が役に立つのは、こんな会社です。
逆に、すでに置き場所を1つに決めていて、そこから逆算して長さも比率も決めている会社には、この記事は不要です。ここで閉じていただいて構いません。
先に、この記事の芯を書いておきます。「何を伝えるか」の型は、実は国がすでに作っています。新卒等を条件とした募集で、応募者から求められれば示すべき項目、選考で触れてはいけない領域——これらは公的な資料に言語化されています。ところが「動画をどう作るか」の公的な型は、私が確認できた範囲では見つかりませんでした。だから、器(うつわ)である動画のほうは、置き場所から逆算して、自分で決めるしかありません。
そして置き場所の制約は、好みでは動かせません。①長さと形で「種別」が勝手に決まってしまうこと、②ページの作り方まで指定されること、③表示が遅くなった分が自社の負担として残ること——この3つに整理できます。ここから先は、置き場所は3つしかないこと、それぞれの制約がどこから来るか、そして人が写る場合に先に決めておくこと、の順で書いていきます。
採用動画の置き場所は、細かく数えればいくらでもあります。ですが「制約がどこから来るか」で分けると、3つに収まります。この3つは、守るべき決まりの出どころがまったく違います。だから、混ぜて考えると必ず破綻します。
| 置き場所 | 制約はどこから来るか | 先に決まってしまうこと |
|---|---|---|
| (A)自社の採用ページ | Googleが公開している技術要件と、自社サイトの表示速度 | ページの作り(1ページに1本)/サムネイル画像を置くURL/公開日の記録/動画の読み込ませ方 |
| (B)プラットフォーム (YouTube・Instagram・Facebook など) |
各社が公式ヘルプに書いている仕様 | 動画の長さと画面の縦横比。そして、それが「どの種別の動画として扱われるか」 |
| (C)説明会・対面 | 会場の設備と、その場の人数・持ち時間 | 音を出せるか/画面の大きさ/どこまで見てもらえるか |
ここが今日の急所です。3つとも「動画を見てもらう」という点では同じですが、守るべき決まりの出どころが、Googleの技術文書/各社の仕様/目の前の会場、とまったく別の場所にあります。だから「とりあえず1本作って、全部に使い回そう」は成り立ちません。成り立たない理由を、ここから1つずつ具体的に見ていきます。
なお、動画にたどり着く前段——そもそも応募が届くまでに何段階あるのかという測り方については、求人を出しても応募が来ない|求人倍率より先に見るべき数字に書いています。応募が届いた後の話は、応募が来たのに、面接の前に辞退される|「間」で起きていることで扱いました。今日の記事は、そのどちらでもなく「動画という器をどう決めるか」だけを扱います。
まず、自社サイトに置く場合です。ここで効いてくるのは、Googleが公開している技術要件です。「せっかく作った動画を検索からも見つけてほしい」と考えるなら、この要件は避けて通れません。
以下、英語版の記述をそのまま引き、かっこ内に私の訳を添えます。
Google検索セントラルの動画に関するドキュメントには、動画がGoogleの動画機能の対象となるための要件として、主に次のように書かれています。
鍵になるのが「watch page(動画専用ページ)」という言葉です。同じドキュメントに定義があります。
“A watch page’s main purpose is to show users a single video.”(動画専用ページの主な目的は、利用者に1本の動画を見せることである)
「a single video」——1本、と書かれています。そして同じドキュメントには、動画専用ページに当たらない例が挙げられています。レビュー動画を埋め込んだブログ記事、360度動画を置いた商品ページ、複数の動画を同等の目立ち方で並べた動画カテゴリページ、予告編を埋め込んだ映画レビューページ、です。
ここから私が読み取ったのは、こういうことです。「採用ページの下のほうに、社員インタビュー動画を3本並べておく」という、よく見かける作り方は、Googleの言う動画専用ページには当たらない可能性が高い。——ただし念のため申し添えます。これは私が公式の記述から読み取った解釈であって、Googleが「採用ページの動画一覧は対象外です」と名指しで書いているわけではありません。断定はしません。
日本語版のドキュメントには、あわせて「その動画に固有のページタイトルと説明があることを確認」とも書かれています。素直に読めば、動画を検索から見つけてほしいなら、動画1本につきページを1枚、それぞれ固有のタイトルと説明を付けて用意する——という作りになります。
