「うちの良いところは何ですか」とは聞きません。前作のチェック表で空欄だった行を紙に写し、1行ごとに「これは、実際どうですか」と聞く。指針は、してはならない表示を「実際とのズレ」で書いています。12項目ぶんの質問対応表と、聞く前に渡す4つを、出典付きで整理しました。
結論から先に申し上げます。社員インタビューで「うちの良いところは何ですか」と聞くのは、やめてください。代わりに、『採用ページに何を書くか』で数えていただいた「載っていない項目」を1つずつ紙に書き出して、その1行ごとに社員へ持っていきます。聞く言葉は毎回同じで構いません。「これは、実際どうですか」——これだけです。
理由は1つです。採用ページで危ないのは、社員に良いことを言ってもらうこと自体ではありません。求人票に書いた条件と、社員が語る中身がズレることです。職業安定法に基づく指針は、してはならない表示を「実際の賃金等よりも高額であるかのように表示してはならない」「実際の業務の内容と著しく乖離する名称を用いてはならない」——つまり“実際とのズレ”で書いています(後半で逐語を引きます)。だから質問の設計は「盛るな」ではなく、「求人票と突き合わせろ」に置きます。
今日やっていただきたいことは1つだけです。採用ページに何を書くか|求職者が探しているのに、載っていない項目のチェック表で空欄だった行だけを、紙に写してください。そして1行ごとに、その下へ質問文を1つ書き足す。それが、そのまま質問票になります。作業は10分ほどです。12項目ぶんの質問文の対応表は、この記事の中ほどに表で載せます。写すのが面倒な方は、その表をそのまま使ってください。
この記事が役に立つのは、こんな会社です。
逆に、社員がまだご自身1人の会社には、この記事は不要です。聞く相手がいません。また、まだ『採用ページに何を書くか』で「何が載っていないか」を数えていない方は、先にそちらを済ませてください。空欄が分からないまま社員に会いに行くと、結局「良いところは何ですか」に戻ります。
先に、この記事がやらないことも申し上げます。私は、御社の募集や表示が法令上の要件を満たしているかどうかの判断はしません。労働条件や募集内容そのものの適否は社会保険労務士、法的な判断は弁護士の領域です。ここでお伝えするのは、条文・指針・公的なQ&Aにこう書かれているという事実と、そこから私が組み立てた”聞き方の手順”までです。
ここから先は、①危ないのは「盛ること」ではなく求人票とズレること、②質問は2か所から作る(求人票と空欄)、③12項目ぶんの質問対応表と聞く順番、④聞き方の前に用意しておくもの、⑤誰に出ていただくかと見せ方、⑥載せる前に言葉にしておく3つ、の順で書いていきます。
まず、条文を置きます。職業安定法5条の4第1項です(原文の一部を省略して引用しています)。
「…労働者の募集を行う者及び募集受託者…は、…広告等により求人若しくは労働者の募集に関する情報…を提供するときは、当該情報について虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならない。」
同条第2項には、こうあります。
「労働者の募集を行う者及び募集受託者は、…正確かつ最新の内容に保たなければならない。」
「虚偽」だけでなく「誤解を生じさせる表示」まで書かれています。嘘を書かなければよい、という組み立てにはなっていません。
そして、この記事の芯はここです。「誤解を生じさせる表示」とは何かについて、厚生労働省の指針が留意事項を挙げています。平成11年11月17日 労働省告示第141号——職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者などが、その責務等に関して適切に対処するための指針です。その第四の二から引きます。
柱書き——
「…広告等により求人等に関する情報を提供するに当たっては、求職者、労働者になろうとする者又は供給される労働者に誤解を生じさせることのないよう、次に掲げる事項に留意すること。」
そして、留意事項として挙げられているのが次の4つです。
| 指針 第四の二 | 記載の内容(原文のまま) |
|---|---|
| (一) | 「関係会社を有する者が労働者の募集を行う場合、労働者を雇用する予定の者を明確にし、当該関係会社と混同されることのないよう表示しなければならないこと。」 |
| (二) | 「労働者の募集と、請負契約による受注者の募集が混同されることのないよう表示しなければならないこと。」 |
| (三) | 「賃金等(賃金形態、基本給、定額的に支払われる手当、通勤手当、昇給、固定残業代等に関する事項をいう。以下同じ。)について、実際の賃金等よりも高額であるかのように表示してはならないこと。」 |
| (四) | 「職種又は業種について、実際の業務の内容と著しく乖離する名称を用いてはならないこと。」 |
(三)と(四)を、もう一度読んでください。基準になっているのは「実際」です。「良いことを書くな」とは書かれていません。実際より高く見せること、実際と著しく離れた名前を使うことが挙げられています。
罰則の条文も、事実として置いておきます。同法65条の柱書と第9号です。
「…その違反行為をした者は、六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。」/「九 虚偽の広告をなし、又は虚偽の条件を提示して、職業紹介、労働者の募集、募集情報等提供若しくは労働者の供給を行い、又はこれらに従事したとき。」
ここで線を引かせてください。御社の採用ページの表示や、そこに載せる社員の言葉が、これらの条文・指針にどう当てはまるのかという判断は、私は行いません。条文と指針にこう書かれている、という事実までをお伝えしています。当てはめが要る場面では、社会保険労務士など該当分野の専門家へご確認ください。
そのうえで、ここから先は私の見立てです。採用ページを開いた求職者は、募集要項のページと社員の声のページを、頭の中で分けて読んではいないと思います。同じ会社の同じサイトで読んだ話として、一続きに受け取る。だとすれば、社員の声を作るときに突き合わせる相手は、感性ではなく求人票そのものだ——というのが、私の設計の出発点です。
質問文をゼロから考える必要はありません。出どころは2つだけです。
| 出どころ | 中身 | 聞く言葉の型 |
|---|---|---|
| ①求人票 | 募集の場面で示すことが定められている項目(職業安定法施行規則4条の2第3項に11項目が並んでいます。一覧は面接前の辞退の記事に載せました) | 「これは、実際どうですか」 (書いた条件と、日々の実際を突き合わせる) |
| ②採用ページの空欄 | 採用ページに何を書くかのチェック表で埋まらなかった項目(3類型・全12項目) | 「その数字は、あなたの1日にどう表れていますか」 (会社が出す数値に、生活の手触りを付ける) |
この2つを分けることに、意味があります。
①は、すでに書いてあることの検算です。求人票を印刷して、行ごとに余白を作ってください。就業の場所、始業・終業の時刻、時間外労働の有無——1行ずつ「これは、実際どうですか」と聞いていきます。ズレが出たら、直すのは社員の言葉ではなく、求人票のほうです。順番を逆にしないでください。
1つだけ、①で聞かないことを決めておきます。賃金の額そのものは、社員に聞きません。個人の給与額は本人の情報であり、インタビューの場で口に出させるものではないと私は考えています。求人票に書いた”形”——手当の付き方、固定残業代の扱い、昇給の運用——が実際と合っているかは、社員に聞くのではなく、会社側の資料で突き合わせてください。先ほどの指針(三)が挙げているのも、まさにこの「賃金等」の部分です。
②は、まだ書いていないことの肉付けです。ここで最も大事な原則を1つ、はっきり書きます。
数値は、会社が集計します。社員に聞くのは「その数値が、あなたの1日にどう表れているか」だけです。
理由は2つあります。
もう1つ、聞かないことを決めておきます。辞めた方の話は、社員に聞きません。それは本人以外の情報になると私は考えています。採用数と離職者数は会社が数えられる数値ですから、数えるのは会社、聞くのは残っている方の日々——という分け方にしてください。
ここが、この記事の本体です。前作のチェック表で空欄だった行を、この表で探してください。右端が、そのまま社員へ持っていく一文です。
先に、この12項目についている条文上の限定を落とさずに書いておきます。この12項目は、若者雇用促進法13条と同法施行規則3条1項が定める「青少年雇用情報」です。条文上の対象は「学校卒業見込者等」——かみ砕けば新卒等——であることを条件とした労働者の募集で、中途採用一般に及ぶ規定ではありません。また、同法施行規則4条3項が定める提供の基準は「3類型のうちそれぞれ一以上」で、12項目すべてを求めるものではありません。
それでも私が12項目を質問の下敷きに使うのは、ここが「求職者が、面接に行くかどうかを決めるために知りたいこと」を国が言語化した一覧だからです。——これは条文の要請ではなく、採用の側から見た私の見立てです。ここは分けておきます。