この一点だけで、企画は変わります。「20分の会社紹介を1本」と「3分の動画を5本」では、ページの設計がまったく別物になるからです。撮ってから決められることではありません。
構造化データという言葉を先に噛み砕きます。ページの内容が「何であるか」を、検索エンジンが機械的に読める形で書き添える仕組みのことです。人間が読む本文とは別に、裏側にデータとして書きます。
動画の場合、Googleが必須としているプロパティ(項目)は、日本語版のドキュメントによると次の3つだけです。
| 項目 | 公式ドキュメントの記載(日本語版) |
|---|---|
| name | 「動画のタイトル。サイト上の各動画の name プロパティには固有のテキストを使用」 |
| thumbnailUrl | 「動画の固有のサムネイル画像ファイルを指す URL」 |
| uploadDate | 「動画が最初に公開された日時(ISO 8601 形式)」 |
ここに1つ、取り違えやすい点があります。動画の説明文(description)は、必須ではなく「推奨」に分類されています。直感に反すると思います。私も最初は逆だと思っていました。推奨のほうには、説明文のほかに、動画ファイルのURL、再生時間、埋め込み用のURL、掲載を終える日付などが並んでいます。
この3つが企画に効いてくるのは、次の理由からです。
先ほどの要件に“available at a stable URL”(安定したURLで取得できること)とありました。ここは実務で一番崩れやすい場所です。サイトを作り直した、画像フォルダを整理した、ファイル名を変えた——それだけで、この要件は崩れます。
サムネイルについて、公式ドキュメントには、主に次のような仕様が書かれています。
3つめは分かりにくいので噛み砕きます。ざっくり言えば「画像の大部分が透けていない、ちゃんと中身の詰まった画像であること」という意味です。透過を多用した凝った画像を作ると、ここに引っかかる可能性があります。
意外に知られていないのが、ここです。同じドキュメントに、動画の読み込ませ方についての記述があります。
1つめが重い。「サムネイルをクリックしたら動画が読み込まれる」という、ページを軽くするためによく使われる作り方があります。この記述と、後で触れる別のドキュメントの記述とは、読み方によっては引っ張る方向が違ってきます。この点は後でもう一度扱います。
自社サイトに動画を置くということは、そのページが重くなった分を、自社が引き受けるということです。プラットフォームに置く場合との一番大きな違いが、ここです。
Googleのウェブ開発者向け技術サイト(web.dev)には、ページの表示速度の指標であるLCPについて、こう書かれています。
“LCP reports the render time of the largest image, text block, or video visible in the viewport, relative to when the user first navigated to the page.”(LCPは、利用者が最初にそのページへ移動した時点を基準として、画面内に見えている最大の画像、テキストブロック、または動画が描画されるまでの時間を報告する)
「video」が名指しで入っています。同じページでは、対象要素として <video> 要素が挙げられ、その計測点は「ポスター画像の読み込み時間、または最初のフレームが表示される時間の、いずれか早いほう」と説明されています。つまり、画面の一番上に大きな動画を置けば、その動画がそのページの表示速度そのものになります。
Googleが示している基準は、75パーセンタイル(利用者の4分の3がその値以内に収まる、という見方)で次のとおりです。
そして、Google検索セントラルの日本語ドキュメントには、こう書かれています。
「Core Web Vitals は、その他のページ エクスペリエンス要素とともに、Google のコア ランキング システムがランキングを決定する際に考慮する要素です」
あわせて「ページの読み込み開始から 2.5 秒以内に LCP を実現するようにします」「INP を 200 ミリ秒未満に」「CLS スコアを 0.1 未満に」という目安が示されています。INPは「画面をタップしてから反応が返るまでの速さ」、CLSは「読み込み中に文字やボタンが動いてしまう量」を表す指標です。表示速度の話そのものはホームページが重い時の対策|Googleの「良好」は2.5秒以内で詳しく扱っていますので、そちらもご覧ください。