【類型1】青少年の募集及び採用の状況に関する事項(3項目)
| 前作の項目 | 数値を出すのは | 社員に持っていく一文 |
|---|---|---|
| イ 直近3事業年度の採用数と、そのうち離職した数 | 会社(集計) | 「入ったころと今で、いちばん変わったことは何ですか」 ※辞めた方については聞きません(本人以外の情報になります) |
| ロ 直近3事業年度の採用数(男女別) | 会社(集計) | 社員には聞きません。属性を語ってもらう項目ではなく、会社が数える項目です(理由は後半の「誰に出ていただくか」で書きます) |
| ハ 平均継続勤務年数 | 会社(集計) | 「いま何年目ですか。1年目と今で、任されていることはどう違いますか」 |
【類型2】職業能力の開発及び向上に関する取組の実施状況に関する事項(5項目)
| 前作の項目 | 会社が出すのは | 社員に持っていく一文 |
|---|---|---|
| イ 研修の有無と、その内容 | 制度の有無・内容 | 「入社して最初の3か月、誰に何を教わりましたか」 |
| ロ 自分から学ぼうとするときの援助の有無と、その内容 | 制度の有無・内容 | 「自分で勉強しようと思ったとき、会社に何を頼めましたか。頼んだ結果どうなりましたか」 |
| ハ 新しく入った方に相談相手を割り当てる制度の有無 | 制度の有無 | 「分からないことがあったとき、最初に誰に聞きましたか。その人は、どうやって決まりましたか」 |
| ニ キャリアコンサルティングの機会を付与する制度の有無と、その内容 (「キャリアコンサルティング」は条文で使われている言葉です) |
制度の有無・内容 | 「これから何をやりたいかを、社内の誰かに話したことはありますか。いつ、どんな場面でしたか」 |
| ホ 職業に必要な知識・技能の検定に係る制度の有無と、その内容 | 制度の有無・内容 | 「仕事の中で取った資格や検定はありますか。勉強する時間は、どうやって作りましたか」 |
【類型3】職場への定着の促進に関する取組の実施状況に関する事項(4項目)
| 前作の項目 | 数値を出すのは | 社員に持っていく一文 |
|---|---|---|
| イ 1人あたり1か月平均の所定外労働時間 (所定外労働時間=あらかじめ決められた労働時間を超えて働いた分) |
会社(集計) | 「先週、いちばん遅かった日は何時に帰りましたか。その日は、何があった日ですか」 (=忙しさの”山の形”が分かります) |
| ロ 1人あたりの有給休暇の平均取得日数 | 会社(集計) | 「直近で有給を取ったのはいつですか。そのとき、あなたの仕事は誰が持ちましたか」 |
| ハ 育児休業の取得状況(男性・女性それぞれ) | 会社(集計) | ご本人が話したいと申し出た場合にかぎって「戻ってきた最初の1週間は、どんな働き方でしたか」 ※該当者がいなければ、聞きません。話を作りません |
| ニ 役員・管理職に占める女性の割合 | 会社(集計) | 役職名ではなく、決めている中身を聞きます。「いま自分の判断で決めていることは、何ですか」 |
この表の使い方は1つだけです。前作で□が空いていた行の、右端の一文だけを持っていく。12個すべて聞く必要はありません。空欄の数だけ聞けば足ります。
ここは私の見立てです。同じ内容を聞くのでも、順番を変えると返ってくる言葉が変わると考えています。私が置いている順番は、これです。
「良いところは何ですか」を最初に置くと、多くの場合、当たり障りのない答えが返ってきます。社員の方は、自社の良いところを見失っていることが多いからです。毎日その中にいれば、それが当たり前になります——私はそう見ています。事実から入れば、探す必要がありません。すでに起きたことを言うだけですから。
そして私の見立てでは、採用ページでいちばん効くのは4番の「迷い」です。入る前に分からなくて迷った点は、いま応募を迷っている人が分からない点とほぼ同じだからです。前作の空欄と、ここで出てくる言葉は、たいてい重なります。応募と面接の「間」で何が起きているかは、応募が来たのに、面接の前に辞退される|「間」で起きていることで数字とあわせて扱いました。
質問文より前に決めておくことがあります。誰が聞くか、断れるか、後で取り下げられるかです。
ここで、条文を1つ置きます。労働施策総合推進法30条の2第1項です。
「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」
厚生労働省の指針(令和2年1月15日 厚生労働省告示第5号)は、3つの要素をこう整理しています。
「職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすものをいう。」
同じ指針には、こうも書かれています。
「なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない。」
ここは、誤解のないように正確に書きます。30条の2は、事業主に雇用管理上の措置を義務づけた条文です。「採用ページ用の取材」を名指ししている条文ではありません。そして私は、御社の取材が何かに当たる・当たらないという判断もしません。
私が申し上げるのは、設計の話です。指針が①として挙げている「優越的な関係を背景とした」——この①を薄くしておくほうが、返ってくる言葉の質も上がる、と私は考えています。断りにくい状況で聞いた話は、当たり障りのない話になります。それは求職者にも伝わります。
ですから、取材の前に次の4つを先に言葉にして渡してください。口頭でも、短い文面でも構いません。
| 先に伝えること | 具体的な言い方の例 |
|---|---|
| ①断れる | 「引き受けても断っても、評価には関係しません。答えたくない質問は飛ばしてください」 |
| ②匿名でもよい | 「お名前と顔を出す形/職種と年数だけの形、どちらでも構いません」 |
| ③載せる前に見せる | 「公開する前に、載せる文章をそのままお見せします。直したい箇所は直します」 |
| ④後から取り下げられる | 「載せた後でも、外してほしいと言われれば外します。誰に言えばいいかは、これです」 |
④は、言うだけでは足りません。「誰に言えば外れるのか」を1人決めて、名前を伝えてください。窓口が決まっていないと、言い出せないまま残ります。
もう1点、実務的な話を。聞き役を代表ご自身が務めるかどうかは、会社の規模と関係の距離で変わります。私の見立てでは、代表が聞くと「事実」は正確に出てきますが、「迷い」は出にくくなります。入る前に何が不安だったかという話は、評価する側に対しては言いにくいものです。4番の「迷い」だけは、間に人を挟むか、書いて出してもらう形にするほうが集まりやすいと考えています。
時間についても、先に考えておいてください。ただし、決め方は会社の規模で変わります。聞くことは前作の空欄の数だけですが、その言葉が出てくるまでにかかる時間が、規模によって違うのです。
社員が10人に満たない規模なら、1人60分程度で足ります。お互いの距離が近く、事実を聞けばそのまま答えが返ってきます。
10人を超えて30人ほどの規模になると、話が変わります。本音が出てくるまでに、時間がかかります。この場合は、時間も回数も先に区切らないほうがよいと、私は考えています。信頼関係——最近は心理的安全性という言い方もします。何を言っても評価が下がらないと本人が思える状態のことです——それができたあとに出てくる言葉こそが、採用ページで効く言葉です。そこまでは、粘り強く時間と回数を重ねることになります。
それより大きな規模については、私が実際に見ている範囲を超えるので、ここでは書きません。
ここは、条文を2つ置いてから実務に移ります。
労働施策総合推進法9条です。
「(募集及び採用における年齢にかかわりない均等な機会の確保)事業主は、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められるときとして厚生労働省令で定めるときは、労働者の募集及び採用について、厚生労働省令で定めるところにより、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。」
厚生労働省令(同法施行規則1条の3第1項)には例外の定めが置かれていて、それぞれに条件が付されています。御社の募集がその例外に当たるかどうかの当てはめは、私は行いません。そして同条第2項には、こうあります。
「事業主は、法第九条に基づいて行う労働者の募集及び採用に当たつては、…当該募集及び採用に係る職務の内容、当該職務を遂行するために必要とされる労働者の適性、能力、経験、技能の程度その他の労働者が応募するに当たり求められる事項をできる限り明示するものとする。」
次に、男女雇用機会均等法5条です。
「(性別を理由とする差別の禁止)事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。」