技術的な逃げ道も、公式に用意されています。
YouTubeなどの埋め込み(iframe)を使う場合の数字も、公式に示されています。Googleが公表している記述を、そのまま引きます。
“Lazy-loading YouTube video embeds saves around 500KB on initial page load”(YouTube動画の埋め込みを遅延読み込みにすると、最初のページ読み込みで約500KB削減される)
同じページでは、Chrome.com において、画面外のYouTube埋め込みを遅延読み込みにすることで、操作可能になるまでの時間(Time To Interactive)が10秒短縮された事例も紹介されています。実装としては <iframe src=”…” loading=”lazy” width=”600″ height=”400″></iframe> のように loading=”lazy” を付ける形が示されています。
正直に書きます。ここには、私が読む限り、緊張関係があります。
もう1つ、Chromeの公式ドキュメントには「ファサード」という手法の定義が載っています。
“A facade is a static element that looks similar to the embedded third-party, but is not functional and therefore much less taxing on the page load.”(ファサードとは、埋め込まれた外部サービスに見た目は似ているが、機能はしない静的な要素であり、そのためページの読み込みへの負担がはるかに小さい)
推奨されているパターンは、ページ読み込み時はファサード(見た目だけの静止画)を表示し、マウスが乗ったら外部サービスへの接続を準備し、クリックされたら実際のプレーヤーに置き換える、というものです。
ここで、2つの公式記述を並べます。
どちらもGoogleの公式ドキュメントです。素直に読むと、引っ張る方向が違います。
私は、ここでどちらが正しいという断定をしません。片方を切り捨てられるほどの根拠を、私は持っていないからです。お伝えできるのは、「2つの記述が存在する」という事実までです。
1点だけ、注記を添えます。ファサードに関するLighthouse(Googleが提供するページ品質の計測ツール)の監査項目は、Lighthouse 13で削除されている旨が、同じページに記載されています。ファサードという手法の定義と推奨パターンがChromeの公式ドキュメントに載っているのは事実ですが、「Lighthouseが今も推奨している」という書き方は、事実と合いません。ここは正確に書き分けておきます。
そのうえで、これは私の考えですが——この2つの記述が並存しているからこそ、「置き場所を1つに決める」という作業が、なおさら先に要ると考えています。その動画自体を検索から見つけてほしいのか、それとも動画はあくまで補助でページ全体の速度を優先したいのか。どちらを取るかは、技術の問題ではなく、経営の判断です。そして、その判断は撮影の前にしかできません。
先に、この節全体にかかる注記を置きます。ここから紹介する仕様は、2026年8月9日時点で、各社の公式ヘルプに記載されていた内容です。仕様は予告なく変わります。実制作の直前に、必ず各社の公式ヘルプでご自身で再確認してください。この記事の記述を根拠に発注や撮影を進めないでください。
そのうえで、この節で一番お伝えしたいのは1点だけです。プラットフォームでは、動画の長さと画面の縦横比が、「その動画がどの種別として扱われるか」を決めます。作り手がどう思っているかは関係ありません。仕様が決めます。
YouTubeヘルプ(日本語)には、こう書かれています。
「15分」は、企画段階で知っておくべき数字です。「まずアカウントの確認を済ませておく」という作業が、撮影より前に必要になる場合があるからです。
ここが、この節で一番重要な記述です。YouTubeヘルプには、こうあります。
「(2024年10月15日)この日以降 YouTube にアップロードされ、アスペクト比が正方形または縦長で長さが 3 分以内の動画は、ショート動画に分類されます」
アスペクト比とは、画面の横と縦の比率のことです。テレビやパソコンの画面のような横長が16:9、スマートフォンを縦に持ったときの形が9:16、正方形が1:1です。
この記述を裏返すと、こうなります。2024年10月15日以降にアップロードした動画なら、「縦向き(または正方形)で、3分以内」という2つの条件を満たしただけで、その動画はショート動画として扱われます。作り手が「これは通常の会社紹介動画のつもりだ」と思っていても、関係ありません。長さと形が種別を決めます。なお、アップロードできるショート動画の最大解像度は1080pとされています。
アスペクト比については、別のヘルプページにこうあります。
最後の1文が、実務では効きます。縦向きで撮った動画をパソコンで見ると、左右に余白が入ることがある、ということです。「スマホで見る人が多いから縦で撮る」という判断は正しいこともありますが、その動画を採用ページにも貼るつもりなら、パソコンでどう見えるかを撮影前に確認しておく必要があります。
公式ヘルプ(Facebookヘルプセンター内の同一記事)には、次の記述があります。
下の2つを、続けて読んでください。「作れるのは20分まで」と「3分を超えると新しい人にはおすすめされない」が、公式ヘルプに別々の事実として書かれています。
これは、動画の企画にそのまま効きます。「20分まで作れる」という情報だけを見て20分の会社紹介を作ると、まだ自社を知らない人には届きにくい形になります。採用動画の目的が「まだ自社を知らない人に見つけてもらうこと」なら、この2つの記述の差は、決定的です。
私は、これを「仕様の落とし穴」だとは考えていません。公式ヘルプが、作れる上限と届きやすさを分けて、正直に書いてくれているということです。読んでいれば避けられます。読まずに撮ると、20分の動画が手元に残ります。
Facebookのヘルプには、こう書かれています。
「Facebookに投稿されるすべての動画は、今後、長さや向きに関係なくリール動画としてシェアされます。」
エクスポート(書き出し)の推奨として、公式ヘルプには次の内容が挙げられています。
「16で割り切れるサイズ」は、編集の書き出し設定の話です。撮影後に気づいても直せますが、制作を依頼する時点で仕様として伝えておけば、やり直しの手戻りを減らせます。
なお、Facebookリールの最大の長さについては、私が公式ヘルプで確認できた範囲では数値の明示を見つけられませんでした。数値を持っていないので、この記事には書きません。「制限がない」という意味ではありません。確認できなかった、というだけです。ここは実制作の前に、必ず公式ヘルプでご確認ください。
プラットフォームに置く場合、先に決まるのは「長さ」と「縦横比」です。そしてその2つが、その動画の種別と、届き方を決めます。
だから「1本撮って、全部に使い回す」は成り立ちません。16:9で撮った10分の会社紹介は、縦向き3分以内の枠にはそのまま入りません。逆も同じです。使い回せるとしたら、それは「使い回せるように、最初から設計されていた」場合だけです。——そしてその設計は、置き場所を決めていないとできません。
3つめは、会社説明会、合同企業説明会のブース、面接の待ち時間、学校での説明——つまり目の前に人がいる場面で流す場合です。
この置き場所には、検索の要件もありません。プラットフォームが決める縦横比の指定もありません。ファイル形式も、プラットフォームの仕様ではなく、当日の再生機材で決まります。ここまで挙げてきた制約が、まるごと消えます。
代わりに、視聴環境が完全に現場依存になります。そして、これが一番厄介です。
ここには、公式ヘルプに当たる資料がありません。Googleのドキュメントにも、各社のヘルプにも、御社が使う会場の音響環境は書かれていません。答えは、現場に行かないと分かりません。
私は、これを弱点だとは思っていません。むしろ、(C)は「自分で確かめれば確実に分かる」唯一の置き場所です。(A)も(B)も、仕様が向こう側にあって、こちらでは動かせません。(C)だけは、会場を一度見に行けば、制約が全部見えます。
だから、(C)を選ぶなら「本番で使う会場と機材で、一度流してみてから完成にする」ことをお勧めします。会議室のパソコンで確認して「良くできた」と判断し、本番の会場で音が聞こえない——これは、避けられる失敗です。
ここからは、置き場所とは別の話です。社員の方に出演していただくなら、撮影の前に決めておくことがあります。
最初に線を引かせてください。私は、御社の取り扱いが適法かどうかの判断は行いません。その判断は弁護士など該当分野の専門家の領域です。ここでは、公的な資料にどう書かれているか、という事実だけをお伝えします。
ここは、実務でよく取り違えられる点です。
個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)が引く政令第1条第1号ロには、「顔の骨格及び皮膚の色並びに目、鼻、口その他の顔の部位の位置及び形状によって定まる容貌」とあります。そしてこれを受けた規則第2条には、こう書かれています。