この5条に関する厚生労働省の指針(平成18年10月11日 厚生労働省告示第614号)には、募集・採用における性別に関する表示の具体例が挙げられています。例示の中身は、記事末尾の出典のページでご確認ください。逐語をここで引くには、私の手元での照合が足りていません。確かめていないものを引かない、という線は守ります。
ここから、実務の話です。社員の言葉を切り取るとき、こういう一文になりがちです。
言った本人には、他意はありません。ですが、この一文が採用ページに置かれると、読む側には「そういう人を募集している」という条件の表示として読めてしまう可能性があります。——繰り返しますが、それが法令上どう扱われるかの判断は私はしません。ここで申し上げているのは、条文が「年齢にかかわりなく」「性別にかかわりなく」という言葉で書かれている、という事実と、その並びの中でこの一文が読まれる、という事実です。
手を動かす形にすると、こうなります。属性で語ってもらうのをやめて、仕事で語ってもらう。
| 出やすい一文 | 言い換える質問 |
|---|---|
| 「若い人が活躍しています」 | 「入って何か月目から、1人で任されましたか」 → 返ってくるのは年齢ではなく、任せる速さという事実です |
| 「女性が多い、明るい職場です」 | 「作業のとき、いちばん重いものは何kgですか。それはどう運びますか」 → 返ってくるのは属性ではなく、仕事の中身と設備の事実です |
| 「アットホームな職場です」 | 「困ったとき、誰にどうやって声をかけますか」 → 返ってくるのは雰囲気ではなく、相談の経路です |
この言い換えには、副産物があります。先ほど引いた施行規則1条の3第2項に「当該募集及び採用に係る職務の内容、当該職務を遂行するために必要とされる労働者の適性、能力、経験、技能の程度その他の労働者が応募するに当たり求められる事項をできる限り明示するものとする」とありました。属性ではなく仕事を語ってもらうと、集まる言葉が「職務内容」の側に寄ります。採用ページに置ける材料としても、こちらのほうが使えます。
最後の段です。聞いた話を載せる前に決めることは、突き詰めると3つです。
掲載する範囲/掲載する期間/取り下げる方法。——この3つを、取材の前に言葉にして本人に伝えます。
なぜ「先に」なのか。条文と公的なQ&Aを、書かれている順に並べると理由が見えます。
個人情報の保護に関する法律17条1項です。
「個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的…をできる限り特定しなければならない。」
この「できる限り特定」の程度について、個人情報保護委員会のよくある質問(Q2-1)は、こう書いています。
「…本人において、自らの個人情報がどのような事業の用に供され、どのような目的で利用されるのかについて一般的かつ合理的に予測・想定できる程度に、利用目的を特定することをいいます。…」/「一連の個人情報の取扱いの中で、本人が合理的に予測・想定できないような個人情報の取扱いを行う場合には、かかる取扱いを行うことを含めて、利用目的を特定する必要があります。」
従業員の個人情報についても、同じ委員会のよくある質問(Q2-2)にこうあります。
「従業員を雇用するに当たり当該従業員の個人情報を取り扱う場合も、当該個人情報の利用目的をできる限り特定する必要があります。」
(同じ回答には、あらかじめ労働組合等に通知し、必要に応じて協議を行うことも望ましいと考えられる旨も書かれています。)
そして法18条1項です。
「個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。」
21条1項にも定めがあります。
「個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。」
この並びから読み取れることを、私の言葉でまとめます。「本人が予測できないような取扱いをするなら、その取扱いを含めて目的を特定しておく必要がある」と書かれている。ならば、社員に話を聞く前に「どこに、いつまで載せるか」を言葉にしておくほうが、順番として素直です。聞いてから決めるのでは、本人が予測できる状態を先に作れません。
写真の掲載について、個人情報保護委員会のよくある質問に、よく引かれる項目があります。ですが、質問文の限定を落とさずに読む必要があります。
Q7-11の質問文は、こうです。
「会社の行事で撮影された写真などを、当社内で展示する場合、写真に写っている本人からあらかじめ同意を得る必要がありますか。」