「…から抽出した特徴情報を、本人を認証することを目的とした装置やソフトウェアにより、本人を認証することができるようにしたもの」
「本人を認証することを目的とした装置やソフトウェアにより」という条件が付いています。つまり、いわゆる顔認証のために特徴情報として処理されたもの、という書かれ方です。「動画に顔が映っている」ことが、そのまま「個人識別符号」になるという書き方ではありません。
——では気にしなくていいのか、というと、そうではありません。個人情報保護委員会のよくある質問には、こう書かれています。
「カメラにより特定の個人を識別することができる画像を取得する場合、個人情報を取り扱うことになる」
そのうえで、「利用目的をできる限り特定し、当該利用目的の範囲内でカメラ画像を利用しなければなりません」「個人情報の利用目的を本人に通知し、又は公表しなければなりません」とされています。
もう1つ、別の質問への回答にはこうあります。
「特定の個人を識別することができる映像情報であれば、個人情報に該当しますが、特定の個人情報を検索することができるように『体系的に構成』されたものでない限り、個人情報データベース等には該当しないと解されます。」
整理すると、公表されている記載はこうなります。顔が映っているだけで「個人識別符号」になるとは書かれていない。けれども、特定の個人を識別できる映像は「個人情報」に当たると書かれている。そして、その取り扱いには利用目的の特定と、本人への通知または公表が求められている——ここまでが、公的な資料に書かれていることです。
ガイドライン(通則編)には、「本人の同意」の定義がこう書かれています。
「『本人の同意』とは、本人の個人情報が、個人情報取扱事業者によって示された取扱方法で取り扱われることを承諾」
「示された取扱方法で」という部分が要点だと、私は読んでいます。何に同意していただくのかを先に示さなければ、同意という形が成立しません。「撮っていいですか」だけでは、示したことにならない、ということです。
取得方法として、ガイドラインには次のような事例が挙げられています。
口頭も事例として挙がっています。形式が1つに限られているわけではありません。
そして、利用目的の特定について。法17条に関して、ガイドラインには「個人情報を取り扱うに当たっては、利用目的をできる限り具体的に特定しなければ」とあり、特定が不十分な例として「事業活動に用いるため」「マーケティング活動に用いるため」が挙げられています。
この2つが「不十分な例」として名指しされている、という事実は、企画のときに知っておく価値があります。——ただし、御社が実際に書く利用目的が十分かどうかの判断は、私は行いません。そこは専門家の領域です。
なお、出演していただく方に使う同意書について、国が定めた定型の様式があるかどうかは、私が確認できた範囲では見つけられませんでした。「存在しない」という意味ではありません。確認できなかった、というだけです。書式を整えるなら、専門家にご相談ください。
文化庁のウェブサイト(著作物等の適切な利用に関する啓発ページ)には、肖像権についてこう書かれています。
肖像権=「自分の肖像を他人にみだりに使われない権利」
「自分が撮った写真であっても、他人が写っているものにマークを付けるときには、写っている人全員の同意を得てください。」
ただし、この記述には条件を付けさせてください。このページは、著作物等の適切な利用を啓発する文脈で書かれたものであり、採用動画に特化した指針ではありません。そのままの形で採用動画に当てはまるとは限りません。私が申し上げられるのは、「自分が撮ったものであっても、写っている人の同意という考え方が、公的な資料に書かれている」という事実までです。
実務に引き直すと、私がお勧めしているのはこうです。撮影の前に、出演していただく方へ「どこに置くか」「いつまで置くか」「退職された場合にどうするか」を先に説明しておく。これは、法令の話である前に、社員の方への誠実さの話です。——そして、ここでもまた「どこに置くか」が出てきます。置き場所が決まっていなければ、出演をお願いする説明すら、正確にできません。
ここまで、器(動画)の制約ばかり書いてきました。では、中身は何を映せばいいのか。
ここが、この記事で一番お伝えしたい逆説です。中身の型は、すでに国が言語化しています。
厚生労働省の公正な採用選考に関する特設サイトには、適性・能力に関係のない事項として、次の2つの分類が示されています。
また、同サイトには「出自、障害、難病の有無及び性的マイノリティなど特定の人を排除しないことが必要です」とも書かれています。
採用動画は、映像と音声で「うちはこういう人を求めています」と語る媒体です。だからこそ、ここは撮影前に一度読んでおく価値があります。何気ないインタビューの問いかけが、この領域に触れることがあるからです。撮ってしまってからでは、編集で消すか、撮り直すかしかありません。
若者雇用促進法は、「学校卒業見込者等」(=新卒等)であることを条件とした募集について、「青少年雇用情報」として3つの類型を定めています。中途採用一般に同じ定めが及ぶわけではありません。厚生労働省のページで示されているのは、次の内容です。
| 類型 | 内容 |
|---|---|
| (ア)募集・採用の状況 | 直近3事業年度の新卒採用者数・離職者数/男女別人数/平均勤続年数 |
| (イ)職業能力の開発・向上 | 研修/自己啓発支援/メンター制度/キャリアコンサルティング/社内検定の有無・内容 |
| (ウ)職場定着 | 前事業年度の月平均所定外労働時間/有給休暇の平均取得日数/育児休業の取得対象者数・取得者数(男女別)/役員・管理職に占める女性割合 |
なお、求められたときに提供する数は、3つの類型それぞれについて1つ以上とされています(条文の詳細は別の記事で扱います)。この一覧は「求職者が知りたいこと」の、国が作った目次でもあります。研修があるのか。残業は月にどのくらいか。有給はどれくらい取れているのか。育休は実際に取られているのか。——動画で語るべき中身は、この目次の中にかなりの部分があります。
なお、努力義務と義務の書き分けといった条文の中身は、採用ページに何を書くかというテーマで、別の記事で改めて扱う予定です。今日は「中身の目次は、すでに公にある」という一点だけをお伝えします。求人票そのものの中身については、求人票は、AIに書かせない|募集する会社が先に作る「事実台帳」の手順で正面から書いています。
ここが、この記事の骨です。中身の型はこれだけ整備されているのに、「採用動画をどう作るか」の公的な型は、私が確認できた範囲では見つけられませんでした。
正直に、確認した結果をそのまま書きます。
| 資料 | 確認できた結果 |
|---|---|
| 厚生労働省 職業安定局「地域で活躍する中小企業の採用と定着 成功事例集」 | 紹介ページの本文に「動画」「ホームページ」「SNS」「採用サイト」の語は出てきませんでした。本体はPDFのため、本文の中身までは確認できていません |
| 厚生労働省(委託事業)「中途採用におけるウェブサイト等活用好事例集」 | 紹介ページには「転職希望者等に対する情報発信の工夫や参考となるポイントをまとめた『好事例集』を作成しました」とあります。本体はPDFのため、中身は確認できていません |
| 中小企業庁「中小企業・小規模事業者の人材活用ガイドライン」「人材活用事例集」 | PDFのため、中身は確認できていません |
| 厚生労働省 公正な採用選考の特設サイトにある動画(7本) | 内容は公正な採用選考についての解説であり、「企業が採用動画をどう作るか」を扱った資料ではありませんでした |
ここで、はっきり書いておきます。上の表は「そうした資料が存在しない」ことの証明ではありません。PDFの中身までは確認できていないので、判定できていない、というのが正確なところです。根拠を示せないことは、書かない。それが私の方針です。
そのうえで、私が言えるのはここまでです。——何を伝えるかの型は、公にある。器(動画)をどう作るかの型は、少なくとも私が今日たどり着ける範囲には無かった。だから器のほうは、置き場所の仕様から逆算して、自分で決めるしかありません。そして、その逆算は撮影の前にしかできません。
今日の話を、短くまとめます。
もう一度、この節の冒頭の注記を繰り返します。本記事に載せたプラットフォームの仕様は、2026年8月9日時点で各社の公式ヘルプに記載されていた内容です。仕様は予告なく変わります。実制作の直前に、必ず公式ヘルプで再確認してください。
そして、今日の1手はこれだけです。企画メモの一番上に「置き場所:◯◯」と1行書く。それが埋まるまで、絵コンテを描かない。この1行が、尺も、縦横比も、構成も、撮り方も決めてくれます。逆にこの1行が空欄のまま撮った動画は、置き場所ごとに少しずつ合わないものになり、置かれないまま残りやすくなります。
お金をかける前に「いちばん詰まっている場所」をどう見つけるか、という考え方については、中小企業のお金の使い方|投資の前に「ボトルネック」を見つける現場術にも書いていますので、あわせてご覧ください(記事の中の「ボトルネック」という言葉は、この「いちばん詰まっている場所」のことです)。採用動画も、投資です。作る前に、それが詰まりを解く一手なのかどうかを確かめてください。