「当社内で展示する場合」——自社のウェブサイトに掲載する場合についての問いではありません。ここを潰して読むと、事実が変わってしまいます。回答は、こうです。
「一般的に、本人を判別可能な写真の画像は個人情報には該当しますが、個人データ(個人情報データベース等を構成する個人情報)ではないと解されるため、あらかじめ本人の同意を得ずに展示等を行っても、法第27条第1項に違反するおそれはないと解されますが、利用目的を通知又は公表することは必要です(法第21条第1項)。なお、プライバシーの権利や肖像権の侵害に当たる場合もあるため、例えば展示期間を限定したり、不特定多数の者への提供に際しては自主的に本人の同意を得る等の取組が望ましいと考えられます。」
参照されている27条1項の柱書は、こうです。
「個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。」
採用ページの話に効いてくるのは、回答の後段です。「展示期間を限定したり、不特定多数の者への提供に際しては自主的に本人の同意を得る等の取組が望ましい」——ここに「期間を限定する」と「不特定多数へ出すなら、自主的に同意を得る」という2つの考え方が、公的な文書として書かれています。
これが、私が「掲載範囲・掲載期間・取り下げ方法の3つを先に言葉にしてください」と申し上げる根拠の並びです。——ただし、これらが御社の具体的な掲載にどう当てはまるかの判断は、私は行いません。個人情報の取扱いや肖像権について適法かどうかの判断は、弁護士など該当分野の専門家の領域です。
肖像権については、文化庁が、自分の著作物に「自由利用マーク」を付けるときの注意として掲げているページに、次の記載があります。
同ページは、肖像権を「自分の肖像を他人にみだりに使われない権利」と説明しています。そして「他人が写っている写真などにマークを付けるときは,写っている人全員の同意を得てください。」と書かれています。マークを付けるときの注意として書かれた一文であり、採用ページへの掲載について書かれたものではありません。
なお、同意書の様式については、この記事では踏み込みません。国が定めた定型の様式があるかどうかを、私は確認できていないからです。「存在しない」という意味ではありません。確認できていない、というだけです。書式を整えるなら、専門家にご相談ください。
写真ではなく動画で人が写る場合——撮る前に決めておくことは、採用動画は「作る前」に決めることが8割のほうで、公的な資料を引いて詳しく書いています。あわせてご覧ください。
ここは私の見立てです。顔写真と実名が出せないなら、社員の声は載せられない——とは考えていません。
成立する最小の形は、これです。
この形が弱いとは、私は思いません。求職者が知りたいのは誰が言ったかではなく、自分がそこで働いたらどうなるかだと考えています。職種と年数が分かれば、読む側は自分を当てはめられます。
そして、この形はもう1つ得をします。載せる情報が少ないほど、後の取り下げも軽くなります。実名と顔で載せたものを外すのは、本人にとっても会社にとっても重い作業です。最初から軽く組んでおくと、続けられます。
今日の1手は、これだけです。前作のチェック表で空欄だった行を紙に写し、1行ごとに質問文を1つ書き足す。10分です。この記事の対応表を使えば、書き足す文は考えなくて済みます。
そして——ここは正直に申し上げますが——聞いてみて、求人票と実際がズレていたなら、直すのは求人票のほうです。社員の言葉を求人票に合わせて整えるのでは、順番が逆になります。ズレが見つかったことは、この取材の成果です。
お金をかける前に「いちばん詰まっている場所」をどう見つけるかという考え方については、中小企業のお金の使い方|投資の前に「ボトルネック」を見つける現場術にも書いています(記事中の「ボトルネック」は、この「いちばん詰まっている場所」のことです)。採用のどこが詰まっているかを数字で見る話は、求人を出しても応募が来ない|求人倍率より先に見るべき数字と求人媒体の数字の読み方|「応募単価」だけで決めないで扱っています。集めた言葉を載せたあと、その効き方を毎月どう見るかは、採用の数字を、毎月どう見るか|1枚のシートで足りるです。求人票そのものの作り方は、求人票は、AIに書かせない|募集する会社が先に作る「事実台帳」の手順です。
最後に、線を引かせてください。
私が担うのは、採用ページの構成・情報設計(どこに何を、どの順で置くかの設計)と、そこに載せる内容を集めるための質問の設計、そしてその効き方の計測の設計です。労働者の募集そのものに従事するものではありません。応募者を集めること、求人票・募集要項の作成、求人媒体への掲載代行、人材のご紹介は、いずれも行いません。
また、労働条件の明示や募集内容そのものが法令上の要件を満たしているかどうかの適法性の判断、および労働条件通知書などの書類の作成は、社会保険労務士など該当分野の専門家の領域です。個人情報の取扱いや肖像権について適法かどうかの判断は、弁護士など該当分野の専門家の領域です。私はそこには立ち入りません。本記事は、法令・指針および公表されているQ&Aに書かれている内容を紹介し、採用の観点から考え方を一般的に解説するものです。特定の成果をお約束するものではありません。
そのうえで、「社員に何を聞けばいいか分からない」「聞いた話をどこまで載せていいのか判断がつかない」「社員の声を載せてはいるが、求人票と噛み合っている自信がない」——そうした自社サイト側の設計と、聞いて載せて運用する型づくりについては、外部CMO(社外のマーケティング責任者)としてご一緒できます。
初回面談はオンラインで90分程度。可能な限り対面でお会いすることも大切にしています。こちらから契約を急かしたり、その場で契約をお願いしたりすることはしません。新たな投資が不要と判断すれば、その旨を誠実にお伝えします。まずは御社の状況をお聞かせください。無料相談はこちらのお問い合わせフォームからお寄せください。
【出典】
・職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)第5条の4第1項・第2項、第65条
https://laws.e-gov.go.jp/law/
322AC0000000141(e-Gov法令検索/施行日2026年4月1日時点の現行条文/2026年8月9日閲覧)
※第65条の法定刑は、現行条文の文言では「拘禁刑」です。
・厚生労働省「職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、募集情報等提供事業者、労働者供給事業者、労働者供給を受けようとする者等がその責務等に関して適切に対処するための指針」(平成11年11月17日 労働省告示第141号)第四の二
https://www.mhlw.go.jp/web/
t_doc?dataId=00005680&dataType=0&pageNo=1(厚生労働省 法令等データベース/2026年8月9日閲覧)
※本文で引用した柱書き及び(一)〜(四)は、同ページの2026年8月9日時点の記載によります。
・職業安定法施行規則(昭和二十二年労働省令第十二号)第4条の2第3項
https://laws.e-gov.go.jp/law/
322M40002000012(e-Gov法令検索/施行日2026年4月1日時点の現行条文/2026年8月9日閲覧)
※本文中の「11項目」は、同項に置かれた号(一/二/二の二/二の三/三/四/五/六/七/八/九)の数です。
・青少年の雇用の促進等に関する法律(昭和四十五年法律第九十八号)第13条
https://laws.e-gov.go.jp/law/
345AC0000000098(e-Gov法令検索/施行日2026年5月13日時点の現行条文/2026年8月9日閲覧)
・青少年の雇用の促進等に関する法律施行規則(平成二十七年厚生労働省令第百五十五号)第3条第1項、第4条第3項
https://laws.e-gov.go.jp/law/
427M60000100155(e-Gov法令検索/施行日2022年10月1日時点の現行条文/2026年8月9日閲覧)
※本文中の3類型・全12項目は同施行規則第3条第1項の定めによります。同法第13条の規定は「学校卒業見込者等」であることを条件とした労働者の募集を対象としたものであり、中途採用一般に及ぶ規定ではありません。また、同施行規則第4条第3項が定める提供の基準は「前条第一項第一号イからハまでに掲げる事項、同項第二号イからホまでに掲げる事項及び同項第三号イからニまでに掲げる事項のうちそれぞれ一以上」であり、12項目すべての提供を求めるものではありません。本記事が12項目すべてを質問の下敷きに用いているのは条文の要請ではなく、採用の観点からの私の見立てです。
・労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十二号)第9条、第30条の2第1項
https://laws.e-gov.go.jp/law/
341AC0000000132(e-Gov法令検索/施行日2026年4月1日時点の現行条文/2026年8月9日閲覧)