最後に、線を引かせてください。
私が担うのは、「どこに置くか」を決める設計と、置き場所から逆算した動画の企画・制作、採用ページ側の構成、そして公開後の測り方です。置き場所が決まっていない状態でのご相談も、もちろん歓迎します。むしろ、そこを一緒に決めるところからが本題です。
一方で、担わない範囲もはっきりさせておきます。
そのうえで、「採用動画を作りたいが、何から決めればいいか分からない」「作ったが、置き場所が決まらないまま止まっている」「採用ページに動画を置きたいが、サイトが重くなるのが不安だ」——そうしたご相談には、外部CMO(社外のマーケティング責任者)としてご一緒できます。
初回面談はオンラインで90分程度。可能な限り対面でお会いすることも大切にしています。こちらから契約を急かしたり、その場で契約をお願いしたりすることはしません。動画を作る必要がないと判断すれば、その旨を誠実にお伝えします。まずは御社の状況をお聞かせください。無料相談はこちらのお問い合わせフォームからお寄せください。
【出典】
※本記事に引用した英語の記述の日本語訳は、いずれも筆者によるものです。
・Google 検索セントラル/動画の構造化データ(VideoObject)に関するドキュメント
https://developers.google.com/search/docs/
appearance/structured-data/video?hl=ja(英語版:https://developers.google.com/search/docs/
appearance/structured-data/video)(いずれも2026年8月9日閲覧)
・Google 検索セントラル/動画のSEOに関するドキュメント
https://developers.google.com/search/docs/
appearance/video?hl=ja(英語版:https://developers.google.com/search/docs/
appearance/video)(いずれも2026年8月9日閲覧)
・web.dev(Google)/「Largest Contentful Paint (LCP)」
https://web.dev/articles/lcp(2026年8月9日閲覧)
・Google 検索セントラル/Core Web Vitals に関するドキュメント
https://developers.google.com/search/docs/
appearance/core-web-vitals?hl=ja(2026年8月9日閲覧)
・web.dev(Google)/「Lazy loading video」
https://web.dev/articles/
lazy-loading-video(2026年8月9日閲覧)
・web.dev(Google)/「It’s time to lazy-load offscreen iframes!」(「Lazy-loading YouTube video embeds saves around 500KB on initial page load」およびChrome.comの事例の出所)
https://web.dev/articles/
iframe-lazy-loading(2026年8月9日閲覧)
・Chrome for Developers/「Lazy load third-party resources with facades」
https://developer.chrome.com/docs/lighthouse/
performance/third-party-facades(2026年8月9日閲覧)
※同ページには、当該監査項目が Lighthouse 13 で削除された旨が記載されています。
・YouTube ヘルプ/動画のアップロードに関するページ
https://support.google.com/youtube/
answer/71673?hl=ja(2026年8月9日閲覧)
・YouTube ヘルプ/ショート動画に関するページ
https://support.google.com/youtube/
answer/15424877?hl=ja / https://support.google.com/youtube/
answer/10059070?hl=ja(いずれも2026年8月9日閲覧)
・YouTube ヘルプ/アスペクト比・推奨解像度に関するページ
https://support.google.com/youtube/
answer/6375112?hl=ja(2026年8月9日閲覧)
・Instagram リールに関するヘルプ(Facebook ヘルプセンター内の同一記事)
https://ja-jp.facebook.com/help/instagram/
1038071743007909 / https://www.facebook.com/help/instagram/
2720958398006062?locale=ja_JP(いずれも2026年8月9日閲覧)
・Facebook ヘルプ/リール動画および動画のエクスポートに関するページ
https://www.facebook.com/help/
166707406722029?locale=ja_JP / https://www.facebook.com/help/www/
1041366099316573?locale=ja_JP(いずれも2026年8月9日閲覧)
※上記プラットフォームの仕様は、2026年8月9日時点で各社の公式ヘルプに記載されていた内容です。仕様は予告なく変更されます。実制作の直前に、必ず各社の公式ヘルプでご確認ください。
・個人情報保護委員会/個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/
guidelines_tsusoku/(2026年8月9日閲覧/同ページの更新日表示は「令和8年6月14日」)
・個人情報保護委員会/よくある質問
https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/
faq1-q1-13_/ / https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/
faq1-q1-41/(いずれも2026年8月9日閲覧)
・文化庁/著作物等の適切な利用に関する啓発ページ(肖像権についての記載)
https://www.bunka.go.jp/jiyuriyo/
chui3.html(2026年8月9日閲覧)
※同ページは著作物等の適切な利用を啓発する文脈で作成されたものであり、採用動画に特化した指針ではありません。
・厚生労働省/公正な採用選考に関する特設サイト
https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/basic.html / https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/methods.html / https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/document.html(いずれも2026年8月9日閲覧)
・厚生労働省/青少年雇用情報(若者雇用促進法)に関するページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/
bunya/0000122234.html(2026年8月9日閲覧)
・厚生労働省 職業安定局「地域で活躍する中小企業の採用と定着 成功事例集」紹介ページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/
newpage_38019.html(2026年8月9日閲覧)
・厚生労働省「中途採用におけるウェブサイト等活用好事例集」紹介ページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/
bunya/0000089556_00010.html(2026年8月9日閲覧)
※上記2件および中小企業庁「中小企業・小規模事業者の人材活用ガイドライン」「人材活用事例集」は、いずれも本体がPDFのため、本記事執筆時点では本文の内容を確認できていません。本記事の記述は「確認できなかった」という事実を示すものであり、当該資料に採用動画に関する記載が存在しないことを意味するものではありません。
※本記事に記載したプラットフォームの仕様・数値は、上記出典の2026年8月9日時点の記載です。仕様は予告なく変更されますので、実制作の直前に必ず各社の公式ヘルプをご確認ください。
※法令・ガイドラインの内容は改正されることがあります。個人情報の取り扱い・肖像権・採用選考に関する実務でのご判断にあたっては、必ず最新の条文および弁護士・社会保険労務士など該当分野の専門家にご確認ください。本記事は、公表されている資料の内容を紹介し、動画制作の観点から考え方を一般的に解説するものです。