・労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則(昭和四十一年労働省令第二十三号)第1条の3第1項・第2項
https://laws.e-gov.go.jp/law/
341M50002000023(e-Gov法令検索/2026年8月9日閲覧)
・厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年1月15日 厚生労働省告示第5号)
https://www.mhlw.go.jp/web/
t_doc?dataId=00011660&dataType=0&pageNo=1(厚生労働省 法令等データベース/2026年8月9日閲覧)
※本文で引用した3要素および「客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については…該当しない」は、同ページの2026年8月9日時点の記載によります。同法第30条の2は事業主の雇用管理上の措置について定めた条文であり、採用ページ用の取材を名指しした条文ではありません。
・雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和四十七年法律第百十三号)第5条
https://laws.e-gov.go.jp/law/
347AC0000000113(e-Gov法令検索/施行日2025年6月11日時点の現行条文/2026年8月9日閲覧)
・厚生労働省「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」(平成18年10月11日 厚生労働省告示第614号)
https://www.mhlw.go.jp/web/
t_doc?dataId=00004320&dataType=0&pageNo=1(厚生労働省 法令等データベース/2026年8月9日閲覧)
※本記事は、同指針に募集・採用における性別に関する表示の具体例が挙げられている旨のみを記載し、例示の逐語は引用していません。
・個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)第17条第1項、第18条第1項、第21条第1項、第27条第1項
https://laws.e-gov.go.jp/law/
415AC0000000057(e-Gov法令検索/2026年8月9日閲覧)
・個人情報保護委員会「よくある質問」Q2-1(利用目的の特定の程度)
https://www.ppc.go.jp/
all_faq_index/faq1-q2-1/(2026年8月9日閲覧)
・個人情報保護委員会「よくある質問」Q2-2(従業員の個人情報の取扱い)
https://www.ppc.go.jp/
all_faq_index/faq1-q2-2/(2026年8月9日閲覧)
・個人情報保護委員会「よくある質問」Q7-11(会社の行事で撮影された写真の展示)
https://www.ppc.go.jp/
all_faq_index/faq1-q7-11/(2026年8月9日閲覧)
※同Q&Aの質問文は「当社内で展示する場合」についてのものであり、自社のウェブサイトに掲載する場合についての問いではありません。本記事は、回答の後段(展示期間の限定、及び不特定多数の者への提供に際して自主的に本人の同意を得る等の取組が望ましい旨)に触れる形で引用しています。
・文化庁「Check 3 他人の肖像や著作物は含まれていませんか?」(自由利用マークのページ/肖像権についての記載)
https://www.bunka.go.jp/
jiyuriyo/chui3.html(2026年8月9日閲覧)
※同ページは、自分の著作物に「自由利用マーク」を付けるときの注意として書かれたものであり、採用ページに特化した指針ではありません。
※条文・指針・Q&Aの引用中の「…」は、記事の読みやすさのために一部を省略した箇所です。全文は上記の出典でご確認ください。文言そのものは変えていません。
※法令・指針・Q&Aの内容は改正・更新されることがあります。最新の内容は各出典をご確認ください。
※本記事は、法令・指針および公表されているQ&Aに書かれている内容を紹介するものです。個別の募集・表示・写真等の掲載が法令上の要件を満たしているかどうかの判断は行っておりません。実務でのご判断にあたっては、最新の条文と、社会保険労務士・弁護士など該当分野の専門家にご確認ください。